神デレラ
秋月 忍 様が行なわれている企画に便乗参戦してみました。
全く面識無いので苦情がありましたら削除するかもしれません。
とある国のとある家に3姉妹が暮らしておりました。
一番下のデレラは姉とは違い容姿端麗でいつも姉二人に苛められています。
「ほらっデレラ洗濯を早くやっておしまい!」
「それが終わったら私たちの食事を作るんだよ!」
「私達が食べている間に庭の掃除しておくんだよ!」
気の弱いデレラは言い返す事もせずに毎日暮らしていける事を幸せなのだと考え頑張っていました。
そんなある日・・・
「ちょっとこれ見てよ!」
「まぁ?!王子様の花嫁候補を探すパーティ?!」
彼女たちの住む国の王子様が成人され結婚相手を探すパーティを行なう旨が国中に通達されました。
条件は若い女性と言う事のみの告知、それに姉二人は太った体を震わせて歓喜の声を上げる。
「王子様の花嫁に選ばれれば将来は安泰ね!」
「毎日食っちゃ寝の毎日が送れるわ!」
この国の若い女はそれほど多くない、それを理解している二人の姉はせっせと庭の掃除を行なうデレラに視線を送った。
確率を上げる為にも邪魔者は排除しなくては・・・
そう考えた二人は直ぐに行動に出た。
「デレラ、それが終わったら地下室の掃除をやってちょうだい」
「そしたらお昼ご飯食べて良いからさ」
ニンマリと頬肉を吊り上げた笑顔をデレラに向ける二人の姉。
それを聞いてお昼ご飯が久しぶりに食べられると上機嫌になったデレラは地下室へ向かいます。
ですが・・・
「さようならデレラ、今までありがとうね」
無残にも地下室への扉は姉二人に閉められてしまいました。
中は密室、入り口を塞がれれば虫を殺すために空気も通ら無いように設計されています。
デレラはその中に1人閉じ込められてしまいました。
そして、パーティの当日がやってきました。
姉二人は日に日にゴミ屋敷と化して行く家でゴミみたいな臭いを放ちながらドレスを着て出発します。
デレラが居なくなり食事も掃除も自分達が出来るわけも無くそうなるのは当然でした。
ですがそれも今日まで、二人の姉の脳内には今日から城で王女として暮らす日々しか頭にありません。
そんな姉二人が出発した家の地下室に異変が起こりました。
「ア”ア”ア”ア”ア”・・・」
それはデレラだったモノ。
窒息して姉二人に恐ろしいまでの恨みを持ったまま死んだ彼女はゾンビとなって地下室を彷徨っていました。
そこへ1人の魔女が降り立ちました。
「ア”?」
「可哀想な娘だこと、純粋な貴女に私からプレゼントを贈りましょう」
「ア”ア”ン?」
「ただし魔法の効果は12時の鐘が鳴り終わるまで、それを忘れないでね」
そう言って魔女は地下室の扉を開けてデレラを外へ連れ出します。
魔法でかぼちゃを馬車に、デレラの服装をドレスに、地下で死んでいたネズミを馬と従者に変身させました。
「さぁ、最後にコレを履きなさい」
「ア”ッ?」
それはガラスの靴、それを装備したデレラは準備を整え終えて王城へ向かいます。
二人の姉への復讐の為に・・・
王城では数名の花嫁候補の女性達が順番に王子様と踊っておりました。
そこへ到着したデレラの姿に会場は騒然となりました。
血の気が殆ど無い程の美白、見た事も無い美しいドレス、なによりその異様な異臭・・・
ですが既に会場に入っていた二人の姉と似た様な臭いだった為に誰もその異常に気付きません。
「パーティへの参加者ですか?」
「ア”ア”」
「ようこそいらっしゃいました。どうぞ中へお進みください」
入り口を通されてゾンビデレラはふら付きながら前へと歩み続けます。
その動きは隣国で最近流行の酔拳にも似た動きで偶然にも気に止める人は居ません。
そして、会場へ到着したゾンビデレラは姉二人の姿を発見しました。
「えっ?ま・・・まさかデレラ?」
「そんな・・・嘘でしょ?」
その姿を見て驚愕する姉二人、ですがゾンビデレラは嬉しそうに両手を前に突き出したまま歩み寄ります。
今までフラフラと歩いていた筈なのに徐々に足取りは真っ直ぐとなりそのまま一直線に太った姉二人に襲い掛かりました!
「ギャァアアアア!!」
「いやぁあああ!嘘許してデレラ!」
1人の姉が首筋に噛みつかれ悲鳴を上げ、もう1人が漏らしながらへたり込みます。
ですが首筋を噛むのを止めないデレラ、しかし不衛生で太くなった首はゾンビとなったデレラの歯では噛み切れず葉型が残るのみ。
しかし、恐怖で気を失った事で満足したのかデレラはもう1人の姉に襲い掛かります。
それを騒然となった会場で見守るのはこの国の王子。
「これが・・・噂に聞くキャットファイト・・・ごくり」
高級感溢れる美しいドレスが汚れる事も気にせずに乱れあう女性達。
その姿に王子の心は打ち抜かれました。
「肉食系女子・・・素晴らしい・・・」
そうしている間にもう1人の姉も気を失いデレラは立ち上がります。
顔中にゾンビデレラの歯型を残した姉を見下ろし虚ろな瞳をしているデレラ・・・
その時でした。
ゴーン!ゴーン!ゴーン!・・・
時刻を知らせる鐘が響きます。
それを聞いたゾンビデレラは魔女から言われた言葉を思い出し、その場を逃げ出し始めます。
その動きはゾンビとは思えない程しっかりとしており、城の入り口の階段へと辿り着きました。
彼女こそ我が妻に相応しいと慌てて追い掛ける王子様。
しかし、悲しい事に最後の鐘が鳴りゾンビデレラは階段の途中で魔法の効果が切れます。
重かったドレスが急に軽くなった事でその身は浮かび上がり階段を踏み外してしまいます。
ゴン!ゴン!ゴン!ゴン!
「ア”ッア”ッア”ッア”ァ”ッ!!」
そのまま階段を転げ落ちながらゾンビデレラは斜めに落下した事で横の池へと落下しました。
ザッパーン!
そこへ駆けつけた会場の人々!
ですがそこで驚く事が起こります。
池の中から女神が現れて一番近くに居た王子に問いかけます。
「貴女が落としたのは金の彼女ですか?それとも銀の彼女ですか?」
それを聞いた王子様は答えます。
「いえ、私はまだ彼女を落としていません!」
明らかに女神の予想の斜め上を言った答えにその場の誰もが困惑する。
女神も少し困った感じで金と銀のデレラを横に立たせたまま悩んでいる時でした。
「ア”ア”ア”ア”ア”!!!」
水の中から女神の体目掛けて這い上がってきたみすぼらしい服装のゾンビデレラ。
魔法が解けてその姿は正しくゾンビその物。
予期せぬゾンビデレラの襲撃に驚き襲い掛かられた女神はそのまま押し倒されます。
しかし、その時でした。
「化け物め!我が城で好き勝手はさせないぞ!」
そう言って王子様が剣を抜いてゾンビデレラの首を跳ね飛ばしました!
危機一髪、ピンチを救われた女神は目の前の王子様に一瞬で心を奪われました。
「危ないところをありがとうございました」
「いえ、魔物がまさかここまで入り込んでいるとは・・・所でここに女性が落ちた筈なのですが・・・」
いつの間にか女神が出していた金と銀のデレラは姿を消しており、そこには王子様と女神しか居ません。
「いっいえ、私は何も知らないですね・・・」
まさか自分を襲ったのがその本人だとは言う事も出来ず女神は誤魔化します。
王子様は悲しそうに池から上がり階段を見上げるとそこにガラスの靴が片方落ちていました。
「これは、彼女の物に違いない!」
翌日から国中の女性にガラスの靴が合うかどうか確かめる為に王子様は各家を巡ります。
そして、デレラの家に到着して驚愕します。
そこには全身が金と銀の全く同じ顔の姉妹が居たのです。
驚きながらも王子様は横で震える姉二人と共に靴を履かせてみました。
すると驚く事に金と銀の姉妹に靴が合ったのです!
「遂に見つけた!君達こそ我が妻に相応しい」
王子様は決めていた名台詞を告げて二人を妻に迎えます。
ですが彼女達二人は食事もせずに言葉も発せず、硬い肌で触る事すら難儀する王子様。
そんな王子様の元へある日、あの女神が再び姿を現しました。
「あの時はありがとうございました。お礼に二人を普通の人間にして差し上げたいと思いますので隣の部屋を借ります。決して覗かないで下さいね」
そう言って女神は王子の隣の部屋に金デレラと銀デレラを連れ込みます。
その部屋の前で王子は意味が分からないまま立ち尽くしていると・・・
「あ、もしもし?俺、俺だけど!いや~困ったよ事故っちゃってさぁ~慰謝料請求されてるんだけどその場でお金渡して解決しちゃったよ~」
中から聞こえた意味不明な事場に王子様は自然と伸びた手を止められなかった。
そして、ドアを開けるとそこには・・・
向こうの壁を向いて携帯電話らしきものを片手に通話しながらバリバリと女神の口の中へ食べられていく銀デレラの姿が・・・
既に金デレラはこの場に居らず女神の口の中へ入ったのだと王子は理解した。
そして、電話を切った女神はその携帯の中央のボタンを押す。
「ピピルマピピルマプリリンパ、パパレホパパレホドリミンパ、アダルトタッチでデレラになれ」
すると女神の姿は光りに包まれてあの日のデレラの姿に変わりました。
驚きつつも王子様は扉をソッと閉めて部屋の前で考え込みます。
「いや、彼女も肉食系女子なのだ・・・だったら・・・もう彼女で良いか」
そう考えた王子様の前の扉が開き、あの日のドレスを着たデレラが立っていました。
「王子様、女神様のお力を借りて再びこの場に参上いたしました。どうぞ私を妃にして下さい」
「あぁ、僕も君を探していたのだよ」
こうして王子様はデレラ(仮)を妃として末永く幸せに暮らしたのでした・・・
「違う!あいつは私たちの妹じゃない!」
「そうよ!妹は私達が既に・・・」
王子様の結婚式の発表を聞いてデレラの二人の姉は叫びます。
「「あいつは既に死んデレラー!!!」」
めでたしめでたし