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Arousal of NPC‘s  作者: ネコのうた
Chapter 1/最初の国
16/129

№16 WWにおける設定④

“道具屋の窓口”にて。

「はい、いらっしゃい。」

「どれにしますか?」

おカミさんが尋ねてくるなり、[イッチューズ]の眼前に“商品一覧表”が現れた。

それは、防具屋のときと同じように[縦長(・・)の超薄型画面]であった。

書かれている文字に目を通ししつつ、

「HPはヒットポイントで、MPはマジックポイント、でしょ??」

「じゃあ、“SP”って、何?」

首を傾げたカリンに、

「あー、…、“スキルポイント”だな。」

「例えば、エイトのような精霊術士や、魔術士に、召喚士であったり、陰陽師は、MPなんだよ。」

「で。」

「それ以外のジョブは、SPという事になってるんだ。」

ヤトが教えてあげたのである。

「“復帰の粉”っていうのは??」

今度はセブンが質問したら、

「そこも過去作と同じみたいだな。」

こう呟いたニケが、

「RPGによってはヒットポイントが0(ゼロ)になると“死亡”ということになるんだけど……、このゲーム内では、気絶による“戦闘不能”といった扱いになって、ブラックアウトしたうえに、体が動かなくなってしまうんだ。」

「そこに仲間が“復帰の粉”を使ってあげれば、再び活動できるようになるってわけだよ。」

「ただし、HPやMPにSPは半分しか戻らない。」

「あとは…、パーティーの全員であったり、ソロのプレイヤーが、“戦闘不能”に陥ってしまった場合は、聖堂に転送されて、全回復の状態で再開されるって感じだね。」

と、説明したのだった。

女性陣が〝へぇー〟と理解を示すなか、

「他にもステータスが異常になったのを治す“特効薬”があるから、とりあえずバランスよく買っておこう。」

そのようにクマッシーが締め括ったのである……。



[Team(チーム) Z(ゼット)]は、力ずくでリーダーになった“ゾース”の考えが上手くいき、魔物たちを倒しつつ南西(・・)に足を運んでいた。

まさに〝順調そのもの〟だったみたいだ。

ここまでは(・・・・・)


新たに15数のモンスター達が向かって来ている。

その顔ぶれは、いつもと同じであった。

敵集団を視界に捉えたゾースが、

「止まれ!」

味方に命令する。

三人一組で、遺跡調査団の前後左右を囲んでいるメンバーが、これに従う。

先頭は、無論、ゾースである。

ともあれ。

身構える[Team Z]に、魔物らが突進してきた。

「返り討ちにしたらぁあッ!!」

ゾースが気を吐くなか、モンスター達が五匹ずつの“3グループ”に分かれる。

このうちの2つが、両脇を駆け抜けてゆく。

「あん?!」

ゾースの注意が削がれたところで、正面の[食人花]が“ピンク色の霧”を放射した。

更には、左右の班に含まれていた食人花たちまでもが、同様のアクションを行なったのである。

それらによって、9人が眠らされてしまう。

起きているのは、NPCである調査団と、最後尾の3名だけだった。

「草よ。」

[陰陽師のゼン]や、

「アイスボール!」

[30代後半の黒魔術士]が、急ぎ唱えるも、敵の数からして対応しきれなさそうである。

【特効薬】を幾つか持っていれば、違う展開になっていたかもしれない。

悔やんでも仕方ない状況で、魔物の7割ぐらいが、寝ている面子に襲い掛かった。

これによる衝撃で全員が目を覚ますも、なかには【クリティカルダメージ(致命傷)】を負った者らもいるみたいだ。

「ソロヒール!!」

後方支援たる[白魔術士のゼシュー]が【治癒】を施す。

とは言え、一人ずつしか無理なので、かなり慌てながら次々と発している。

その結果、途中で“マジックポイント”が底を突いてしまった。

焦ったゼシューが、数少ない[MP回復ポーション]を出現させたタイミングで、

「やってくれたじゃねぇーか!」

ゾースがモンスター達に反撃しようとしたところ、

「うわああああ――ッ!!」

「助けてくれぇーッ!」

といった叫び声が聞こえてきたのであった。

背後を見れば、様子を窺っていた残り3割の魔物が[痩せている男性調査員]を攻めまくっていたのである。

「っざけんなッ!!」

救出のため走りだそうとするゾースの左脇腹を、[ダークマウス.Jr]が“木製の槍”で突いて邪魔した。

「コイツっ!」

ゾースの意識が逸れるなか、ボコボコにされたNPCが〝ピクリ〟ともしなくなる。

ここに、悪い出来事が重なった。

クリティカルダメージをくらっていた仲間たちのなかで、ゼシューの【ヒール】が間に合わず、モンスターどもから追加で攻撃されてしまった者らが息絶えた(・・・・)のだ。

一人は[40代後半の女性騎士]で、もう一人は[50代半ばの男性アーチャー]である。

そのどちらもが、いくつもの“白く輝く泡”となって消滅(・・)したのだった。

「ああ、あ…。」

愕然とするゼシューなどを、

「今は自分が生存することに集中しよう!!」

[剣士のザイラ]が激励したのである。



[Team Z]はどうにかこうにか勝利を収めたものの、先程のNPCは亡くなってしまっていた。

「またも依頼を達成できんかったのう。」

「非常に残念じゃ。」

「儂らは、もう、帝都に帰る。」

「お前さんがたとは、もはや会う事など無いじゃろう。」

こう伝えた“団長”が、調査員を連れて【テレポーテーション】したのである。

誰もが沈黙するなか、〝ギリッ!〟と歯軋りしたゾースが、

「別のクエストを受けるぞ!!」

イラつきながら告げたのであった……。



ヤトたちは、改めて[サウスウエスト(南西)ギルド]に赴いている。

彼らは“最西端の村まで新品の農具を届ける”という依頼を選んでいた。

茶髪でポニーテールの[受付嬢]によれば、

「まだ魔物らが凶暴化する数日前に、この都に訪れた村民が、鍛冶職人に質の高い農具の生産を発注したそうです。」

「本来であれば、お弟子さんが完成品を搬送する予定だったそうですが…、モンスター達が活発になっており危険なので、その役を冒険者に代わってもらいたいと、棟梁が仰っていました。」

との話しである。

「ここまで御理解いただけましたでしょうか?」

「もう一度お聞きになりますか??」

NPCに訊かれて、

「いや、いい。」

ヤトが断った。

「そうですか……。」

「ちなみに、報酬は、お一人につき金貨1枚です。」

「期間は七日ですが、大きな問題に巻き込まれることなく、順調にいけば、村には四日ほどで到着するでしょう。」

「この案件を、お受けになりますか?」

女性の確認に、

「ああ、よろしく。」

ヤトが頷く。

「でしたら、みなさんの地図に、依頼主が待っていらっしゃる場所を赤丸で印しておきます。」

NPCが喋っていたところ、建物内に〝ズカズカ〟と入ってきたのは“ゾース”だった―。


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