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ACT.8 「美少女二人の間にイケメン投入→ どうなるか分かるな? そうだキャッキャウフフだ。それが『なろう』だっ!! 」

出逢った三人の平和な(?)日常。


 18歳の杏子が懐かしそうに呟く。


 杏子 「……そう。三人で声をあげて泣いたあの日。アタシたちはトモダチになった。それから全てが変わり始めたんだ」


 +++++++++++++++++++++++


 事実、陣が「ひまわりの家」に来てから、杏子と梓、そして全ての子供たちの生活は一変した。


 上機嫌なケア・スタッフら大人たちが、大盛りのご飯、清潔な服、ケーキやプレゼントなどを持って現れる。

 それらを惜しげもなく、杏子ら子供たちに配る。

 まるで夢のような生活。

 それまでの悲惨な毎日とは似ても似つかない「幸福」な日々が訪れたのだった。


 18歳の梓が、過ぎ去った幸福な時間を眺めて言う。


 梓 「清潔な衣服。おなかいっぱいのご飯。お祝い事でのプレゼント。何もかも、陣くんが来る前にはなかったモノ。陣くんが来て、マイナスがプラスに逆転した」


 11歳の杏子と梓、左右から陣に抱きつく。

 くんずほぐれつ。

 幸せに幸せに笑う、杏子と梓。


 梓 「そして何より嬉しかったのは、むやみやたらと大人たちにぶたれなくなったこと。特に陣くんの前では、あの善丸父さんでさえ、手をあげなくなった」


 ある日のこと。

 子供をぶたせるようにケアスタッフに指示を出そうとしていた善丸。

 ふと陣の視線に気付き、ごまかしつつ咳払いをする。

 曖昧な笑みを浮かべながら、スタッフを促してあたふたと消える。


 大人たちが明らかに陣の顔色をうかがっているのを見て、杏子ら子供たちは驚く。


 梓 「本当にコレには誰もが驚き、自分とは違う特別な存在として陣くんを認め、あっ、と言う間に陣くんは『ひまわりの家』の人気者になった」


 杏子と梓を押しのけて、子供たちが陣を取り巻く。

 陣のもみくちゃにする他の子どもたちに、明らかな敵対心を燃やす杏子と梓。


 梓 「当然のことながら。杏ちゃんと私は、あの日以来、ずっと陣くんにべったりで、それはとても幸せな日々だった」


「オルァッ!! 」「ドラァッ!! 」とドスの効いた掛け声を発しながら、子供たちを蹴散らす二人。


 ギャーッと悲鳴をあげながら、陣を取り囲んでいた子供たちが逃げてゆく。


 その状況に満足し、改めて陣にまとわりつく杏子と梓。

 二人の対応に追われる陣。


 杏子 「陣、陣!! 鬼ごっこしよ!」


 梓 「陣くん、絵本読も!! 三匹のヤギのがらがらどん。トロルがバラバラにされるの、超ウケルよ!! 」


 杏子 「ほらっほらっ!! ゼリーあげるよ!! 赤いのよ。プルプルなのよ」


 梓 「これ!! このウサギのヌイグルミはね『ミツヒデ』っていうの。可愛いでしょ? 」


 杏子 「(臭いをかいで)ツバ臭いっ!! 」


 梓  「臭くないッ!! 」


 杏子 「ドブの臭い? 」


 梓  「杏ちゃんヒドイッ!! 」


 二人の次から次へと繰り出される話題というか、要求というか、とにかく矢継ぎ早なアクションに目を白黒とさせる陣。


 ―― ある夏の日。昼下がり。


 いつものように杏子と梓が陣を独占している。


 杏子 「陣!! 陣!! 裏山にクワガタがいるって!! 捕獲、捕獲!! 」


 麦藁帽を被り、虫網に虫かごを手にして「捕獲捕獲」といきり立っている杏子。

 対する梓はというと……


 梓 「おままごとしよ。おままごと!! ……お医者さんごっこでも……陣くんとならオッケイだよぉ。オフッ」


 と、なんだか良く分からない感じに盛り上がっている。

 それを見た杏子「チッ」と舌打ちをして、地面に落ちていた小枝を拾って言う。


 杏子 「はい、じゃ、梓ちゃんバカだから頭にお注射しまーす」


 言いながら小枝の切っ先を、梓のつむじ目掛けて刺そうとする杏子。


 梓  「ちょっ!? なに!! 無理無理無理、やめてよ!! 枝が頭に根付いたら花咲いちゃうじゃん!! 」


 杏子 「バカの花だよ。お似合いだよ」


 梓  「だったら杏ちゃんだって、バカの実がなる樹が生えるでしょ? バカバカの実が出来るでしょう」


 2030年現在。なんやかんやあって、ジャ〇プでワ〇ピースは連載を終了出来ずにいた。


 杏子 「バカって言う方が……」


 梓  「バカなんだったら、先に言ったのはどっちよぉおおおっ⁉」


 いつになく強気な梓。

 ピキピキと表情が変わってゆく杏子。

 一触即発の二人。

 野良犬のガチの唸り合い。

 他の同世代とは気合が違いすぎる二人。

 だが、そんな二人の間にわけなく入って、陣が二人を押し止める。


 陣   「落ち着こ。二人とも、落ち着こ。ね? ね?」


 勢いをおとした少女二人。

 陣にニヘラァ~と笑って左右から抱きつきはさみながら言う。

 とてもとても幸せそうに言う。


 梓  「杏ちゃーーん。今日は陣くん、私と遊ぶんだからっ」


 杏子 「なに言ってんの。陣は今日アタシとクワガタ獲りに行くの。ク・ワ・ガ・タ」


 陣がなんとも困ったなといった表情で、二人に挟まれながら訴える。


 陣 「三人で。三人で一緒に遊ぼうよ」


 グフウフフと笑いながら、陣を挟んで杏子と梓は「ままごと」「クワガタ」を繰り返している。


 まさに男一人を間に挟んでの、キャッキャウフフ状態。


 しばらく二人の好きなようにさせていた陣だったが、あまりにいつまでも終わらないわ、真夏で三人くっついてるから汗だくだわで、とうとう我慢できずに叫ぶ。


 陣 「オッケェーーイ!! わかった!! じゃあ、こうしようっ!! 『クワガタを獲ることで生計を立てる、クワガタ猟師一家』のままごとをしよう。僕が猟師で、梓ちゃんがそのパートナーたる猟犬、杏ちゃんは僕のライバルで、村一番の称号を競い合う猟師仲間の役!! 」


 杏子 「斬新な……配役っ!! 」


 梓  「アオォォーーーンッ!! 」


 陣  「よーし、じゃ、クワガタ、根絶やし、だー!! 」


 杏・梓 「根絶やし、だー!! 」


 梓に首に首輪をかけ、どこからかライフルタイプのエアガンを持ち出してくる杏子と陣。クワガタを撃ち落とし、次々と捕獲していく。


 杏子 「あっ!! 向こうに超大物発見!! 捕獲、捕獲ぅ~!! 」


 陣  「根絶やしだぁああっ!! 」


 梓  「アオォォーーーンッ!! 」


 雑木林に向かって、笑いながら駆けてゆく三人。

 真夏の太陽がギラギラと容赦ない日差しを地面に投げつけている。

 痛いくらいに暑い夏。

 杏子と梓にとって、痛いくらいに愛おしかった夏。

 でも夏は、季節は、必ず過ぎ去る。


 とてつもなく大きな入道雲が空に現れるようになった晩夏。


「ひまわりの家」に、ある女がやってきた……。

最後まで読んでくださってありがとうございます。


よろしければブックマーク、ポイント評価をお願いいたします(´;ω;`)

ファンアートとか、イラスト、もしも描いて下さる方おられたら泣きながらジャンピング土下座です。


また夕方にも次話更新予定!!

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