№106 行ったり来たり③
“戦士の男性”が、
「犯罪組織ぃ~ッ?!」
「オレ達が??」
「証拠はあんのかッ!!?」
声を荒げる。
「いや、ねぇけど。」
そう“リーダーのシリウス”が伝えると、
「ふんッ!」
「勝手に決めつけんなッ!!」
このように返した男の頭上から[金色のダイヤマーク]が消えた。
「……、どうする??」
“武闘家のサイザー”が誰ともなく訊いたところ、
「改めてリーハの所に行く、とか?」
そう“ガンナーのスイ”が提案する。
「ん。」
「それがいいかもね。」
「他の手立てはなさそうだし。」
賛成した“騎士のサーガ”を、
「私もぉ、同じように思うわぁ。」
“白魔術士のセイラン”が後押しする。
これらによって、
「おし。」
「そんじゃぁ、飲食店に戻ってみっか。」
[画面]を開き、【テレポート】を選択するシリウスであった…。
[中央広場]から南下して、その場所に再び訪れている。
しかし、“裏情報屋のリーハ”はいなくなっていた。
既に何処かへと去ったのだろう。
“召喚士のサキ”が、
「あとは、礼拝堂か闘技場という事になるね。」
そのように述べると、
「礼拝堂から回ってみる??」
こう“アーチャーのサザミン”が窺った。
[Team S]の大半が了解するなか、
「いや、待て。」
「闘技場あたりにはNPCがおらんかった故、そっちじゃなかろうか?」
“武士のソリュウ”が意見する。
「一理あるな。」
〝ふむ〟と頷いた“シールダーのシリウス”が、
「じゃ、まずは、闘技場に赴こう。」
そう決めたことで、全員が納得した……。
[コロッセウム]の南側に【テレポーテーション】している。
これで二度目だ。
時間帯は夕方になっていた。
各自が周りを見渡していき、
「あ!」
「あれ。」
“少年黒魔術士のソソ”が南東を指差す。
そちらに皆が視線を送ってみたら、[宝石店]の前で騒ぎが起きている。
“貴婦人らしき中年女性”と“シーフみたいな恰好の青年”が[レディースバック]を引っ張り合っていた。
なお、女性には[ダイヤマーク]が現れており、
「これはわたくしのよ!!」
「手を離しなさい!」
こう喋っている
その近くでは“年配の男性”が仰向けで倒れていた。
服装からして“執事”のようだ。
“シーフの男性”に殴られるなりしたのかもしれない。
何人かの野次馬がいるが、全てNPCらしく、戸惑っている。
「行こう。」
このように告げて、走りだしたのは、“少女剣士のシューラ”だ。
それにパーティーが続く。
ある程度シューラたちが寄ったところで、力負けした貴婦人が尻餅を着いた。
[バック]を奪った男が警戒しつつ後退りするなかで、
「大丈夫か??」
シリウスが心配したら、
「購入したばかりの宝石が入っているの!!」
「わたくしのバックを取り返してちょうだい!」
こう女性が頼んでくる。
次の瞬間、[Team S]の足が自動で止まった。
「なんだこれ?!!」
サイザーを始め、皆が驚くなか、“ひったくりの青年”もストップする。
その流れで、シューラ達の正面に、直径50㎝で極薄の[サークル]が展開された。
こうした[円]の中で、〝5〟〝4〟〝3〟と、カウントダウンが進んでゆく。
そして、〝0〟になるなり、犯人がダッシュで逃げ出す。
と同時に、誰もが自由になる。
すぐさまソリュウが、
「追うぞ!」
このように発したことで、パーティーは改めて駆けだした。
しかしながら、シリウスやサーガにソリュウといった[重装備]の者は遅い。
「取り敢えず!!」
「軽装のメンバー!」
「よろしく!!」
そうシリウスが言ったところ、
「任せて!」
ぐんぐんとスピードを上げていく“アサシンのシエル”だった―。