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第16話 意外な謝罪と未来に繋げる反省

 師匠のレースを見逃してしまったので、謝ろうとしたのだが……


「申し訳御座いません。全て私が話しかけたせいです」


 何故か、木野さんが東尾師匠に必死に謝罪している。

 180cm近い長身の木野さんが、身長165cmの東尾師匠に頭を下げる姿は、師匠の頭上目掛けて頭突きを食らわせている様に見えてしまう。


「あっ、えっ、気にしないで下さい」


 いきなり見知らぬ他人に謝罪されて師匠も戸惑っている。

 しかも木野さんは長身で、動作が大きく見えるからとても目立つ。


「ほら、東尾も気にしてないから木野さんも謝るの止めよう?」

「西野が言う事じゃないだろ、西野が!」


 師匠の言う事はごもっともだ。


「すまない師匠。一緒のレースを走っていた相手と話すのが初めてだったから、時間を忘れて話し込んでしまった」


 私も師匠に謝った。本当は殆ど西野と話し込んでいて、木野さんは関係なかったのだけど。そんな私を見て師匠が腕を組んで頷く。


「あぁ、分かるよ。一緒のレースを走った相手は、ライバルと言うより仲間って感じる時があるからね。そう、奇妙な連帯感を感じるんだ。戦友みたいなものかな。それなら俺のレースを観戦するより二人で話した方が良いな」

「師匠のレースの観戦より?」

「そうだ、俺と猛士では実力がかけ離れていて、練習の強度がかけ離れていたり参考にならないだろう?」

「そういう事なら遠慮しないで木野さんと話しを続けるよ」

「ちょっと、そんな事言ってると、また見逃すわよ?」


 西野が呆れた声で私と師匠の会話を遮る。


「何を見逃すって? 残りはエリートクラスのレースだけど、知り合いは参加していないだろ?」

「あなたの表彰式でしょ!」


 そうだった。見ていなかったが、師匠はエキスパートクラスで優勝していたのだった。表彰はエリートクラスのレースが終わってからだが、西野に言われなければ忘れて帰るところだった。

 レースを見逃した上に、表彰式まで見逃したら流石に師匠も怒るだろう。

 4人でロードバイクのパーツやトレーニングについて話し合っていたら直ぐに表彰式の時間となった。

 名前を呼ばれ、師匠が表彰台の一番上に立った。そして賞状とトロフィーを高らかに掲げる。師匠カッコイイな。私達は記念にスマホで写真を撮った。

 表彰式が終わり、写真を交換するついでに木野さんと連絡先を交換した。

 これで次回のレースとか一緒に走りに行く約束が出来るな。

 そして、それぞれ帰り道が違うのでレース会場で別れるのであったーー


 *


 自宅に帰りレースの反省をする。

 インターバル耐性が結構ついたから、立ち上がりはある程度こなせる様になった。だけど、ホームストレートとバックストレートでの巡行で結構足を削られたな。そのせいで、6周目で立ち上がりのパワーが出せなくなった。

 明らかに基本的な持久力が足りていない。

 持続力の向上を狙う必要があるが、心拍トレーニングだけでは管理が難しいな。仕方がない、お金がかかるがパワーメーターを購入するか。思い立ったら吉日だ。早速シゲさんに電話してパワーメーターを注文した。入荷に二週間かかるとの返答だった。

 パワーメーターが届くまでの二週間の間は、スマートトレーナーでパワートレーニングを行おう。スマートトレーナーにはパワー計測機能がついているからね。

 二日後、レースの疲れが取れたので、持久力を表す基本的な数値FTPを計測する事にした。20分間の平均パワーの95%の数値を採用する方法だ。本当は1時間漕ぎ続けた平均パワーなのだけど、1時間も全力で走るのは大変だ。

 ロードバイクをスマートトレーナーにセットして早速計測を始めた。

 先ずはウォーミングアップ。軽快にペダルを漕ぎ続ける。20分経ち、体が温まった所で計測を始める。勢いよくペダルを漕ぎ始めたが5分で明らかにパワーダウンしている。あと15分も漕ぎ続けるのか……開始5分で既にギブアップしたくなる。

 これはヒルクライムと同じだ、ケイデンスを保って無心になって漕ぎ続ければよいのだな。適切なパワーの目安が分からないので、心拍数を頼りに安定したパワーで漕ぎ続ける。

 何とか20分乗り切り、サイコンに表示されたパワーを確認した。20分間の平均パワーが210Wだから、FTPは95%の199.5Wになるのか。そうすると体重78kgの私のパワーウェイトレシオは2.56倍……3倍すら超えていないのか!

 これでは才能以前の問題だ、ヒルクライムなど出来るはずがない。

 パワーを上げるのが先か? 体重を下げるのが先か? 

 中年の私には痩せるのもパワーを付けるのも大変な事なのだが、身長175cmでも78kgは流石に重たすぎるから痩せる方が先との結論に至った。

 それなら西野に相談するのが早いだろう。早速痩せたいと相談の連絡を送るとすぐに返事が返ってきた。


『来週の土曜日に、お気に入りのスイーツコースを案内するわよ』


 スイーツコース? 痩せるのにスイーツとはどういう意味なのだろう?

 まぁ、聞いても教えてくれないだろうから、楽しみに待つとしようかーー

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