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第12話言いたかったことを言う

待機所の中に入ると、さっきより増して私に向ける驚きが増えていた。

私は、少し居心地悪くしながらもさっき見た晴という人がやるみたいなのでそこに集中することにする。

「次は藤宮晴と天宮真」

晴は自信がなさそうに背中を丸めながら出てきたが、真は逆に背中を真っすぐ伸ばし堂々と出てきた。

対照的。



「開始」

晴は眉を下げながらも真に近づいて行きながら刀を鞘から抜いて構える。

真も構えたが、私には晴より美しくないように見えた。

晴が勝つ気がする。

二人は互いに駆けて刀をブンと振るった。すると、真はガクリと倒れる。

私はやっぱりと思いながらも疑問が浮かんだ。

これ本当にどういう仕組みなんだろう。アニメとかでも見るけどよく分かんないのよね。

「真様ぁぁぁ。チッ!あいつ負けたふりをしとけばいいものを」

「きっと、真様を脅してわざと負けさせたんだわ。なんて奴なのかしら」

何で今回も。

晴なんでこんなに嫌われてるの?

私は観客の反応にええと引きながらも複雑になる。



そのまま私は勝ち進んで行き、決勝戦になる。

相手は晴だ。

「皆さん誰がやるのかお分かりでしょうが言いたいと思います。知花さんと晴さんです。今回凄いですね。どちらも初参加です。しかも知花さん女性ですよ」

なんか嫌ですね。言い方かな?

そう思っていると、観客から冷たい言葉が飛び出てくる。

「どうせ負けるんだから辞退しなよ」

「こいつが決勝戦だなんて」

「そんなに強くない人に当たっただけなのに」

「調子に乗るな」

晴は顔をうつむかせている。

……大丈夫かな。今なら言えるかもしれない。

私は、心配になり「大丈夫ですか」と声をかけた。



「え……」

そう言うと彼は顔を上げて驚くように私を見つめる。

私はその後、観客に穏やかに静止をする。

「皆さん、私彼の戦い見てましたけど、彼は強いと思いますよ。そうじゃなくても、真剣に彼と戦いたいので静かにしてくれますか?言い方厳しくなって、ごめんなさい」

そう言うと会場がシンと静まり、私に視線が降りそいだ。

「お願いします」と司会に声を掛けると、司会の人はハッとして「開始」と言った。



私は軽くジャンブしてから、間合いを詰める。

彼は分かっていたように刀を振り上げてくる。

しかしその表情は不安そうだ。

私はそれに引っかかりながらも、刀を避け後ろに回る。

刀を振り上げる間に彼はこちらへ振り向き刀を構える。


カキーン


刀がぶつかる音が静かな会場に響く。

私は刀に力を入れるがその前に横に避けられ、前に少し態勢が崩れる。

その瞬間足を横に出して晴が倒れ込むようにする。

しかし、彼は足を少し上げギリギリのところで避けられてしまう。

瞬発力凄いな。

そう少し感心したが、不安そうな自信のない表情が目についてしまう。

私はもう一度刀を振り、彼に近づく。



「晴さん」

そう呼びかけると、彼は顔をこちらに向ける。

「自身持ってください。誰かの悪口なんて気にしないで本気で来てください」

そう言うと彼は目を見開いたが、こっくり意思が固まったような顔で頷いた。

私はその表情に満足しながら足を振り上げた。

彼は妙なところに当たる前に後ろへのけぞり、刀を振った。

私は足をおろしながら、刀を受け止めては受け流し刀を振ることを何回もしていた。

彼はその行動に対応としているが、体が追いつかず何回か攻撃を食らうことが複数回あった。

私は彼が怯んだ隙に体を空中へ上げた。

「花は風に吹かれて散り、葉が落ちるように世は移り変わっていく。世の無常を示せ。飛花落葉。」

そう言うと花がブワッと会場全体に舞い広がった。



「花びら?」

「綺麗。だけど何で?」

私はその花びらによって誰も見えなくなっていた。つまり、晴もそうだということだ。

私は力を行使し気配をたどり、晴を見つける。

そして肩に優しく刀を置く。


「あ、視界が広がったわ。」

「今どうなってんだ?」

そう声がすると、前から「あ……」と小さな声がする。

「終了……?」

そう司会は言うが何故疑問形なんだ。私、勝ってないのか?

そう少し不満に思ったが、とりあえず晴の首に置いてある木刀を下ろした。

そうすると、晴はこちらに振り返った。

「知花さん」

「晴さん……」

「ありがとうございます。強いんですね」

「こちらこそありがとうございます。晴さんも強くて……」

私達はそう取り繕ったような言葉をかわしあったと、沈黙が流れた。



「晴さん、自信を持ってくださいね。貴方は自己肯定感が低すぎです。自信を持つに貴方はふさわしい人間ですよ」

「……ありがとうございます」

そう晴は言ったが、信じてなさそうだったのでもう一度言う。

「本当ですよ!自信を持ってください」

そう言いながら顔を近づけると、目を大きく見開き顔をだんだんと赤らませていった。

「……っ。分かりました。……ありがとう、ございます」

彼は頬を少し赤くさせながら、そうふんわりと微笑んだ。初めて見る笑顔。

私は笑顔を見られたことを嬉しく思いながらも、手を自ら差し出して彼と微笑みながら握手をした。



「では表彰式に移りましょう」

私は係員ぽい人に案内をされ、会場の中心に立つ。

「第一位は大会初の女性!強かったですねー。知花さん!第二位は藤宮晴!彼も大会初出場でしたね。第三位は…………」

司会が何位いか言い終わった後、私に何が欲しいか聞いた。

「一位には商品が贈呈されますが、何にしますか?」

「んー。ちょっと待ってくださいね」

真面目に何にしようかな?正直言うと、着物が欲しいが、チートの力でいける。

「あ!」

首をひねらせていた私だが、これならどうかと声を出す。

「じゃあ、刀で」

「まあいいですけど……本当にそれで良いんですか?」

「はい。駄目ですか?」

「いや、ではそれでいきますよ」

司会に念押しされたが、私は間も開けず答えた。

「大会優勝者、知花さんに三日月宗近を」

「うおおおおおおっ」

そう司会が言うとそう大きな声が会場に響き渡る。


◇   ◇   ◇   ◇   ◇


会場の熱気が収まり、人も減ってきたので私は信玄の所に三日月宗近を刀につけながら向かった。

「信玄様」

私はそう呼びかける。

「ありがとうございました。これからは信玄様に付いてきます」

そう言うと、信玄は「誤解されそうな言い方だな」と笑った。

どういうことだろうと思っていると、信玄は手を差し出しパチンとウインクをした。

流石だ。手慣れている。



信玄の手を微笑みながら取り、歩き始めると「今、失礼なこと考えなかったか?」と少し顔を頬を引き攣らせながら聞かれた。

「え?サア、何ノコトデショウ?」

私はぎくりと、声をカタコトにとぼけたが、その様子を見て信玄は「勘違いか」と言った。口角を上に上げてるから絶対嘘だって分かっていると思うけど。

こんなところ、信玄らしいって思うなぁ。

「これからどこ行くんですか?」

「どこって、屋台に決まってるだろう」

そう尋ねると、当たり前だといわんばかりに返ってくる。

いやそうかもしれないですかど……いや、絶対そうか。これは私がおかしい。

私は確かに……と納得しながら周囲を見る。

刀屋さんに、お団子屋さん。簪屋に着物屋さんまで。

どこから行こう?

私は考えた挙げ句、近くにある店から寄っていくことにする。



「信玄様、簪屋行きましょう」

「ああ」

簪屋さんでは、信玄様と店員に私の雰囲気にあっていると言われた桜がモチーフの簪を買った。



「信玄様、次は着物屋さんに」

「ああ。だがお前にはどれも似合うだろうが」

着物屋さんでは、さっき買った簪に合っている、白緑色と桜色が混ざった柔らかな雰囲気の振り袖と海のようなマリンブルーと爽やかなベビーブルー色の色留袖を。



「信玄様、お団子好きですか?」

「ああ。比較的好きだぞ。お前への好意ほどでは無いがな」

「うわこの店すごいおしゃれ!凄いですね城下町。流石です!」

「…………」

お団子屋では、カップルしか食べれないという桜の匂いのする桜味の団子を信玄と分け合って食べた。



美味しー。

私は団子を分け合って食べた後、お茶をすすっていた。

簪と着物も買えたし、美味しいお団子も食べれたし。7万は使ったなぁ。まあ経済が回るし別に。

いっかと思いながらほほ笑みを浮かべていたが、私はあることを思い出し笑顔のまま硬直した。


わ、私、信玄様に付き合ってるんじゃなくて、付き合わせてる!?


完全に忘れてた。すみません信玄。今から何もしないから!

そう強く思っていると、「知花、行きたいところがあるんだがいいか?」と声をかけられた。私は、ちょうどいいと目を光らせ「もちろんです」と間髪入れず答えた。

「あっちだ」

信玄はそう西の方角を指し私の手をパシリと取った。どこだろうかと思いながら歩いていると、信玄はフッと色気たっぷりに微笑んだ。

「……」

なんか凄いな!イケメンすぎるぞ。

私は少し赤くなりながら、信玄に引かれるまま、歩いた。



しばらく歩き、到着したのは丘だった。

日は落ち始め、周りには誰もいない。この丘には私達しかいないのだ。

信玄は私の手を離し、口を開いた。

「知花、お前に見せたいものがある」

「見せたいもの、ですか?」

なんだろうと目を丸くさせ尋ねる。

「ああ」

信玄は軽く頷き「そろそろか」と独り言を言う。

「前を見てみろ」

「え?」

私は不思議に思ったが、取り敢えず顔を前に向ける。



「!……綺麗」

顔を向けた先には、神秘の絶景があった。大きな山に神々しい光を放つ太陽が被さり、光が漏れ出していた。そして周囲にある雲も茜色に染まっていた。その様子が山の手前にある湖に映っていて、もう絶景だと思う。湖の周りには私達がさっきまでいた場所が見える。

そこからは街の人達の楽しそうな明るい声が沢山聞こえ、不思議な気持ちになる。

「美しい、場所ですね」

私は声をひねり出す。

信玄と目が合うと、信玄は笑みを浮かべながら顔を絶景に向ける。

「美しいだろう。俺は、精神的に疲れたときとかにここに来て、民たちの笑い声やこの美しい景色を見るんだ」

「……格好良いですね。信玄様は」

「……ありがとな」

尊敬の意思を込めて言うと、信玄はそう笑った。



「帰りますか」

「そうだな」

日も落ちて暗くなった空を見ながらそう私達は言葉を交わした。

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