№104 行ったり来たり①
「その人物は、リーハという通り名で呼ばれている。」
「今は二代目だ。」
「ま、それはいいとして…。」
「いつも、だいたい、礼拝堂、飲食店、闘技場、ここら辺りを巡っているらしい。」
「それ以上の事は俺にも分からん。」
「すまないが、な。」
「情報としては、こんなもんだ。」
「それじゃあ、銅貨5枚を貰うぞ。」
こう語り終えた中年男性に支払いを済ませた“リーダーのシリウス”が、
「何処から行ってみる??」
仲間を窺う。
「順番でいいんじゃないかな?」
“騎士のサーガ”による意見に、誰もが頷く。
「つーことは、礼拝堂からか。」
「じゃ、ひとまず外に出ようぜ。」
シリウスによって、玄関へと向かう[Team S]だった……。
北西区に在る[礼拝堂]の東側に【テレポート】する。
そうしたところで、
「あれ、金色のダイヤ。」
“アサシンのシエル”が気づく。
頭にスカーフを巻いている40歳くらいの女性に近づいて、
「リーハっていう人を知らないか??」
シリウスが訊ねたら、
「さぁ? 分からないわ。」
「ごめんなさいね。」
このように述べた。
「それじゃ、次に向かいましょう。」
“アーチャーのサザミン”に促された事で、シリウスが再び[画面]を開く。
[地図]をチェックし、
「飲食店の側には瞬間移動できないみたいだから、一旦、中央広場に渡るぞ。」
そう伝えるシリウスであった…。
シューラたちは、広場から[南の大通り]を歩いている。
ちなみに、道幅は15Mあたりだ。
およそ1分後、道路に面した場所に[飲食店]があった。
位置としては南西区だ。
この店内へと足を運ぶ……。
ゲーム内ではあるがお昼時になろうとしている頃なので、お客さんがそこそこ居る。
こうしたなか、奥の[テーブル席]に座っている男性にダイヤマークが見受けられた。
肌は褐色で、眉や瞳に髭は黒く、ターバンとガラベーヤは白い。
そんな小太りで40代後半ぐらいの男性に、
「リーハを探しているんだが…。」
シリウスが声をかける。
軽く「ふむ」と反応を示した男性が、
「合言葉を確かめさせてもらうぞ。」
「ここは飲食店だから、それにちなんで、まずは……、弱火で?」
このように質問してきた。
メンバー全員が〝え??〟と困惑すること数秒、
「時間切れだ。」
無情に告げた男性から[金色のダイヤ]が消える。
“武士のサイザー”が、
「おいおい、どうすんだ? これ。」
そう呟いたところ、
「もう一度、ギルドの情報屋を訪ねてみるか??」
“武士のソリュウ”が提案した。
この考えに誰もが賛成する…。
屋外に出てみたら、痩せ型の“男性老人”の頭上に[ダイヤマーク]が浮かんでいた。
「はぁ。」と溜息を吐いている老体に、
「何か悩みでも?」
シリウスが相談に乗ってあげようとする。
「おー、聞いてもらえるのか??」
「実はな、ついさっきスリに遭ってしもうたようなんじゃ。」
「今月分の財産、全て失ってしもうて、途方に暮れておったんじゃよ。」
老人が事情説明を終えると、シリウスの眼前に[縦長画面]が自動で現れた。
そこには……、
金貨1枚を恵んであげますか?
・YES
・NO
と書かれている。
この内容をシリウスが教えたら、
「ちょっと高いわね。」
“ガンナーのスイ”が目を細めた。
「でもぉ、人助けだしぃ、構わないんじゃない??」
そう勧めた“白魔術士のセイラン”に、
「もしかしたら、何かに繋がるのかも?」
“少女剣士のシューラ”が続く。
これを、
「一理あるかもしれないね。」
そのように“召喚士のサキ”が後押しする。
「あり得るかもな。」
納得したシリウスが、[YES]を選択したところ、
金貨1枚を与えました。
こう表示された。
その流れで、
「なんと??!」
「こんなに?!!」
驚いて、
「ありがとう!」
「ほんっとうに、ありがとう!!」
感謝した老体が、
「儂に返せる恩があれば、なんでもやってあげよう。」
「困っておることはないか??」
嬉しそうに喋る。
「あー。」
「試しに、だけど…。」
「合言葉って、知ってたりはしないよな?」
シリウスが念の為に尋ねてみたら、
「……。」
「ん??」
「もしかして、リーフのか?」
「それだったら分かるぞい。」
「何せ、儂が初代じゃからな。」
〝ニカッ〟とする老人だった―。