バッドエンドかよ!クラーケンマン!!
時東誠人が覚醒した時、時東誠人は、また首や胴体や二の腕や前腕や手首や太腿や足首に銀色の分厚いリングを通され、標本のように壁に吊るされるように立たされていた。
例の如く、全身のありとあらゆる箇所に向けられている幾本もの注射器が針が当たる直前で静止されている。
いつか見た光景通りに黒い丸椅子に柳 大和が座っている。
「またか」
「またですな」
「今度は、何故、俺は、生きている?」
「いや、また、君、死んだんだけどね。マジカル テラ・アトミック ビッグバンで久保田ごと」
「なら、なんで、また、生き返ってる?」
「俺らより、上にいる方々のご意思だね。クラーケン大魔人の再生細胞が、どうしても、欲しいんだってさ。生きている被検体で。だから、バラバラに散った君と久保田和也の細胞をかき集めて、培養し、比較的我々が制御しやすい君の方を生かした」
「え?今、久保田の細胞で俺を作ったって、言った?」
「言った」
「マッドだなぁ、お前ら」
「マッドですなぁ」
他人事のように柳は、言う。そして、時東の顔を見つめ、
「ところで、君は、誰だい?時東誠人?久保田和也?それとも、クラーケン大魔人ラブリー?」
と深刻なトーンで訊く。
「冗談で言ってるんじゃないんだよな?」
「ああ、鬼が出るか蛇が出るか、正直、我々にもわからんのだよ、時東君。テクノロジーの限界でね」
「俺は、時東誠人だよ」
柳 大和は、手首のスマホウォッチを確認する。
「嘘ではないね」
「だろうよ」
時東誠人は、注射器とリングから解放される。
「やれやれだぜ」
それから、一ヶ月の検査入院という監視体制をしかれた後、時東誠人は、釈放され、とりあえず、魔法少女課の予備役という役職を与えられた。
時東誠人が自宅に戻ってから、久保田和也が言う。
「どうして、俺のことを話さなかった?」
「いや、幽霊か俺の頭がおかしくなったのかな、と思ってさ」
そう、久保田和也の姿は、時東誠人にしか見えていない。久保田和也の声も時東誠人にしか聞こえていない。
「幽霊なんかいるわけないだろ。頭がおかしくなったってのは、半分ぐらい正解だな。お前の脳を再生するのに、俺の脳細胞が使われたのが、原因で今、こうなってる」
「結局、お前は、なんなんだ。本物の久保田和也か?俺の罪悪感が生み出した幻とかじゃないのか?」
「ずいぶんと楽観主義になったな、時東。俺が見えるという事は、お前は、俺に今、脳を支配されつつあるって事なんだぜ。俺の計画通りにな」
「お前の計画ぅ?」
「そうだ。魔法少女のマジカル テラ・アトミック ビッグバンを不可避だとあらかじめ、想定していた俺は、自らの身体を犠牲にし、お前の中で再生する計画を立てていたんだ。奴らがクラーケン大魔人の再生細胞を手放すはずがないことは、わかっていたし、復活させるなら、俺じゃなくお前だと予想がついていたからな。だから、お前を自らの身体に取り込み、マジカル テラ・アトミック ビッグバンから守ったんだ」
「嘘だね。そんなこと、お前があらかじめ、計画できたはずがない。お前は、あの時、魔法少女が多く来ていることも途中から知ったじゃないか」
「バカだな。そういう演技をしていただけだ。お前の身体の中に潜んでいた方が、後々、魔法少女を始末しやすいからな。全ては、魔法少女全員を喰い殺す為の作戦。最後に勝つ為に、わざと負けてやったに過ぎない」
「魔法少女を全員、喰い殺すぅ?」
「そうだ。お前の身体を使ってな。今は、まだ完全に乗っ取っていないから、実行に移さないが、いずれ、お前の身体を完全に乗っ取った暁には、魔法少女を全員、喰い殺し、俺がこの世の支配者として、君臨してやるからな」
「わ〜たしが、いることもお忘れにならないでね〜ん。オホホホ〜」
クラーケン大魔人ラブリーの声まで聞こえだし、時東誠人は、頭を抱える。
俺の物語は、バッドエンドなのか、と――。 THE END