安保対を設置し、特命大臣を任命する。
同日(10月17日)午後 在日米軍撤退に関する総理レク(チャー) 総理執務室
事態急変の為に、東郷は記者会見を中止。そして総理執務室には続々と人が集まっていた。
総理執務室には、閣僚と側近で2、30人ほどの人が集まり、閣僚らは総理と長卓を囲み、その脇の長卓には副大臣級、さらに補佐官らは部屋の壁に沿って置かれた椅子に座っていた。
「まず総理、何故会見中、一転して米軍の撤退を認めるように指示してきたのですか」
「ベネフィットが今からテレビ演説で発表するというから、ならこちらから言った方が良いだろう?」
「電話会談の事ですね?」
「そうだ。半時間ほど前にそう伝えられたんだ」
「人も集まってきたようですし、そろそろよろしいかと」
そう言ったのは沢渡副総理兼財務大臣だった。由良木はうむと頷いた。
「まず、私から一つ言いたい。これは中々重要で重大な議題だ。ゆえに、在日米軍撤退及び安全保障に関する政府対策本部を設置する案件だと考える」
「それは筋違いでしょう。私のところではいかんのですか。もしくは特命担当大臣を任命するやり方もある。あくまで対策本部は緊急事態とか災害で使う物ですよ」
藤堂国家安全保障局長はそう述べた。NSSで管轄出来るというのが藤堂の見方だった。
「いや藤堂さん、ここは返って例外的な措置を取って、やってる感を出した方が良いと思いますので対策本部の設置と特命担当大臣両方やってしまうのはどうですか」
岡本農水大臣は28個も上の人間にそう言った。
「やってる感ねぇ…」
「国家安全保障会議の創設に関する有識者会議では、国防に関する緊急事態における初動対処の概略フローと言うのが示されてまして、そこでは国家安全保障会議の上に対策本部が設置されることを想定しています。これは緊急事態とみなして対処すべきかと思います」
「うーむ」
「総理、岡本の言う通りかと私も思います。ご決断を」
東郷が岡本に加勢した。由良木はそれを見て岡本の案を取る事に決めた。
「わかった。よしでは対策本部長は私が、それから特命担当大臣としては、安保担当大臣を任命し、防衛大臣と兼務としたいが」
「総理、少し荷が重いですね。ただでさえ忙しいので出来れば他の者に」
「そうか。なら嘉納、お前がやれ」
「私でございますか!?」
嘉納は官房副長官、副大臣待遇なので、特命担当大臣になるのは有り得なくはない。ただ藤堂さんとかを差し置いて自分は果たして適任だろうか、そう考えた。
「総理、私は…」
「嘉納くんですか。よろしいんじゃないですか」
嘉納が藤堂を推薦しようとしたのだが、その矢先に藤堂がこう言ったので、安保大臣は嘉納恒寿が任命される運びとなった。
「ではここからの話は、対策本部の第一回会議として大会議室で行いましょう。皆さん移動してください」
東郷がそう指示した。
在日米軍撤退及び安全保障に関する政府対策本部第一回会議 大会議室
記者らの撮影を受けつつ、本部長の由良木は長々と原稿を読み、対策本部の設置を高らかに宣言した。
記者らが退出し、第一回の会議が始まった。
「まず、私東郷より提案をさせていただきます。まず、呼称ですが、あまりに長いので略称として『安保対』で統一させて頂きたいと思います」
「異議なし」
「では、次に、副本部長についてですが、私、内閣官房長官と、浜田防衛大臣、嘉納安保特命大臣とし、本部員は本部長と副本部長を除く全ての国務大臣とします」
「異議なし」
「最後に諮問機関として安保対専門家会議、それから本部長の指名した官職にある者による安保対幹事会を設置します。よろしいでしょうか」
「異議なし」
かくして、安保対の設置に至った。なお、幹事会とは、次官、審議官、局長レベルの会議であり、議長は藤堂NSS局長が務めることとなった。