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総理が倒れました!至急官邸に!

 10月26日(水)朝の事である。私、大和龍臣(61)が私邸から自由党本部へ車で向かう途中、同乗していた公設第一秘書の河西敦哉(47)の下に着信が入った。


「はいもしもし。あーいつもお世話になっております。えっ。はい。わかり、ました」

「どうしたの」

「首相補佐官の斯波さんからです。大和先生に代わって欲しいと」


 私は河西からスマホを貰い、電話を替わった。


「変わりました。大和だが、何かあったか」

「大和先生、今どちらにおられますか!?」

「今は党本部に向かっているところだが」

「至急、官邸にお越しください!総理が倒れました!ですから官邸に今すぐお願いします!」

「何!?由良木がか?」


 私は運転手に首相官邸に急行するように指示した。気が動転しかけたが、それで斯波を混乱させては悪いので、出来るだけ冷静に振舞った。それから、斯波が私にだけ電話を掛けているのではなく、様々な人間に連絡を取っている事を察し、なるべく早く通話を終わらせようと、顔から一瞬スマホを離して運転手に何分かかるか聞いた。15分くらいと言われた。


「わかった。今すぐ向かう。後10分で着くから」

「ありがとうございます!では後程、失礼します」


 そして秘書にスマホを返して運転手に伝えた。


「5分で行け。安全は二の次で良い」

「そう言われましても…」

「馬鹿野郎、こういう時に早く駆け付けた奴が一番信頼されんだよ!」


 運転手はアクセルを強く踏み込み、霞が関周辺で最も速いスピードを出すのは私の乗る車となった。


「風雲急を告げる。またとない好機…いやその前に由良木の無事を祈るか」


 私はそう呟いて、目を閉じて、到着を待った。




 それから5分、本当に首相官邸に着いた。運転手によると246ではなく国道3号を使った事が当たった模様だが、それはどうでも良い。


「もうここで降ろしてくれ。河西、行くぞ」


 私は官邸前の交差点で降ろしてもらい、そこからは走って官邸に向かった。呼ばれたからには一秒でも早く駆け付けたかったからだ。


「先生、5階に向かってください。私は後から行きます」

「はぁ?お前還暦超えたジジイより脚力無いのかよ」

「ハァハァ。先行ってください。これ以上ダッシュは無理です。すいません」


 息も絶え絶えの河西は置いて行く事にした。かれこれ10年はそばに置いているが、運動が苦手とは知らなかった。


 やがて首相官邸の正面玄関に着き、エントランスホールに常駐している記者らが、私がダッシュで官邸入りする様を見て、フラッシュを焚きに焚いて来た。黄色い歓声、ではなく白色の無機質な光を浴びながら、私はエレベーターは使わず階段を一段飛ばしで駆け上がった。


 あまり知られていないが、官邸は斜面に建てられている都合で、正面玄関に入る側の標高が高い。その為に正面玄関は建物の3階に相当するところにある。なので私は4階に上がった事になる。


 官邸はいつになく職員が慌ただしい動きを見せていた。周りに政治家が見当たらず、一番乗りを確信した私はどこに行けばいいのかと戸惑った。するとたまたま斯波が通りがかった。


「先生、もういらっしゃったのですか。3階の南会議室にお願いします」


 そう言うと斯波は行ってしまった。のんびり話す暇などない。総理が倒れたのだ。仕方ないので私は階段を駆け下りた所で、ようやく着いた河西と合流し、南会議室へ向かった。そこは大会議室や小・大ホールに比べると小さいが、連絡会議などに使用される場所だ。


 南会議室の扉を開けると、中には職員が何人かいた。こちらでしばらくお待ちくださいと言われ、待っていると知った顔が部屋に入って来た。


「おお、ヤマトン、お疲れさま」


 そう私に声をかけたのは一ノ瀬康世国会対策委員長(60)だった。一ノ瀬とは大学時代、弁論部で出会って以来の盟友で互いにヤマトン、コウヤンと呼び合う仲だった。大学卒業を機に疎遠となったが、政界にて再会を果たしたのである。


「おうお疲れ。それにしてもコウヤン、大変なことになってるみたいだな」

「官邸は党員系はこっちに集めて、入閣組は上に上げてるみたいだな」


 コウヤンは上階を見上げて言った。それが大会議室なのかそれとも誰かの執務室かはわからない。その後も党の役職に就く議員が続々と集まって来た。連立を組む公益党の議員は来ていないようだった。


 2時間ほどすると、ほとんどの党の幹部が出揃い、首相秘書官の伊端がやって来てこう言った。


「すいません党三役の先生方と一ノ瀬先生と友利先生は私が先導しますので、大会議室までお願いします」


 友利周(65)とは選挙対策委員長である。党の意思決定に重要な役割を果たすいわゆる党三役、つまり幹事長と総務会長と私の政調会長、それから比較的地位が高いとされる国対委員長のコウヤンと選対委員長の友利が呼ばれたことになる。


「ヤマトン、山が動くぞ」


 我も同感である。

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