№107 行ったり来たり④
[宝石店]の左側に面した道を“シーフらしき青年”が走って逃げる。
それを、[Team S]が追いかけていた。
先頭は最もスピードがある“アサシンのシエル”だ。
この後ろに“ガンナーのスイ”と“武闘家のサイザー”が続いている。
他のメンバーは少し離されていた。
なかでも[重装備]の者らは、遅い。
そうした状況で、いくらかのNPCが往来している[路地]を“青年”が左へ右へと曲がってゆく。
「ん??」
「これって、“犯罪集団のアジト”に行く道じゃない?」
ふと述べたシエルに、
「確かにね。」
スイが返す。
駆けながら後ろを向いたサイザーが、
「アジトだー!!」
「犯罪集団のー!」
「そこを目指せー!!」
大声で伝える。
パーティーの殆どには聞こえたようで、頷いたり、片手を軽く挙げるなりして、応えた。
しかし、最後尾では、“武士のソリュウ”が、
「なんだって??」
眉間にシワを寄せ、
「分かんねぇ。」
“リーダーのシリウス”が首を横に振る。
「アジトに向かっているらしい。」
「犯罪集団の。」
こう“騎士のサーガ”が教えたところ、〝ほぉう〟や〝あー〟と理解を示す2人だった……。
例の家屋の玄関で、“戦士らしき男性”が相変わらず仁王立ちになっている。
そこに辿り着いた“シーフ”の頭上に[金色のダイヤマーク]が現れていた。
こうした“戦士”と“盗賊”は何やら喋っているみたいだ。
その近くで“シエル・スイ・サイザー”が足を止めた。
3名とも少なからず呼吸を乱している。
「話しかけてみっか?」
なんとなく提案したサイザーに、
「皆を待ったほうがいいんじゃない??」
スイが意見すると、
「私もそう思うわ。」
「もし、あの建物に連中の仲間が潜んでいたら、バトルになった場合、私達の不利になるわよ、数的に。」
このようにシエルが賛成した。
そうした考えに、サイザーも納得する…。
合流して肩で息する“少女剣士のシューラ/少年黒魔術士のソソ/白魔術士のセイラン/アーチャーのサザミン/召喚士のサキ”に、シエルが説明していく。
これが終わったところで、遠くから〝ガシャンッ! ガシャンッ! ガシャンッ! ガシャンッ!〟といった[甲冑]の音が幾つにも重なって響いてきた。
誰もが予想したとおり、[Team S]の“武士・シールダー・騎士”だ。
側でストップした3人の息は〝ぜぇはッ!! ぜぇはッ!!〟と荒い……。
「成程。」
「それじゃ、全員、いつ戦闘になっても構わないよう、準備してくれ。」
こう述べたシリウスが[大楯]を、サザミンは[弓]を、スイが[ライフル銃]を、それぞれに背中から取り外す。
更に、シューラは[ショートソード]を、シエルが[サイフォス]を、サーガは[両手剣]を、ソリュウが[小竜景光]を、腰の鞘から抜いた。
[杖]を所持している“ソソ/セイラン/サキ”に、[ハリケーンナックル]のサイザーも、OKみたいだ。
それによって、
「なぁ、お前。」
シリウスが“シーフの青年”に声をかける。
すると、
「げッ?!」
驚いた盗賊が、
「ここまで付いて来たのか??」
困惑と共に悔しがった。
こうしたところで、
「仕方ねぇ。」
「隠し通すのは難しいみてぇだから、オレらの基地に招待してやる。」
「ただし…、後悔すんなよ?」
“戦士の男”が意味ありげに〝ニヤリ〟とする。
その流れで、[木製扉]を開けてゆくのであった―。