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副総理はスパイかもしれない。

 コウヤンが帰った後も組閣作業は続き、あらかた決まったところで軍師が電話し、党の有力者に了解を取った。主要ポストは以下の通りだ。


 内閣総理大臣 大和 龍臣

 副総理・財務 一ノ瀬 康世

 総務大臣   諸岡 浩希

 法務大臣   亀川 孝彦

 外務大臣   浜田 昭彦

 文部科学大臣 石田 義武

 厚生労働大臣 越野 一憲

 農林水産大臣 鷲見 隆徳

 経済産業大臣 守山 啓

 国土交通大臣 澤崎 孝道

 環境大臣   金久保 知昭

 防衛大臣   成瀬 耕司

 官房長官   東郷 龍太郎

特命担当大臣   

 国家公安   菊島 泰秀

 沖縄北方   勝浦 有樹子

 IT科学技術 平沢 義弘

 経済再生   安間 知樹

 地方創生   川又 真織

 安全保障   嘉納 恒寿


自由党役員

 幹事長    友利 周

 総務会長   都倉 政義

 政調会長   稲場 信明

 選対委員長  西野 昴

 国対委員長  新保 和寿

 筆頭副幹事長 家村 直人

 総裁特別補佐 岡本 明



「こうして見ると、中々大胆な人事になりましたね」

「まぁ。一番大胆なのは君な気もするが」


 軍師はそう言うと、少々真面目な顔を作った。


「一つ言っておきたい事が有るんだが」

「何ですか」

「一ノ瀬君について、彼は君と長い付き合いなんだよな」

「ええ。大学時代からの」

「気を悪くするような事を言うが、一つ気掛かりな点があって」

「なんなりと仰ってください」

「最初に、安保の件がメディアに漏れたのはいつか覚えているか」

「1週間ほど前かと」


 今は10月26日(火)の深夜であり、夕日新聞の朝刊が何者かのリークによってこの件を報じたのは10月18日の事だ。


「どこから、情報が漏れたのかが気になっていてな。閣僚懇談会での席で由良木さんが話したのが10月11日だった」

「そこにいた人の誰かが漏らしたと」

「恐らくそうだ。だが、私はその席で口外しないように言ったんだ」

「となると、誰かがその約束を違えたと」

「一ノ瀬君は、その日の夜に詳細を知ったとこう言っていたな。私は彼には口外しないようには言っていない。知っているとは思っていないからな」

「という事は、まさかあなたは一ノ瀬がリークしたと言うのですか」


 私は若干殺気立って軍師を「あなた」と呼んでしまった。


「その席で口外しないように言ったとはいえ、自分の秘書くらいには言ってもおかしくない」

「その秘書から一ノ瀬君に、そして一ノ瀬君がリークをしたという事ですか」

「もちろん。あくまで可能性、推測に過ぎない」

「ええ。もちろん」

「だが彼は、先程先生方には誰も言っていないと言っていた。メディアに言ったという含みを残したように聞こえたが」

「それは考えすぎでは」

「あと一つ。これは君は初耳だと思うが、10月11日の閣僚懇談会。正確にはその後の総理レクで、話を由良木から聞いた時の事だ」


 軍師は、一呼吸置いた。私は一旦耳を傾ける事にした。


「一人だけリアクションが他人と全く違う奴がいた」

「それは誰ですか」

「外ならぬ岡本だ」

「岡本君ですか」


 軍師の後継者の名前が出てくるとは意外であった。


「あいつは、確かにおかしな事を何も考えずに口走る事はある。だがあの場では、皆が本当に驚いていたんだ」

「それは、まあそうでしょうね」

「ベネフィットには散々苦労してきたとはいえ、ここまで横暴な事を言われた事は一度もなかったからな」

「岡本君はどんな反応を見せたのですか」

「いやぁ、ベネフィットさんも随分狂っておいでですな。こう言いおった」

「それは、確かに言われてみれば、初耳のリアクションでは無いですね」


 軍師は岡本の事を良く知っているし、今まで育ててきたはずだ。その軍師が岡本の事を何か怪しんでいるのは驚きだった。


「不自然だろう?私の第二の仮説は、一ノ瀬君が岡本に事前に伝えていたのではないかという事だ」

「だから反応がおかしかったと」

「それで、総理レクの後、岡本が一ノ瀬君に詳細を伝えた。こういう事なんじゃないだろうか」

「でも、岡本君と一ノ瀬に何か繋がりがありますか?」

「わからない。ただ、私は少し疑っている。疑いたくはないが」


 私の盟友、一ノ瀬と軍師の愛弟子とも言える岡本君が陰で繋がっているという事か。


「私は総裁特別補佐の件を伝えるのと一緒に、岡本に探りを入れる。君も一ノ瀬君に話を聞いてみてほしい」

「わかりました」

「悪いが、あの男は信用しない方が良い」

「いや、彼は私の盟友です。そんな男ではありません」


 私ははっきり軍師に言った。多少の圧を込めたが、流石に百戦錬磨、経験豊富の軍師には全く効かなかった。


「大和さん。スパイは、あなたの一番そばに居るんだ」


 軍師の予感は当たるだろうか…。


 いや逆に、軍師がスパイで、私とコウヤンの関係を断とうとしているのか?だがそんな事して何になる?


 7人組の謀議で、軍師は最後まで私に支持を表明しなかった。それどころか、誰もが納得出来る基準でと言っていたではないか。


 ひょっとして軍師にとっては、私が総理である事が不満なのか?


 だが、軍師の仮説も一理ある。確かにコウヤンと岡本君に何らかの関係があるのかもしれない。


 私は内閣0日目にして、懸案を背負っていく事になるのか…。

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