№23 神殿での攻防戦・起
[Team S]は、高さ10M×幅4Mぐらいの正面玄関口より内部に入っていた。
パーティー&調査団は四列になって進んでいる。
ちなみに、最前線は、左から、男性武士のソリュウ/女性アサシンのシエル/少女剣士のシューラ/男性武闘家のサイザーとなっていた。
「敵が来てるわよ。」
シエルが教えた事によって、全員が足を止めて構える。
こちらへとダッシュしているのは、10匹くらいの[ゴブリン]であった。
オスとメスの割合は半々といったところであろう。
どれもが、背丈125㎝ほどで、“麻製の簡易的な服”を着用している。
武器は、木で作られた“棍棒”に“槍”のようだ。
いずれにしろ。
「ダクドニア!」
「ラウス!!」
女性召喚士たるサキが、[黒い子犬]と[白い小鳥]を呼び寄せた。
皆の頭上を旋回してステータスを倍増させた[カラドリウス]が、〝スッ〟と消える。
[ダークドック.Jr]は、後方より駆けあがってゆき、口から直径20㎝の【ファイヤーボール】を放ち、一体のゴブリンの腹部に命中させた。
それを合図に、シューラ達が乱闘になっていく。
二列目で、
「この狭さじゃ自由に戦えないな。」
男性シールダーのシリウスが、厳しそうな表情となり、
「確かに。」
男性騎士たるサーガが頷く。
彼らの背後で、
「しゃがんで。」
こう指示したのは、女性ガンナーのスイだった。
見れば、[短銃]を魔物へと向けている。
「成程。」
理解したシリウスが、床に膝を着きながら、
「魔法と矢も頼む!」
そのように仲間に伝えた。
これによって、
スイが発砲するのと共に、女性弓術士たるサザミンと、少年黒魔術士のソソが、モンスターらに攻撃したのである。
なお、ソソは、直径15㎝の【サンダーボール】を飛ばしていた。
これが胸にヒットしたオスゴブリンが、ダメージを負いつつ感電して、うつ伏せになる。
補足ではあるが、シリウス以外にも、サーガとサキに、女性白魔術士たるセイランが、低姿勢となっていた。
三列目は、スイ・サザミン・ソソと、男性陰陽師のソウヤである。
“調査団の4人組”は最後尾にて佇んでいる。
ソリュウ/シエル/シューラが武器を振るい、サイザーが素手で闘う。
ダクドニアは、爪で引っ掻いたり、噛み付いたりしていた。
一匹の敵が払った棍棒を、シューラが木剣で弾く。
そこへ、後方より駆けてきた別のゴブリンが、槍でシューラを突こうとした。
が。
「石よ。」
ソウヤが唱えるなり、直径15㎝程の範囲で床が1Mせり上がって、魔物の体を捕らえたのである。
身動きできずにいるモンスターの“鼻っ面”を、サイザーが右拳で殴ったところ、【クリティカルダメージ】になったみたいだ。
一方、眼前のゴブリンの“頭”を剣で叩いたシューラは、振り返りながら、
「ありがと、ソウヤ。」
礼を述べたのであった。
これに、陰陽師が〝ふむ〟と応える。
なんでも彼は“恥ずかしがり屋”らしく、リアクションが薄い。
そういった状況で、再び【火の玉】を発したダクドニアが、〝フッ〟と消えた。
どうやら、タイムリミットの1分を迎えたらしい。
均衡が崩れるなか、隙を窺っていた二体の敵が、こちらの前線を通過した。
連中の狙いは、きっと、[調査団]だろう。
それを察したシリウスが、
「させるか!!」
走り来る一匹のゴブリンに[木製の大楯]を押し当てる。
「同じく!」
もう一体の左肩を[木の大剣]で突いたのは、サーガだった。
これらに対して、弾丸・氷の玉・矢が放たれる。
そうこうしているうちに、[Team S]は、魔物集団を殲滅したようだ。
ひと息つきかけたところ、
「うぅ~む…。」
渋い顔つきになった“団長”が、
「おそらく、あの数で終わりという訳ではなかろう。」
「もはや、この遺跡はゴブリンの巣窟になっておるかもしれんので、用心したが良いじゃろうな。」
そのように分析したのであった。
「じゃあ、今のうちに、シューラちゃん達の怪我を順番で治癒していくわね。」
白魔術士の提案に、
「とりあえず、ポーションで、いい。」
「セイランは魔力を温存しといて。」
「あと、ソソたちは、MPやSPを回復しとこう。」
“金髪の少女”が答える。
これに誰もが納得した流れで、それぞれに[小瓶]を出現させ、液体を飲み干してゆく……。
▽
暫く前進したら、視界が割と開けた。
ここは[礼拝堂]なのだろう。
奥には、祭壇が置かれており、壁際に[巨大な女神像]が聳え立っている。
その左右には[鉄製の扉]が設けられていた。
こういった“広間”に、ふたグループのゴブリンたちと、人間みたいな少女が、存在している。
身長150㎝ぐらいの彼女は、耳の先端が尖っており、肌はグレーで、瞳は赤く、セミロングの髪は紫色だった。
剣士のような鎧&サークレット型の兜は、“ブラックとレッドのツートンカラー”で、鉄製みたいだ。
右腰に“鞭”を帯びているので、左利きに違いない。
そんなモンスターが目に映ったらしい団長が、
「もしかして…、魔人族の子供か??」
こう呟いたのである。
それを余所に、こちらの近くに居た“第一陣”のゴブリン12匹が距離を詰めだす。
祭壇の側では、8数のゴブリンと、1体の魔人が、待機していた。
そこら辺は未だ動く気配がないことからして、〝第一陣を倒すまでは仕掛けてこない〟といったプログラミングになっているのだろう。
とかく。
「まだ5分が経ってないから、どっちも喚び出せないよ。」
「全員、気を付けな。」
サキがメンバーに告げる。
召喚士のリキャストタイムが済んでいないなかで、臨戦態勢となる[Team S]であった―。




