№126 ドラゴンに挑む②
“女性アサシン”の全身が、いくつもの[白く輝く泡]となる。
後方にいる“女性ガンナーのスイ”が、
「シエル!!」
慌てたように声を発したことで、倒れている[接近型]が気づく。
「そんな…。」
“女性白魔術師のセイラン”が絶句するなか、“レッドドラゴン”が息を吸いだす。
【火炎】を吐くつもりに違いない。
今これを浴びたら、新たな犠牲者が出るだろう。
誰もが焦るなか、“女性アーチャーのサザミン”が[矢]を射った。
“赤い竜”は炎を扱うより先に【混乱】に陥る。
動きを止めたドラゴンが、[Team S]を〝じぃ――っ〟と観察しだした。
「今のうちに回復を!」
“男性騎士のサーガ”によって〝ハッ〟とした“女性白魔術士のセイラン”が、
「オールヒール!!」
急ぎパーティーに【治癒】を施す。
そうしたなか、揺蕩いながら上昇していた[泡]が一つ残らず消える。
この状況にフリーズした仲間を、
「赤竜に集中せぇいッ!」
「全滅しかねんぞ!!」
“男性武士のソリュウ”が説く。
「!」
「確かにその通りだ!!」
「皆! 専念してくれ!!」
そう“男性シールダーのシリウス”がリーダーとして呼び掛けたところで、タイムリミットを迎えて正気に戻ったレッドドラゴンが、身体を回転させるために反動をつけだした。
〝尻尾で薙ぎ払う〟のを察したスイが[ライフル]を撃ち、【ストップアクション】で竜の攻撃を止める。
更にトリガーを引いたスイによって、ドラゴンは【ストップムーブ】にもなった。
この隙に、“少女剣士のシューラ”など前線メンバーが、赤竜に【スキル】を使う。
それらに続き、“少年黒魔術士のソソ”が【アイスボール】を、サザミンが【スプリットアロー】を、放つ。
こうしたなか、
「セイラン。」
「念の為、もう一度くらい治癒魔法を頼む。」
「現在のHP数じゃ心許ないからな。」
シリウスが理解を求める。
それによって、頷いた白魔術士が、再び【オールヒール】を用いた。
この最中、自由になったレッドドラゴンが〝ぐるんッ!〟と回る。
尾が当たった“ソリュウ/シューラ/武闘家のサイザー/サーガ”が、またしても弾かれた。
ギリギリでセイランの【治癒】が間に合ったおかげで、4名のヒットポイントは持ち堪えている。
もし遅れていたなら、シューラとサイザーあたりが犠牲になっていたかもしれない。
シリウスのナイス判断であった。
しかし、[接近型]が横に弾かれた事で、[遠隔戦型]の正面が空いてしまっている。
ここへ、竜が咆哮を発した。
竦でしまった“スイ・ソソ・サザミン・シリウス・セイラン・召喚士のサキ”に、ドラゴンが低空飛行でタックルする。
6名を転倒させながら通過した赤竜が、宙で向きを変えた。
致命傷を負いながらもサザミンが[矢]を射る。
それが刺さったレッドドラゴンは、〝ん~?〟といった感じで首をかしげた。
【混乱】である。
こうした間に、各自がアイテムボックスから出現させた[HP回復ハイポーション]を摂取してゆく。
ヒットポイントを全快させるために。
だが、我に返った竜に【火炎】を吐かれてしまう。
[Team S]は、間一髪で助かった。
とは言え、危機が去ったわけではない。
ドラゴンが改めてタックルを開始したのだ。
スイがすぐさま撃った[弾丸]が命中した赤竜は【ストップアクション】となり、いささか上昇して、誰にも体当たりせず、元の位置に帰り、着地していく。
そんなレッドドラゴンに構え直し、呼吸を整えだすシューラ達だった―。