表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/26

第9話円満解決

本当に良かった……。



私はそう心の中で呟く。

信之が自分に素直に慣れてよかった。そう心の中から彼が素直になれたことを嬉しく思っていると信之は赤くなった目をこすって笑みを浮かべる。

いい笑顔だな……。

「信之のその笑顔を見られただけで暴言なんかもう頭の中から無くなっちゃったよ。うん本当に良かった」

そう独り言にしては大きな声で言うと信之は顔を少し赤くさせ、「早く躑躅ヶ崎館へ帰りましょう」と言って私の腕を引っ張った。



私は引っ張られながら「私の能力で早く行けるよ」となぜ歩きでいくのか疑問に思いながらも言った。

「そうしたら一瞬じゃないですか。僕は一緒に話しながら帰りたいんです」

頬をピンクにして言うその姿は少し可愛かった。年頃の男の子には失礼かもしないけど。

私はそういうことかと納得しながら信之の隣に並んだ。それによって、スルリと信之の手が下に移動し、手が繋がれる。

「あの、氷室様って名前何ていうんですか?」

「氷室だよ。そこは嘘つかないよ」

「いやそうじゃなくて。苗字が合っているのは分かってたんです」

そうなんだ。



「苗字じゃなくて、名前です」

「あ、名前ね。知花だよ。知るに花って書いて」

「知花……。いい名前ですね」

信之はそう呟くとそう言って微笑んでくれた。

「本当!?ありがとう。私も気に入ってるんだ」

褒めてくれたのが嬉しくて、思わず顔をほころばせながらも言うと幸村は顔を真っ赤にしたあと、照れたようにはにかんだ。

やっぱ好きだな。信之の笑顔。というか感情を隠さず作らず出している表情。



「ふふっ。そういえば信之は幸村のどんなところが好きなの?」

そう聞くと信之は好きなところと一瞬間を置いて答えた。

「そうですね、優しいところ。誰にでも平等に接するところ。可愛いところ。努力をするところ。才能を自慢せず謙遜するところ。忠義心が強いところ……」

信之は嬉しそうにしながら何個も幸村の好きなところを答えていく。

「て、すみません。ずっと長く喋っちゃって」

「ううん。気にしなくていいよ。……信之は幸村のことが本当に大好きなんだね」

そう言うと信之は目を少し見開いたあと「はい!」と幸せそうなニッとした笑顔で言った。

幸せそう。良かったぁ。

躑躅ヶ崎館まであと二分くらいになると、私は不安なことを思い出し一番分かっているであろう信之に聞いてみた。



「ねえねえ信之。聞きたいところがあるんだけど」

「はい。何でしょうか」

「私が信之のところ行く前に『すみません。俺はもうちょっと時間が必要なのでどうか兄上の所に行ってください』って苦しそうな顔で無理やり笑みを作って私に言ったの。ねえ信之、私幸村に嫌われちゃったかな?」

そう不安げに聞くとハハッという笑い声が聞こえて信之の方を見る。

「な、なんで笑ってるの」

頬を膨らませると、すいませんとまだ笑いながらも言った。

「いや、まず幸村は怒ってたんじゃないと思いますよ。あと、知花でも不安になることってあるんだなって思いまして」

「私人間だよ?人間なんだからしょうがないじゃない」

そう言うと信之は「そうですね」と下に目線を落として答えた。

どういう気持なのかよくわからない。まあすくなくとも幸村のことが大好きな信之が大丈夫と言うならば少し大丈夫かもしれない。

そう考えていると躑躅ヶ崎館に着いた。

私は草履を急いで脱いでタッと上へ登った。



 「幸村!……え?」

私は幸村に声をかけたが、絶対にしないであろう床にだらりと寝そべっている姿を見て目を見開く。

幸村がこうなってるなんて。信じられない。もしかして私のせいかしら。

「幸村」

「氷室様……」

「もしかして私のせい?」と言いかけると、幸村は私に気づいて体を起こした。

真剣な顔をしてるので私は色々言われるのかと思って反射的に下に向いてしまいそうになったが、私は怒られなければいけないと顔を上げる。



幸村は下にうつむきながら口を開いた。

「俺、最初はどうして言ってくれなかったんだろうって思ってました。あの時俺に見せてくれた表情やかけてくれた言葉は嘘だったのかって。でも、貴女のことだからきっと違いますよね。だから今は、氷室様のことを尊敬しています」

そう言って彼は微笑んだ。

「幸村……」

私は、その言葉に目を潤ませながらバッと幸村に飛びついた。

信之は眉間に少し皺を寄せて信玄は面白そうに目を細くさせていたが私は全く気づいていなかった。

幸村は驚きながらもしっかりと受け止めてくれた。

私は顔を上げ言った。



「ありがと幸村。騙していたのにこれから先も友達でいられるなんて嬉しいわ」

「俺もです……」

そう言うと、幸村は頬を赤らませながらもそう答えた。

そのまま見つめ合っていると、コホンという声がした。見てみると信之が片手を口元に当てていた。

「知花。近すぎです」

「あっ。ごめんなさい」

私は言われて初めて近さに気づいて幸村から離れた。



「氷室様、知花っていうんですか?」

「うんそうだよ」

幸村に聞かれて私はそう答える。

「じゃあ、あのっ!俺も知花様って呼んでもいいですか?」

「もちろん!出来ることなら『様』無くして欲しいけど」

そう言うと幸村は「様を無くすのは……」と呟いていた。

「知花。このことをあいつは知ってるのか?」

信玄が私に聞いた。



「あいつ?誰のことを指してるんですか?」

「ん?ああ、……」

信玄は言い終わる前に言葉を飲み込み笑みを浮かべる。

その姿に私は、悪いことを考えたなと思う。



「ちょっと待っててくれよ」

そう言うと走りながら部屋から出ていってしまった。

どうしたのかなと思いながら3分が過ぎた。

すると、部屋の外からドタドタという2人分くらいの足音と「え?ちょ、お館様?」という若い男性の戸惑っているうな声が聞こえた。

「よし、行って来い!」

信玄が見えたと思うと、信玄は誰かを手で引っ張って私達の前に突き飛ばした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ