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第16話次は、武田軍に大敗したばかりの……

私は、月や星の光に照らされている一本道を歩き続ける。

出ていってしまったものの、次どこに行こう。

そう考えていたが、全く思いつかない為何処かで一休みすることにする。

道の隣には、森がある。私は森に入り野生の動物がいるかどうか探す。兎や鹿は居たが、危険な動物は見た感じ居ないので今日はここで野宿することにする。

その為に私は10㎡くらいの、地面に生えている草や木を撤去する。

「ウインドカッター」

そして指をパチンと鳴らし、地面を整える。

すると、そこだけ周りと全く違くなったからかすごくこの場所が目立っていた。私はそれを笑い、地面をベットみたいにフカフカにしてそこに寝転ぶ。

「次、どこ行こっかなぁ」

目を閉じ、私は眠りについた。


 ◇   ◇   ◇   ◇   ◇


「……様、そろそろ起きてしまわれるかと」

「そんなことお前に言われなくても分かっている。どんな奴かわからないのに、貴様のような分際で近寄るな」

「も、申し訳ございません」

誰かの話し声が聞こえてくる。

私は、夢から覚め地面に手をつき、……あれ?

手が下に動かない。というか、ここ森の中じゃない。

「え?」

どういうことかと私は声を出してしまい、その声で完全に目を覚ます。辺りを見渡すと、田んぼや畑がいつもより高めの視点から見えた。

さっきからおかしい。



そう思い、前を向くと、こっちを向いているイケメンと目があった。

「ひゃっ!」

あ、変な声出た。

私は彼をまじまじと見つめる。

オックスブラッドの髪に、真っ赤な目。そしてパーツの整いすぎている顔。

ああ、眼福。イケメンだな。どんな声なんだろう。

そう思っていると、彼は口を開く。

「変な声を出すな、馬を操っているこっちの身にもなれ」

は?

うわ、性格悪っ。イケボなのに。

「ふふふ。そうですか、では目が覚めると知らない所に居た私の身にもなっていただけますか?」

「……」

反撃されると思わなかったのだろう、ポカンと私を見ている。

あースッキリした。イケメンなのに性格悪いのは嫌ですからね。イケメンなのに性格悪いなんてっ!て、キレたくなる。



「良いだろう」

そう彼は言う。

「ここは、徳川領だ」

徳川領。

その言葉が頭の中で繰り返される。

「え、徳川領?」

「ああ」

何故徳川領に。なら、この人は徳川の人?

「貴方、徳川の人?」

「そうだ」

やっぱり。

「私は何の為にこうなっているの?」

拉致(?)されるような覚え、私には全く無いんだけれど。

彼は、サラリと答える。

「お前が武田信玄の恋人かと思ったからだ」

え、違うよ。

咄嗟にそう思う。

なんでそう思ったの?

「城下町で話を聞いていたが、信玄とお前が一緒に出かけていたと聞いた。信玄は、女たらしと有名だが本気になったことはなかった」

そうなの?いや、まあそうかもしれない。でも一回くらいはあるんじゃないかな?

「でも、私も本気じゃないかもしれないでしょ?」

「信玄が公衆の前で女と出かけるのは初めてだ」

マジか。というか、なんでそんなに詳しいんだろう?

そう疑問に思ったが、忍びを送り込んでいたのだと思い出し、そういうことかと納得する。

「で、違うけど、そうだとしたらどうしするの?」

「お前を材料に、武田方と交渉するんだ」

酷い……。人を交渉材料にするなんて……。

いや、知っている。ゲームでそういうイベントもあった。別に良いとは思う。しかし、自分がそれになるのは不服である。

「でも、信玄の意思だけで何も出来ないでしょ」

「そうかもな」

「そうかもな、って貴方ね」

労力の無駄よ。

そう思ったが、まあでも、しょうがないかもしれないと考え直す。

史実ではこんな行動していなかった気がするが、三方ヶ原の戦いで徳川は武田に大敗し、信玄が病で倒れたはずが城下町で女の子と仲良くデートしているくらいに元気だった。無理かもしれなくても、賭けるしかない。



「どう交渉_」

「着いたか」

するつもりだったの?と続けて聞くはずだったが、彼の言葉に被される。

私は彼にお姫様抱っこをしてもらって降りた。自分の足で地面で立つと、私は辺りを見渡した。

『質素』

そんな感じの屋敷だった。色んな人が、慌ただしく早歩きで歩いている。私は彼に連れられて、ある部屋の前まで行く。部屋の前に居た人が、障子を開け、私達は中に入る。

目の前には、太陽の光を浴びてうっすら金色になった白髪と、金色の目を持ったイケメンがいた。

今日でイケメン二回目だ。



「そなたがそうなのか?」

そうなのか?

どういうことだろうかと思っていると、彼は返事をする。

「はっ。この者が武田信玄の恋人かと思われます」

「はい!?」

何故そんなことに。事実と全く違うことを言われ、私は訂正する。

「いや違いますよ?」

「は?」

そう言うと、彼が私に振り向いてくる。

「何言ってるんだ。嘘など通じないぞ」

「いや、本当に違いますよ!年齢差も考えてください!14ですよ、14!」

「お前、十代かと思ったがもっと年いってたのか」

十代ですよ。

「んなわけ無いでしょ。だって、信玄は……」

27歳なのよ、と言いかけて、私は気づく。

そっか、若返ってたんだ。

「今ね、信玄27歳なのよ」

「は?」

そう事実を私は伝える。彼は、何言ってるんだというような目で私を見てくる。

「いや、本当よ。冗談じゃないわよ」

そう言ったが、全く信じて貰えそうにない。まあ、気持ちはわからなくもないが。



「そなた、何故そう言える?」

家康がそう聞いてくる。その瞳は、疑いで染まっていた。

「私が若返らせっちゃったので」

「……にわかには信じがたい話だが」

「そうかもしれないですけど、本当なんです。私、不思議な力を持っていて」

家康は考え込み、提案する。

「よかろう。ではそなた、私を若返らせてみろ」

「え?」

少し戸惑ったが、了承し、家康に近づく。そして、そっと腕に触れ「ラジュニール」と唱える。私は家康がどうなっているか見ようと顔を上げる。

すると、家康の体は金色に光っており、彼は興味深そうに自分の体を見ていた。

「ふむ、不思議な力が体を駆け回っているような感じがするな。妙なやつよ。だがその力、無益ではないな」

その言葉に、信じてもらったのだと私は思う。一歩前進だ。信じてもらえなければ、何もすることが出来ない。



金色の光は徐々に収まっていき、完全になくなると、私は声を掛ける。

「どうでしょうか?」

私に聞かれ、家康は話し出す。

「この体の軽さや声的に、23歳の頃だな。そなたの話、真実のようだ。そなた、名はなんという?」

「知花です」

私は微笑む。

さっきと比べて家康は、声が少しだが高くなっており、顔にあった数本のシワもなくなっていてイケメン感が増していた。目立って変わったというところは特にない。これなら、家臣や領民達に若返ったと気づかれることはほとんどないだろう。信玄も殆ど変わらなかった。だから、若返ったことに気づかなかったわけだが。

「直政、知花を連れてきてくれて感謝する」

「はっ!ありがたき幸せ」

直政?徳川家臣で直政だったら、井伊直政?いや、でも……。

考えたが、分かりそうにないので正直に聞くことにする。

「貴方、井伊直政?」

「?ああ」

そっか。井伊直政か。徳川四天王の一人で、井伊の赤鬼の。

だからこんなにイケメンなのね、うん。……なんで性格悪い!?私、直政結構好きだったのに!性格悪いとか何なんだ!神様!?



なんでだと唇を噛み締めていたが、馬に乗っていたときに聞こうとして聞けなかったことを思い出す。

「私で信玄と、どう交渉するつもりだったの?」

そう言うと、直政が答える。

「1年間の停戦と、支援だ」

「え、支援?」

何言ってるの?徳川と同盟しているの織田と仲が悪くて、大敗させられた国に支援されるなんて。停戦ならわかるけど。

「そこまでヤバいことになってるの?」

私は、真剣に聞く。彼は、頷き言う。

「ああ。領民の争いや死亡者が増えている」

その言葉に私は胸が痛くなる。

今、人が沢山死んでるんだ。信玄との三方ヶ原の戦いの影響で。

「信玄の病が治ったという噂が全国に広がっている。一番の原因は、また攻め込まれるのを領民たちが恐れていることだ」



……え?

信玄の病を癒したのは私だ。あの時、たった一人の命でも失ってしまうのは良くないって思って、治した。でも、そのせいでもっとたくさんの人が死んでしまっている。

……この力で人を助けたいなんて、フフ、笑えるなぁ。

「?どうした」

家康が聞いてくるが、返す気になれない。

私は顔をうっすら青くさせながら、乾いた笑みを浮かべる。今なにか喋ったら、弱音を吐いてしまいそうだった。

でも、ウジウジしてても何も起きない。だから、今私がするべきことは一つ。



「お願いします。私に政治の手伝いをさせてください」



領地改革だ。

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