ACT.6 「許せない罪と×罰×罰×罰×罰×罰×罰×罰×罰×罰×罰×」
杏子の悲しみ。
梓の想い。
心の痛みは、なにで消せばいいのだろうか。
11歳の杏子が、泣き叫びながら全速力で駆け出す。
その後ろ姿を、さも面白いものでも見るようにして、善丸の嗤い声が響き渡る。
善丸 「マイナスですねぇ!どうしようもないマイナスですよ!ヒヒヒッ。ヒーヒヒヒヒヒヒヒ!! 」
善丸の不気味な高笑いが、ひまわりの家に木霊する。
子供たちの、恐怖に色を失った虚ろな瞳。
歪んだ大人と子供の関係が、その児童養護施設には腐った空気のように淀んでいた。
――夕刻。
近所の川の土手。
全速力で走ってくる杏子。つまづいて盛大に転ぶ。そのまま胎児のようにうずくまり、涙を流して吼えている。
手には、どこから持ってきたのか銀色に鈍く光るフォークを握っている。
妙に、その切っ先が「鋭い」もののように見える。
杏子 「ううう――……わああああああああああっ!!!」
泣き吼える杏子。
吼える。
吼える。
吼える。
そしてなんと、逆手に握ったフォークで、何度も何度も自分の右手を刺し始める。
刺す。
刺す。
刺す。
杏子 「うわぁ!(刺す)うわぁ!(刺す)うわあああ!(刺す)」
―― 血が。
杏子の右手の甲から、冗談では済まないような血が流れる。
肉が抉れる音。
金属が骨にぶち当たる音。
杏子は歯を食いしばって、自らに「罰」を、そして「×」を与え続けている。
梓 「……!! 杏ちゃん!? 」
そこへ、あちこち杏子を探してやってきた梓が駆けてくる。
杏子のやっていることを見て、サッと顔色が変わる梓。
しゃにむに飛びついて、杏子を必死に止めようとする梓。
梓 「やめ!! やめてよ!! 杏ちゃん、やめてよ!! 杏ちゃん、杏ちゃん!! 杏ちゃん杏ちゃん杏ちゃん杏ちゃん杏ちゃん杏ちゃん杏ちゃん!! 」
杏子を羽交い絞めし、必死に止めようとする梓。
しかしそんな梓の手を振りほどき、何度も何度も右手を刺し、抉る杏子。
―― いやだいやだいやだ。
―― ゆるせないゆるせないゆるせない。
―― この手の……あの子を叩いた感じ……
―― 消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ。
杏子の頭の中は、自分の罪を責める自罰の言葉で埋め尽くされた。
まるで右手を刺し貫かんほどに力を込め、大きくフォークを振り上げる杏子。
絶叫する梓。
梓 「もう、やめてぇええええええええ!! 」
杏子の手に必死に、全力で、それこそ死に物狂いで飛びつく梓。
しばらくもみ合った後、ついに梓はフォークを杏子の手から奪い取り、すぐさま川に向かって投げ捨てた。
遠くで、飛行機が飛んでいく音。
流れる続ける幼い血と涙。
杏子 「うわあああああああああああああああああああああ――っっ!! 」
うずくまり泣く杏子。
その杏子のすぐ横で、梓も悲しくて悲しくて涙を溢れさせる。
いつまでもいつまでも、二人の涙は止まらなかった。
―― どれくらいの間、二人はそうしていたのか。
太陽が、西の空にあとしばらくしたら沈もうかという頃。
そんな二人の元へ。
ある少年が。二人の運命を大きく変える少年が、やって来たのであった。
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