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Arousal of NPC‘s  作者: ネコのうた
Chapter 1/最初の国
17/129

№17 不和

ゾースの後ろから、ゼシューたち[Team(チーム) Z(ゼット)]が項垂(うなだ)れがちで付いて来ていた。

ヤトの右隣で、[受け付けの若い男性NPC]に、

「ここのギルドのクエストは!?」

喧嘩腰で[戦士のゾース]が問う。

「逃げたペットを捕まえる。」

「都から最西端の村まで新品の農具を届けてあげる。」

「以上の二つとなります。」

[|ノンプレイヤーキャラクター《NPC》]が答えたところ、

「じゃあ、農具だ!!」

すぐさまゾースが返したのである。

「なッ?!」

「ちょっと待て!」

「戦闘の可能性がある依頼は、一旦、避けるべきだろ!!」

「このまま冒険するのは無謀だぞ!」

「俺達が置かれている状況を分かっていないのか!?」

[剣士のライザ]に責められ、

「あぁあんッ?!!」

「何度も同じこと言わせんじゃねぇ!」

「テメェらは黙ってオレ様に従えや!!」

「〝ペットを捕まえる〟なんて、かったりぃ事やってられっかよ!」

ゾースが“逆ギレ”した。

その間に、

「ヤト、もう済ませたんだろ?」

「だったら早く行こう。」

「女子たちが怖がってる。」

耳元でニケに促され、

「お、おう。」

茫然としていたリーダーが反応を示す。

これによって、中学生男女六人組が〝そそくさ〟と外に向かう。

屋内では、

「だったら、せめて、入手しているジュエルとアイテムを売却してポーション類などを買うべきでしょ。」

「じゃなければ、アンタ一人で旅に出なさいよ!」

[女武闘家のジリ―]が啖呵(たんか)を切る。

「んだとぉ。」

怒りを露わにしようとしたゾースを(さえぎ)り、

「そういうのは許可されているんだったわよね??」

「私達の場合、解散は認められないらしいけど…。」

[白魔術士のゼシュー]に確認したのは、[女性陰陽師のゼン]であった。

「あー、……、うん。」

「常に一緒じゃなく、別々に行動するのはOKだよ。」

「ただし、リーダーしかクエストの受注登録が出来ないけどね。」

ゼシューが述べたら、

「構わないわよ。」

「こんな独裁者に虐げられ続けるぐらいなら、目標を達成できずに命を落としたとしても。」

「それだと、結局、ゾースも困る訳だし。」

ジリ―が告げたのである。

「く…ッ。」

孤立しかけながらも、

「……、いいだろう。」

「このあと“換金所”に行ってやる。」

「だが!!」

「これからは反抗すんじゃねぇぞ!」

「ザイラみてぇにボコられたくなかったらなッ!!」

強気の態度を崩さなかったゾースが、[受付の男]に話しかけ直す。

そんな背中を憎らしそうに睨むメンバーだった…。



[イッチューズ]は、帝都の北西地区に在る“コロッセウム”の南側に【テレポーテーション】したらしい。

6名は緊張から解放されたかのように〝はぁ――っ〟と息を吐いた。

「あれって、何分か前に、門あたりで揉めてた人達よね?」

セブンの質問によって、

「ああ、間違いなさそうだ。」

ニケも思い出したみたいだ。

一方で、平常心を取り戻したカリンが、正面の“大きな施設”を見上げ、

「この建物って、なぁに?」

こう訊ねた。

「あぁー、“闘技場”だろうな、きっと。」

「過去の二作品では、プレイヤー同士での試合が可能だったり、NPCとのリーグ戦が開催されていたんだぜ。」

「ソロでもパーティーでも参加は自由で」と、ヤトが語っていくも、

「それは、また今度にしない??」

クマッシーに止められたのである。

その流れで、

「あの人たちも、僕らと同じクエストを受けるみたいだったから、急ごうよ。」

「もう、なるべく、鉢合わせになりたくないでしょ? 皆。」

クマッシーの意見に、

「うん、うん!」

「そうしよう!!」

激しく賛成したのは、エイトであった。



西に暫く歩いたヤト達は、“石造りで二階建ての家屋”に到着している。

黒い鉄扉(てっぴ)に備えられている“呼び鈴”を、リーダーが〝カラン カラン カラン カラン〟と鳴らした。

これによって、

「はぁい??」

茶髪セミロングを一本に束ねている“20代半ばの男性”が、ドアを開けたのである。

「どちら様で?」

弟子であろうNPCに窺われ、

「農具の件で…。」

ヤトが伝えたら、

「おぉ―!」

「冒険者さんでしたか!!」

「師匠に紹介しますので、どうぞ中へ!」

嬉しそうにしたのだった……。


一階は[鍛冶場]となっており、〝トン!! テン! カン!! テン!〟〝トン!! テン! カン!! テン!〟と、リズミカルで心地の良い音が響き渡っている。

主導権を握っているのは“角刈り白髪で60代前半の男”であった。

まさに[棟梁]といった風貌だ。

その側にいるのは“金髪ショートで30代後半の男性”である。

おそらく彼も弟子なのだろう。


親方であろう職人に、“茶髪セミロング”が耳打ちした。

中断して、

「おう、そうか。」

「悪いが、俺は手を離せねぇから、詳しいことはソイツに聞いてくれや。」

[イッチューズ]に喋り終えた棟梁が、作業を再開したところで、“茶髪セミロング”の頭上に[金色のダイヤマーク]が現れたのである。

改めてヤトが声をかけたら、

「では…、あちらの壁に立て掛けられている商品を、代表の方のアイテムボックスに送らせていただきます。」

こう述べたのである。

内訳としては“(すき)×10/(くわ)×15/草刈り鎌×20”といった数量だった。

「村長さんに農具を渡して、受領書を貰って来てください。」

「うちの師匠が報酬を支払いますので。」

「それでは、よろしくお願いします。」

NPCに伝えられて、“西門”に移る事にした[イッチューズ]であった―。


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