なぜか俺だけ美少女戦隊の一員にされたんだが
思いついたから書いた。
ちょっと後悔している。
「悪魔戦隊ダークファントム!私達が相手よ!」
ピンクの髪とスカートをなびかせ、美少女戦士ブリリアントパールのひとり、キスカはハート型のタンバリンを持って敵の周りを飛び回りながら魔法の力で次々襲い来る雑魚敵を粉砕する。
「私達は、ゼッタイ負けない!」
青いショートヘアーとスカートをなびかせ、美少女戦士のひとり、バロックは星型のタンバリンを持って敵を魔法の力で次々無力化して行く。その隙を縫うように。
「今よ!ミキモト!」
パールバロックが叫ぶ。そこに颯爽と現れたのは──
俺。
「どぉりゃあああ!死にさらせぇぇえ!」
俺は渾身の力を込め、魔法で強化したその拳で敵の額を粉砕する。
こいつの弱点は、額にある宝石。
これを粉砕すると、体が霧散するのだ。
並の力では無理だ。
鍛え上げられた上腕二頭筋と、強化魔法の力が合わさらなければ……
俺は金の長髪をなびかせ、黄色のミニスカをはためかせて砂煙の中、拳を高々と挙げる──
……くそっ。
俺は一体、何をやらされているんだ?
ことの発端はダークファントムの雑魚敵に絡まれたことから始まる。
大学で学生プロレスをやっている俺は、その日ブリリアントパールが来る前にちゃっちゃと雑魚敵をやっつけてしまったのである。
すると、何やら神々しいじいさんが天から降りて来た──
「見所のある男じゃ。ブリリアントパールの一員にならぬか?」
「断る」
俺はすぐに断った。
じいさんは深く頷く。
「……男女雇用機会均等法という法律があってな」
「知ってる」
「ついにブリリアントパール団体が行政指導を受けた」
「いや知るかよマジで」
「そこで、従来のブリリアントパールに男子を一名入れねばならんのだ」
「てめーがやれよじじい」
「歳でな……」
「若けりゃやってる的なテンションだな」
するとじいさんは不敵に笑った。
「くくっ……青いのぉ」
「?何がおかしい」
「貴様、油断していたな!お前はもう既にブリリアントパールの一員じゃ!」
「!!」
「ふっ。かかったな馬鹿め。隙を見て魔法をかけたのだ」
気がつけば、俺はその鍛え上げられた肉体に黄色のミニスカを履いていた──
仕方がなかった。
ダークファントムが現れたら、強制変身イベントが発生してしまうのだから。
この怪しげな女装から解放されるには、敵を叩き潰すしかない。
ただ、俺もそろそろ限界だった……!
「どうしたの?ミキモト。こんな所に呼び出して……」
キスカとバロックが言う。ここはブリリアントパール団体会議室だ。あのじいさんも俺が呼び立てた。会長だからだ。
「……俺はブリリアントパールから脱退する」
会議室内に衝撃が走った。
「な、なぜ……!?」
「説明させるの?この格好で?」
俺は黄色いミニスカをはためかせて足を組む。
「あなたがいなければ、どんどん強くなるダークファントムに勝てないのよ!?」
キスカ……
「私達、力を合わせて、いつだってうまくやって来れたじゃない……」
バロック……
「選ばれしお前さんには、世界を救う義務があるのじゃぞ!?」
じいさん……
その瞬間。
俺はじいさんの額に拳をめり込ませていた。
「んなっ……!」
キスカとバロックが同時に立ち上がる。
神様みたいな格好の、このじいさん。
「……お前ら、これ見てみろよ」
二人のブリリアントパールはハッと顔をこわばらせる。
なんとじいさんの額の傷から、あのダークファントムと同じ宝石が現れたのだ。
「……これで分かっただろう」
俺は呟いた。
「このじいさんが黒幕だったんだ。ダークファントムとブリリアントパールを戦わせ、その放映権料をせしめていた。とんだ興行主だぜ。プロレスのブックどころの騒ぎじゃない……」
じいさんは霧散した。ブリリアントパール達は肩を落とした。
「そういうわけだ。俺はここを去る。ブリリアントパール達も、達者でな」
俺が会議室を出て行こうとした、その時。
「ちょっと待ちなさいよ!」
キスカが叫んだ。俺はびっくりして振り返る。
「え……?何?」
「会長殴ったら、私達、給料出なくなるのよ!」
「私達、どうやって生活して行ったらいいの!?売れないユーチューバーだった私達が!」
「親玉倒してくれちゃって、あと32回の放送回数はどうするわけ!?」
ブリリアントパールらの勢いに俺は目を白黒させた。こいつら、そんなに給料出てたの?なんで?俺は無給だったというのに?
俺はとっさに二人をなだめた。
「待て、早まるな!俺に妙案がある──」
かくして、俺はブリリアントパール団体の会長に就任した。
WWE女子王座で彼女達が天下を取るのは、また後々のお話……。