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クラーケンマン  作者: 紙緋 紅紀
5/7

戦闘準備だ!リベンジクラーケンマン!!

時東誠人は、ぼんやりとした視界の中、目を覚ました。

白いまばゆい光に焦点を合わしていくうちに、意識が段々とはっきりと覚醒していく。

「お?お目覚めかな?時東誠人君」

そう言う柳 大和は、黒い丸椅子に座っていたが、立っていた時とたいして身長が変わっていない。

時東誠人は、改めて、柳 大和をチビだと思い、あの身長でどうやって、車を運転していたのかという疑問がよぎったが、自分は、そういうことを考えている状況ではないのだと気づく。

手首、腕、首、胴体、太腿、足首が銀色の何製か判然としないリングで固定されている。それにも増して、異様なのは、身体中のあちこちに向け、何本もの注射器が、針が刺さる寸前で止められ、固定されていることだ。

時東誠人は、寝ている状態ではない。立ったままの状態をリングで強いられ、壁に掛けられていた。標本のように。

「これは、俺は、生きているってことで、いいんだよな?」

時東誠人は、第一声で柳 大和にそう尋ねた。

「ああ、ここは、あきらかに天国じゃなく、化学分析班の実験室だからな」

柳 大和は、そう軽口を叩きながら、赤い大きなボタンの付いたリモコンを握っていた。

時東誠人は、そのボタンが押されたら、おそらく、身体中を覆っている何本もの注射器の針が自分に刺さるのだろうと予測した。

「なんで、俺は、まだ、生きてるんだ?」

時東誠人は、当然の疑問を口にした。

時東誠人自身、後頭部の骨が割れた音をはっきりと聞き、脳髄が飛び散る感覚、死んだ感覚をすでに味わっていたからだ。

それなのに、何故、自分は、生きている?

「お前の友達、世紀のマッドサイエンティストにして魔人個体名クラーケンマンの久保田和也が開発したというクラーケン大魔人ラブリーの再生細胞を培養して作った身体再生回復薬液を久保田医院で回収し、我々は、それをチューンナップして、死後、12時間以上経った君の身体に打った」

「実験したのか?俺で?」

そう訊いても、柳 大和は、ちっとも、悪びれない。

「クラーケン大魔人ラブリーの細胞に適応して、尚、自我を保っていた君の可能性に賭けたんだよ。他の人間じゃ、ラブリーの細胞に精神を乗っ取られる可能性があるから、とてもじゃないが、こんな危険な実験はできない。結果、実験は、見事、成功し、飛び散った脳髄や砕けた後頭部を含めた君の身体は、元通りに回復、いや、復元されたと言うべきか。ノーベル賞ものの発明で即再生医療に使いたいぐらいだが、今回の久保田和也の件があるからなぁ。いやぁ、実に惜しい。ところで、ラブリーの声が聞こえたりはしてないかい?君は、本当に今、時東誠人?」

「あきれるなぁ。あんたら、化学者には。正気の沙汰とは思えない」

「まぁ、そう言うなよ。すべては、君の命を助ける為だったんだからさ」

「俺は、どれくらい、意識がなかったんだ?」

「ちょうど、一週間ぐらいだね」

「久保田の奴は、どうなったんだ?」

「やりたい放題だよ」

柳は、大げさにも見える溜め息をついた。

「あれから、お前との戦いを終わらせてから、久保田和也は、人間に擬態して、行方をくらまし、全国各地の警察署や自衛隊基地や米軍基地を襲撃して廻っている。久保田和也は、あんたと違って、肉体の人間化、イカ魔人化を完全にコントロールできるから、人間のフリをして、奇襲もできるし、イカ魔人の触手も何本でも増やせるから、それで防御されたら、接近戦では、ロケットランチャーを使っても、仕留め切れない。仕留めるには、久保田和也の感知しない遠方からの狙撃か空からの爆撃しかないが、肝心の久保田和也の居場所が、いつまで経っても、掴めない。おそらく、久保田和也は、人間に擬態する時、久保田和也以外の人間の姿にもなれるんだと推定される。完全にお手上げだよ」

「で、なんで俺は、拘束されてるわけ?この物騒な注射器ちゃん達は、何?俺を生き返らせたのは、殺し直す為か?」

「注射器の中身は、麻酔だよ。クラーケン大魔人の細胞に毒は、効かないが、麻酔は効くみたいだからね。君の精神がクラーケン大魔人に侵されていないと証明できるまでの保険だよ」

「どーやれば、俺が時東誠人だと信じてくれるんだよ?」

「もう信じた」

柳 大和は、短く言うと、握っているリモコンの赤いボタンを押した。

すると、時東誠人を取り囲んでいた注射器達は、一斉に引っ込んで、壁の中へと機械音を立てながら、収納され、時東誠人を拘束していたリングは、全て外れた。

「実は、君が意識を失っている間に嘘発見器を仕掛けさせてもらっていたんだ」

柳 大和は、そう言って、時東誠人に自らの腕時計型のスマホを見せる。その画面には、心電図のようなものが、黄緑の色をして、輝いていた。

それで、ずっと会話中、時東誠人の心を計測していたらしい。

拘束具から解放された時東誠人に柳 大和は、言う。

「でも、これで安心しないでくれ。あんたを生かし続けるかどうかは、俺よりも上が決めることだから」

「俺を生かさず、殺す気なら、なんで生き返らせたりしたんだよ」

「それはな。たぶん、あんたを上は、久保田を釣るエサとして、使いたいんだよ」



新大阪都庁の魔法少女課の柊 香子のデスクの前に魔法少女ピクシースパイスは、立っていた。

「私に何の断りもなく、独断で魔人と共闘して、魔人を倒そうとするなんて、お前は、魔法少女課という組織をなんだと思ってるんだ?ピクシースパイス」

「申し訳ありません」

ピクシースパイスは、柊 香子に頭を下げた。

「申し訳ありませんで済んだら、この世に魔法少女は、いらねぇんだよ、バカヤロー。仮にクラーケン大魔人を倒したのが、お前じゃなく、あの時東誠人というおっさんだった、というお前の話が本当だったとしても、魔人化した見ず知らずのおっさんを信用するなんて、魔法少女として、絶対にしては、いけない行動だ」

柊 香子は、するどく強くピクシースパイスを睨んだ。

「仰られる通りです。私の判断が迂闊でした。しかし、時東さんが、クラーケンマンと対決し、9名の一般人の命を救ったのは、事実です。誠に勝手ながら、彼のその行動を正当に評価して頂きたく、思います」

「9名の一般人の命を救っただ?9名の一般人の命を危険に晒したの間違いだろ」

「しかし、生き返るかの実験をした後、殺処分するなんて、あんまりです!」

ピクシースパイスは、涙が瞳にうっすら滲むほど、熱くなっていた。

一人で青春映画をやっているような、熱血新入り刑事(デカ)を演じているような塩梅だ。

「殺処分だ?私が、いつ、そんなことをすると言った?」

柊 香子は、目の力を凝縮させ、困惑をさらに睨むことで表現した。

「では、彼のことは、殺さないということで、よろしいのですか?」

ピクシースパイスは、慎重にお伺いを立てた。

それに対し、柊 香子は、キレぎみに

「当たり前だ」

と答える。

「奴は、すでに久保田のイカげそ野郎を釣る為のエサに使うと上が決定している。ただちに、作戦会議を開くぞ。お前への処分は、すべてが終わってから、折って言い渡す」

「はい!」

ピクシースパイスは、気持ち良く、返事したものの、結局、自分は、処分されるのだなと心の中で肩を落とした。



新大阪都庁の魔法少女課の作戦室には、ホワイトボードの前に柊 香子と柳 大和が立ち、その正面の席にピクシースパイスと何も知らない時東誠人と北大阪府警預り魔人対策課を代表して本郷が横一列に並んで、座っていた。

「イカの魔人時東誠人、初めて会うな。私は、魔法少女課管理室主任・柊 香子だ。お前がクラーケンマン久保田と交戦中、一般人を助けようとしていたのは、情報として知っている。お前は、我々、魔法少女の敵ではない、と我々は、そう解釈していいんだよな?」

柊 香子は、不機嫌そうに尋ねた。

「いや、魔法少女を敵だと思ったことは、今まで人生で一度もないけれど」

時東誠人は、もごもごと答えた。

どうやら、時東も柊が苦手のようだった。

「じゃあ、お前にとって、久保田和也は、なんだ?敵か?」

柊は、尋問口調で言った。

「いや、友達だ」

と時東は、答える。

彼の横でピクシースパイスは、ちょっとぉ!と神経が泡立つ。主任の前で、そんなことを言っても、なんの得にもならないのに、この男は、そんなこともわからないのか。

「でも、戦闘していたんだよな?友達なのにか?何故だ?戦っていたのは、ただのパフォーマンスか?」

柊は、詰めるように時東に尋ね続ける。

「それは、あいつを止める為に」

「なんでだ?」

「あいつが、人を傷つけようとするから」

「久保田が人を傷つけるのを何故、お前が止めなくては、いけない?人助けか?何故、お前が人助けをしなくちゃいけない?お前は、ヒーローか?違うだろ?イカの魔人ではあるが、お前は、ただの一般人だろ?我々のように人助けが仕事なら、わかる。でも、仕事でもないのに、あんな化物と戦って、人助けするのは、不自然だ」

「なんで?」

今度は、時東が柊に尋ねた。

「人は、正義の為には、戦わないからだ」

柊 香子は、はっきりと言った。

「世界を平和にする為だとか、人々を守る為だとかで人は、戦ったりしない。人々に称賛されたいとかの打算が、お前にあるなら、理解できる。お前に何か、利得があるなら。でも、お前が、ただ正義の為にあの化物と戦ったのだというなら、私は、納得しない。そんなのは、精神病にかかった奴のやることだ。完全に気が狂った行動だ」

「あいつが……、あいつが、ああなったのは、俺に原因がある。俺がイカ魔人になった身体をどうにかしてくれと頼んだのが、きっかけで、あいつは、ああなっちまった。あいつは、運悪く俺の物語に巻き込まれただけなんだ。あいつが、ああなった責任は、俺にある。あいつのイカれた行動を止めなくちゃいけない責任が」

時東誠人は、視線を下に向け、思い詰めた表情になる。

左の拳をすでに人間の手に戻った右手で指の爪がくい込む程、強く握る。

「罪の意識か。それで、死んでまで人助けか?わかってるのか?お前、一度、死んでるだぞ。たいした責任感だな。やはり、お前は、何かの精神病の類だよ。メサイアコンプレックスに自傷行為が混ざった感じだな。戦場では、勇敢でいい奴ほど、先に死ぬが、お前は、自ら、戦争に飛び込んで、勇敢でいい奴を演じている。人助けして、死んだ。自己犠牲の死を自分のラストシーンの為に演じたんだ。究極のナルシズム。マスタベーションだよ、お前のやっていることは、全部」

「主任、さすがにそんな言い方は、ないんじゃないでしょうか」

柊の詰め方が、時東への個人攻撃に及び始めたと思ったピクシースパイスは、口を挟む。

それが、逆に火に油をそそいだ。

「私は、こういう奴が、嫌いなんだよ。いい歳こいて、ヒーロー願望を持ったザ・主人公症候群の奴がな。二軍三軍にいる頃は、斜に構えて、報われない悲劇の主人公のフリ。で、いざ、日の芽を見た途端、昔からそうでしたみたいな面して、正義漢を平気で演じて、自分の物語を勝手に始めやがる。ご都合主義どのみち主人公思想の奴が、一番、犯罪者予備軍なんだよ。自分の正義や物語を世の中のルールや常識より優先するからな。上は、そういうこいつの安っぽい思想や性格を今回の作戦に利用してやれと言うが、私は、反対だ。ナルってる奴の正義感に頼って、作戦なんて、進められない」

柊は、そこまで言わなくってもいいことまで、正直にズバズバと言った。

「私は、お前の正義の心なんて信じない。お前の覚悟や責任感とやらも信じない。でも、久保田和也を始末する今回の作戦には、参加してもらう。拒否するというなら、容赦なく、お前も始末する。お前は、ただお前の命の為にだけ、戦え。命惜しさで、戦うと言うなら、信用してやる。どうする?私らに始末されるのと、友とやらを殺すのは、どっちがいい?選べ」

柊に問われて、時東は、ゆっくりと顔を上げた。

「俺も今さら、あいつを説得できるなんて、都合の良いことは、思っちゃいない。あんたらが、殺すしかないと判断したのなら、もう、それは、現実的に言って、殺すしかないってことで、間違いないんだろう。でも、希望は持ちたい。あんたらの作戦とやらが、なんなのかは、わからないが、もしも、俺があいつを制圧できて、無力化できたら、あいつの命だけは、奪わないでくれないか」

時東は、力の込もった目を眼力の強い柊に向けたまま、視線を外さない。

「勝てると思ってるのか?前に戦った時でも、久保田クラーケンマンは、推定でお前の3倍は、強かったし、今は、さらに奴は、成長していて、お前の7倍は、強いぞ」

不安感のある声で、そう言ったのは、柳 大和だった。

時東は、視線を柊に向けたまま、

「大丈夫だ。奴は、触手を増やした分、パワーも増しているが、動きがにぶくなっている。スピードなら、こっちが上。守るべき、一般人のいない状況さえ、用意できれば、充分、勝機は、ある」

と自信ありげに言った。

「何か、考えがあるんだな」

と訊く柳に時東は、

「ああ」

と短く答える。

「ふん、お前に利得があるのなら、まぁ、それで、いいだろう。本作戦中にクラーケンマン時東が、クラーケンマン久保田を制圧できた場合に限り、クラーケンマン久保田の生存を保証しよう」

柊は、時東に目を合わせたまま、言う。

「いいんですか?そんなこと、勝手に決めて」

柳 大和は、柊 香子を不安気に見上げ、尋ねる。

「いいんだ。上は、私が掛け合う」

柊は、きっぱりとした口調で言った。

ピクシースパイスは、その言葉を信用し、本郷は、ようは、時東が制圧する前に久保田を始末すれば、いいんだろと思った。

「それでは、本作戦の概要の説明を始めろ。柳」

「はっ」

柊 香子に命令され、柳 大和は、作戦の内容を時東達に伝える。

作戦は、単純なものだった。

まず、時東誠人が久保田和也を呼び出し、戦う。

時東誠人との戦いに集中している久保田を横から狙って、この一週間で大魔人会との戦いで負ったダメージから回復した魔法少女数名と魔人対策課で奇襲をかける。

しかし、それも陽動にすぎず、作戦の要は、他にある。

「さ〜くせんの要、弥馬田グフ子で〜す。グフフ〜」

柳 大和の作戦の説明の途中から、作戦室に入って来たのは、大きなリボンのついた青紫のミニスカドレス姿の弥馬田グフ子だった。

「なんで、君がこんなところに?」

時東誠人は、突然、現れたコンビニのバイトで一緒だった女子高生に動揺する。

「なんだ?知り合いか?」

と柳 大和は、時東誠人の表情を伺う。

「ひょっとして、魔法少女だったのか?」

と言う時東誠人にピクシースパイスは、

「そうですよ。グフ子ちゃんは、魔法少女ピクシートラップと言って、全魔法少女中、最強の魔法少女と呼ばれている私達の心強い仲間です」

と弥馬田グフ子を魔法少女として紹介する。

「トラップちゃん。もう、大魔人会との戦いのダメージは、大丈夫なの?」

とピクシースパイスは、心配そうに弥馬田グフ子に立って、近づく。

「うん、ワタシ、生理休暇で休んでただけだから」

と弥馬田グフ子は、テヘペロをかます。

「違う。こいつは、ズル休みしていただけだ」と柊。

「ちっ、バレてやしたか」

とグフ子は、なんの後ろめたさもなさそうに、グフフ〜と不気味に笑う。

「ワタシ、休んでいる間にいいバイト見つけたから、スパイスちゃんにも今度、紹介したげるね〜。おっさんにパンツ、じゃなく、フェロモン売るだけで、3万もらえるの。グフフ〜」

肩を揺らしているグフ子を柊は、

「公務員がバイトするのは、法律違反だぞ。あとで、管理室に来いピクシートラップ」

とまともに注意する。

「あら〜、管理室で二人きりなんて、やらし〜。柊主任ったら、自分のデスクの上でゼラチン質の愛でワタシをパコる気かしら。グフッグフフ〜」

「こんな奴に作戦の要を任せて、本当に大丈夫なのか?」

と時東は、不安の混じった不満を口にする。

「あら、ワタシの力をお疑いですか?イケオジ殿。なら、その場で足踏みしてくださる?」

時東誠人は、弥馬田グフ子に言われるまま、その場に立って、足踏みした。

すると、床が抜け、1メートルほどの穴に時東誠人は、落っこちた。

「これが、アチシの魔法。トラップ魔法ですわ」

弥馬田グフ子は、時東誠人の上で、でーんと胸を張る。パンツが丸見えだった。

「トラップちゃんは、どの空間のどんな場所にも、自分の思い描いたトラップを魔法で仕込むことが、できるんです」

とピクシースパイスが説明する。

「ちなみに、ワチシが、その気になって、落とし穴に竹槍も仕込んでたら、あんた、死んでやしたぜ、グフッ」

弥馬田グフ子は、不気味なにやけ面のまま、勝ち誇って、言う。パンツが丸見えだ。

「彼女が最強の魔法少女といわれる所以がわかりましたか?」

ピクシースパイスは、手を伸ばして、時東誠人を引き上げる。

「俺まで落とす必要あったか?」

時東誠人の隣に座っていて、一緒に落とし穴に落ちた本郷が這い上がりながら、言う。

「作戦の説明を続けるが、いいか?」と柳 大和。

「久保田と戦う時東も魔法少女も魔人対策課も、すべては、久保田の動きを止める為のトラップに誘導する為の陽動だ。ピクシートラップ、こちらが要望したトラップは、もう考えてくれたか?」

そう訊く柳 大和に

「もちのろん」と弥馬田グフ子は、答える。

「透明で一度くっついたら、離れない強力な粘着性のネットを召喚するつもりでげす。例えるなら、巨大な蜘蛛の糸のような、いや、それは、著作権に触れるから、名付けるなら、クラーケンマンほいほい的な」

「そっちの方が版権、えぐいだろ」

と時東誠人は、思わず、弥馬田グフ子にツッコむ。

「とにかく、グフ子のトラップ魔法で動けなくなった久保田を我々、魔法少女全員の魔力を込めたマジカル テラ・アトミック ビッグバンで消滅させるというのが、本作戦だ」

と柊 香子がまとめに入るが、

「その前に俺が久保田を制圧したら、そのなんとかビッグバンっていう魔法は、当然、使わないんだよな?」

と時東が念を押す。

「ああ、約束だ」

と柊 香子は、はっきりと言う。そして、

「問題は、久保田をどう我々の用意した決戦場に呼び出すかだが、それについては、未来予知の魔法少女ピクシーオールディクショナリーによると、お前が答えを知ってるらしい。時東誠人」

と時東誠人を険のある目で見つめた。

「俺が?」

「そう、お前だ。時東誠人。お前なら、どうやって、久保田を呼び出す?20年来の親友なんだろ?これを言えば、かならず、久保田がやって来るみたいなキラーワードの一つや二つ知らないのか?」

頭の賢い久保田が、罠とわかっていながら、思わず、来ずにはいられないそんな魔法の言葉。

時東誠人には、一つだけ心当たりがあった。

「井の中の蛙だ」

翌日、クラーケンマン久保田和也を仕留める為の「井の中の蛙作戦」決行――。

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