ACT.7 「太陽に泣き吼えろッ!! 1人より2人。2人よりも3人。3人寄って泣いてたら誰の心が痛かったのかなんて分からなくなるから」
ついに少年が登場!!
彼は一体……?
夕焼け空の河原。
西陽の赤い光を横顔に浴びて、1人の少年が神妙な面持ちでやってくる。
うずくまり泣きじゃくる二人の少女。
先に少年に気付いたのは梓だった。
不思議そうに少年を見上げる梓。
少年は、とてもとても悲しそうな顔で、杏子を見つめている。
杏子の前にかがみ込んで、傷ついた手を見つめ、そして、たった一言だけ言葉を発した。
「……痛いね」
悲しくて優しくて切なくて、でも温かい声。
フッと涙でグシャグシャになった顔を上げる杏子。
ポケットからハンカチを取り出し、少年は杏子の手にそれをグルグルと巻き始める。
さからわず、されるがままの杏子。
横でそれを見た梓がとても驚いている。
杏子が、誰だか知らない男の子に「触られること」を許すなんて……!!
物心ついてからずっと、あの「ひまわりの家」で過ごしてきた二人。
人は環境によってその「心」を作られるという。だから、二人の心は言わば野良犬そのものだった。
野良犬は、けして簡単に心を開かない。
常に牙を剥いて威嚇し続ける。
強かに他の犬を出し抜くことを考える。
そうしなければ、生きていけないからだ。
特に杏子はその傾向が激しかった。
小さな身体で、しかも可愛い顔立ち。
彼女のことを邪な目で見るものは本当に多かった。だから彼女はいつも自分で自分を守ってきたのだ。牙を剥き続けてきた。
そんな杏子が、見ず知らずの少年にされるがままになっている。
不思議で不思議でたまらない!! といった表情てわ少年を見る梓。その視線を受けて少年が口を開いた。
陣 「僕は、陣。今日から『ひまわりの家』で、君たちと一緒に住むんだ。だから二人とも、僕とトモダチになって欲しいな。お願い」
それまでの悲しげな表情から一転。
陣は、ニッと少年らしい明るい満面の笑みを浮かべてみせた。一本生え代わりで抜けているど真ん中の前歯が、なんとも面白かった。
そんな陣の優しい顔と、優しく巻かれたハンカチを交互に見る杏子。すると、せっかく泣き止んでいた彼女の顔がみるみる崩れ、またよりいっそう大きな声をあげて泣き出した。
梓 「杏ちゃん!! 大丈夫?杏ちゃん!! 大丈夫? 」
そう聴きながら、梓には杏子が安心して泣いてるんだということが分かっていた気付いてた。
……『痛いね』。たった一言。でも、その一言は、まるで冷たい水の中から掬い上げてくれる手のように、温かかったのだ。
これが、杏子と梓、そして陣の出会い。
運命の幼馴染みの、3人の出会いだった。
梓 「杏ちゃん!杏ちゃ…う、えっ…杏ぢゃぁーーーん!(泣く)あーーーーっ!」
とうとう梓も、杏子に負けない大声をあげて泣きはじめる。
どうしていいか分からずオロオロとする陣。ついには陣まで一緒に泣きだしてしまう。
三人 「ああーーーーっ!! 」
夕陽をバックに、大きく口を開け、泣いている三人のシルエット。
三人はそのまま、太陽が西の向こうに沈み切るまで、そうやって泣き続けていた。
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18歳の杏子が懐かしそうに呟く。
杏子 「……そう。三人で声をあげて泣いたあの日。アタシたちはトモダチになった。それから全てが変わり始めたんだ」
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