№127 授受①
着地した赤竜は、まだ【ストップアクション】のため攻撃できずにいる。
そんなレッドドラゴンに、“少女剣士のシューラ”など[接近戦メンバー]が【スキル】を用いた。
これらをモロに当てられた竜は、直後に【ストップアクション】の効果が切れたようで、息を〝すぅ――ッ〟と吸いだす。
【火炎】を吐くために。
だが、
「サンダーボール!!」
“少年黒魔術士のソソ”が放った直径30㎝という【雷の玉】が先にヒットし、ドラゴンにダメージを負わせる。
すると、痺れて動けなくなるはずの赤竜が、
「うむ!!」
「よくぞ武を示した!」
「これを受け取るがよい!!」
そのように喋った。
次の瞬間、“男性シールダーのシリウス”の眼前に[縦型用紙]が現れる。
これを片手でつまみ、記されている文字を〝チラッ〟と見たシリウスは、
「おおッ!」
「“契約の書”だ!!」
少なからず興奮して、
「サキ!」
「ほら!!」
“女性召喚士”に差し出した。
両手で紙を掴んで、
「……、ダンジョン内や、屋内だと、全長5Mになるみたいだね。」
「〝ただし、それを下回る狭さの所では喚びだせない〟と。」
そう皆に伝えたサキが、
「名前、どうする?」
シューラを窺う。
これによって〝ん~〟と考え込み、
「レッドラ。」
そのように告げた彼女に、「いいと思う」や「じゃぁ、それで」と賛成するパーティーであった。
ここから、伏せたレッドドラゴンが目を閉じたところで、
「外に赴くか。」
そう述べて、開いた[画面]を確認したシリウスが、
「んあ??」
「“帰還の羅針盤”は不可になったままだ。」
このように知らせる。
「え?!」
「なんで??」
疑問を呈した“女性アーチャーのサザミン”に、「さぁ?」と首を傾げるシリウスだった。
「ふぅーむ…。」
「〝歩いて戻るしかない〟という事やもしれんな。」
そのように“男性武士のソリュウ”が推理したら、
「めんどくさっ。」
“男性武闘家のサイザー”が嫌そうにする。
しかし、
「ま、他に方法がないんだから、行くとしよう。」
穏やかに説いた“男性騎士のサーガ”によって、
「あー、ん。」
「だな。」
サイザーが納得したのもあり、[Team S]は来た道を引き返すために進みだした…。
全員、無言である。
さっきまでは明るく努めていたものの、やはり“女性アサシンのシエル”を失ったのがショックなのだろう。
重苦しい雰囲気だ。
こうして[一本道]を過ぎ、いくらか開けている場所に着いたところ、正面の[洞穴]より、
「遅れてすまない!!」
女性隊長を先頭にした“ドワーフ兵たち”が駆けてきた。
その流れで、足を止め、
「状況は??」
尋ねた隊長の頭上に[金色のダイヤマーク]が出現する。
シリウスが代表して経緯を語ると、
「つまり、竜に認められたっていう訳か?!」
「それは、実に素晴らしい!!」
嬉しそうに褒めてくれる“ドワーフの女性隊長”であった。
ここから、
「私達は、道すがら仲間の遺体を回収する。」
「なので、先に町へ戻ってもらって構わない。」
「金の羅針盤を持っているなら、時間を短縮できるだろう。」
「あとは……。」
「これをギルドで渡せば報酬が貰える。」
「いろいろと、ありがとう。」
隊長が[用紙]を出す。
それを手にしたシリウスが、
「羅針盤、使えねぇんだけど。」
こう呟くも、女性隊長の[ダイヤマーク]は消えてしまったので、会話ができなくなっている。
“女性ガンナーのスイ”が、
「もしかして、これで大丈夫になったのかも??」
「念の為、もう一度、見てみたら?」
そのように勧める。
「成程。」
理解したシリウスは改めて[アイテムボックス]をオープンし、
「確かに!」
「問題なくなっている。」
笑顔になった。
こうして、[Team S]が火山から外に【瞬間移動】する。
ちなみに、シューラたちは2つずつレベルアップしていた―。