№102 オアシスでの攻防戦・急
“ガンナーのスイ”が[銅製のライフル]で撃った弾丸が、“魔人少年”の左肩に当たる。
【ストップムーブ】を付与していたらしく、男子は宙に浮いたままで止まった。
とは言え、〝封じられるのは移動のみ〟なので、少年が左手で【魔法陣】を構築しだす。
しかし、“武闘家のサイザー”が間合いを詰めるなり[ハリケーンナックル]の右拳で、男子の左脇腹を殴る。
これによって【マジックサークル】が消えた少年へと、“武士のソリュウ”が[刀]を突き出す。
その[小竜景光]は、今度こそ男子の胸元に刺さった…。
一方で、“剣士のシューラ”と“アサシンのシエル”は、“魔人少女”に翻弄されている。
苦戦を強いられる二人の背後から、
「挑発!!」
との声が聞こえた。
女子は、シューラ&シエルを無視して、その【スキル】を発した人物に向かいだす。
これを二人が目で追ったところ、“褐色肌の女性指揮官”の右隣で、“リーダーのシリウス”が[大楯]を構えていたのである。
どうやら、襲ってきていた魔物たちを片付けたらしい。
このような状況にて、シリウスへと接近した少女に、
「一点集中!」
“騎士のサーガ”が[銅の両手剣]を繰りだした。
それが腹部に直撃した女子は、1Mほどノックバックする。
しかも、【クリティカルヒット】になったようで、空中から落ちた少女は、砂地に右膝を着いた。
これを、シューラとシエルが仕留めに掛かる……。
その頃、負傷しながらも再び攻撃を躱していた男子の右肩に、“アーチャーのサザミン”による[矢]が刺さった。
【混乱】を用いていたらしく、少年が宙で〝ぼぉー〟っとしだす。
こうした男子の胸元で、“黒魔術士のソソ”が放った【エクスプロージョンボール】が爆ぜた。
それによって、少年が崩れ落ちる。
ここを攻めるは、ソリュウ&サイザーだった…。
“魔人コンビ”が粒子になってゆくなか、“女隊長”が立ち上がる。
そんな彼女の頭に[金色のダイヤマーク]が現れた。
シリウスが代表して、
「クエスト達成って事で、いいんだよな?」
このように訊ねる。
それによって、
「おかげでオアシスを取り返せた。」
「感謝する。」
会釈した指揮官が、
「これをギルドで渡せば報酬が貰えるから、持って行ってくれ。」
丸めた形状にて紐で縛った[用紙]を差し出してきた。
「おう。」
受け取ったシリウスは、
「じゃ、王都に帰るか。」
[画面]を操作していく……。
都の[中央広場]にて。
「お。」
「町中でも、体とかに付着していた砂は無くなるんだな。」
ふと述べたサイザーに、
「ほんとだね。」
ソソが頷く。
こうしたところで、
「ひとまず、喉が渇いたから、水、飲ませて。」
そのように告げたシエルが[アイテムボックス]を開くと、誰もが「俺も」「私も」と続いた。
この流れにて、
「あ。」
「“契約の書”を新たに入手してたみたいだから、今、そっちに送る。」
シリウスが“召喚士のサキ”に伝える。
内容を確認したサキは、
「ふむ。」
「オスの“ディザートポイズンスコーピオン”だね。」
そう呟いた。
翻訳すると“砂漠の毒サソリ”だ。
さておき。
〝ん~ッ〟と考え込んだシューラによって、
「ディズオン。」
こう名付けられたのである。
何はともあれ。
「それじゃぁ、ギルドに赴くとすっか。」
そのように提案したシリウスが、改めて【瞬間移動】を扱う。
ちなみに、[Team S]は、全員が1つずつレベルアップしていた…。
[ノースウエストギルド]で、金貨110枚が入れられた[革袋]をゲットする。
これを、シリウスが分配していった。
「……、ここには、現在、クエストがないんだったら、別のギルドを訪ねてみる??」
そうスイが窺ったら、
「いや、あっちの世界は、そろそろ夜の九時になるから、今日は、もう、宿屋に泊まって、ログアウトしよう。」
このようにシリウスが意見する。
異論がなかったことで、まずは歩いて建物から外に出る[Team S]であった…。
▽
小一時間が経っている。
ゲーム内はPM13:29で、現実はPM21:59あたりだ。
[北の港町]に、ヤトたちの姿があった。
そこの[塩屋]で報酬を得た“武士のヤト”が、
「あっぶねぇー。」
「クエストの期限まで残り1分、ギリギリだったぁ。」
「良かったな、間に合って。」
笑顔で仲間に話しかける。
“シールダーのクマッシー”に“精霊術士のエイト”が〝ニコニコ〟するなか、
「ん。」
「だな。」
「じゃ、オレは、これで。」
“戦士のニケ”と、
「私もあっちに戻るわ。」
「バイバイ。」
“弓術士のカリン”は、無表情で【ログアウト】した。
「本当にどうしちまったんだ?」
「あの二人。」
首を傾げるヤトに、
「つ、疲れたんじゃないかな??」
「ニケもカリンも、モンスター相手に、すっごい暴れ回っていたから。」
「後で、ニケには、僕が連絡しとくよ。」
クマッシーが話しかけ、
「カリンは、私に任せて。」
こうエイトが告げる。
「そっか?」
「だったら、ついでに、明日の集合時間も伝えといてくれよ。」
ヤトが頼んだところで、
「来るかしら?? 二人とも。」
「あの様子だと、怪しいんじゃない?」
そう疑問視する“忍のセブン”だった―。