ACT.2 「シャツはイン?アウト?どっちがシャレオツ?んなこたぁ、石田純一にでも聴いてくれ」
ノリノリのテンションでいきますっ!!
読んでくださってる方、本当にありがとうございます( ;∀;)
大隈アキヲがフラフラと歩いている。
短い金髪にサングラスにスカジャン姿。頭を抱え苦しんでいるようだ。駅前の喧騒。店から流れる適当な音楽。雑踏。車の音。
アキヲが車道に転びでる。車に轢かれそうになり罵声を浴びせられる。
男 「死にたいのか、コラァ!」
ぶつぶつと独り言を言うアキヲ。ドライバーは気味悪そうな視線を投げ掛け、また車を走らせていった。
アキヲはいま……
自分の中のもう一人と、会話をしている。
アキヲ 「……はは。こうしてもう、3日だぜ。おい相棒、あんまり無茶すんなよ。何度言や、わかるかな。コレぁ、もう、俺のモンなんだよ!ぐうううっ」
頭を抱え、その場にうずくまって苦しむ。
アキヲ 「(声が明らかに違う)僕は……もう一度あの二人に会うんだ!」
アキヲ、立ち上がりよろよろと歩いてゆこうとする。そこへ黒服のSPが現れる。
SP 「大隈アキヲさんですね。探しましたよ」
反射的に逃げようとするが、腕を捕まれるアキヲ。それでも振り払って行こうとするが、もう一人別の黒服SPが現れ、行く手を阻まれる。
SP 「(携帯で)たったいま、保護しました。はい。これから連れ帰ります」
雑踏の音が高まり、ヘリコプターの飛ぶ音も聴こえ、アキヲの意識が飛ぶ。
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ーー朝。
鉄工所の食堂。
スーツ姿の杏子と梓が立っている。
二人とも食堂の壁に据え付けられた、大きな姿見に映る自分に見入っている。二人の足元にはウサギのヌイグルミ「ミツヒデ」が転がっている。以後、このミツヒデは常に梓が携帯している。
梓 「ねぇ、杏ちゃん」
杏子 「なに?梓」
梓 「やはりシャツはイン、ですか」
杏子 「やはり、イン、でしょう。ここは」
梓 「インですか…」
杏子 「一般的には」
梓 「思い切って、アウト、という手は?」
杏子 「…大胆」
梓 「試す価値はあると思います」
杏子 「なるほど。では試してみましょう」
スカートからシャツの裾を出してみる二人。
梓 「…」
杏子 「…」
ポーズを二度三度と変える。
間。顔を見合わせ、無言でシャツの裾をスカートにしまう二人。
梓 「…ごめん。朝から負けが先行して」
杏子 「大丈夫。まだ始まったばかり。取り返していこうよ。気分を変えて」
梓 「じゃ、じゃ、人生初スーツの感想、聴いていいかな?」
杏子 「オッケイ、初スーツの感想ね」
梓 「Yes! Welcome 感想」
杏子 「ナイス、中途半端な英語力。アタシと梓は、生まれてすぐに捨てられた、捨てられっ子。児童養護施設『ひまわりの家』で出会って以来、ずっと一緒に過ごしてきた親友だ。養護施設を抜け出た今も、このシノヤマ鉄工所の下宿に二人で住んでる。……初スーツの感想は、そうね、思いのほか、エロイ」
梓 「エロス!どのあたりに?」
杏子 「オフィス・ラブ」
梓 「想像力ですね」
杏子 「加えて、自分の中の、『アンナ的なモノ』が呼び起こされた気がします」
梓 「アンナ的?それは土屋的な?それとも梅宮的な?」
杏子 「どちらでも可です。ホラ、どう立ってみても、モデル立ちに」
梓 「なるほど」
杏子 「ここね。この腰のあたり」
梓 「エロス・オブ・アンナ・イン・ジ・オフィス。もはやモンスターですね」
杏子 「ギャォーつって。実際、アンナたちならギャォーくらい言うよね、コピーとりながら」
梓 「言う言う」
杏子 「その日、アタシと梓は十八歳になって初めての『総理大臣直接指名選挙』の投票日を迎え、とある目的でもって、清き一票を投じに参りましょうってハラで。早朝からフレッシュ・スーツに身を包み、戦闘態勢バッチリ!テンションあがりっぱなし、つう状態であった。時に西暦2030年、6月8日。で、梓はどう?」
梓 「んー、そうね。やはり自分に対する新たなdiscoveryありますね」
杏子 「聴きましょう。discovery」
梓 「なんつうか、こう、9時5時的な?12時になったらキッチリお昼的な。それでいて土・日・祝は有無を言わさず休みます的な。なんだかそういう、杓子定規な内面を意識せずにはいられない…そんな感じです」
杏子 「それはズバリ、公務員だね」
梓 「コーム・イン!公共の僕!」
杏子 「もしくは、コンビニ店長を悩ませるワガママなパートのおばちゃん」
梓 「OH!K・Y!K・Y of Obatarian!&コーム・イン!」
杏子 「その相反する二つの内面、統合すると、ある結論に達します」
梓 「どんな結論?」
杏子 「辻元○美」
梓 「最悪じゃない!」
杏子 「最悪です」
梓 「トラウマ!トラウマ、bymyself!」
崩れ落ちる梓。
杏子 「乗り越えて。心の傷、乗り越えるたび、強くなれるから。人は」
梓 「うん。こんなトラウマ、いつの間にか波平さんどころかマスオさんの声優まで変わってたのに気付いて以来だけど、がんばる。強くなる、私」
杏子 「実際、梓は強くなった。幼い頃、毎日のように泣かされていたのがウソみたいだ。今じゃ、街のチンピラくらいなら逆に泣かせている。全ては陣のいなくなったあの日から。アタシは、ずっと変われてないままなのに…」
そこへ靖恵子が買い物鞄を提げて現れる。
靖恵子 「あら、早いね。アンタたち」
杏子 「靖恵子さん」
梓 「おはよう!靖恵子さん」
靖恵子。この人こそ、杏子&梓の絶対的尊敬対象の「育ての親」である。
ここまで読んで読んで下さって本当にありがとうございます!
続きはまた今夜の19時過ぎに投稿します!!
引き続き杏子と梓にお付き合い下さい(*´∀`)♪