家を造ろう
作ったばかりのオブジェクトをいじる。まずは、名前の属性をhouseに変えてみる。正しい名付けは間違いのない作業の基本だ。
位置の属性は今の状態で再度「惑星表面位置」に戻す。角度の属性を0にして傾きを消す。すると地面のデコボコの一番高い位置に合わせてオブジェクトが浮かび上がった。どうやら、土を押しのけるようなことはしないらしい。海抜の属性が微妙に変わった。ちなみにここは海抜50メートルほどの内陸部らしい。丘の上だから、下ればもうちょっと低くなるだろうが。
ひとまず部屋を想定しているので、高さは3メートル、一辺は10メートルの正方形にしてみた。壁の一面の物理干渉をFALSEにして中に入る。入ってから再びTRUEにすると完全な密室になった。コンソールとリファレンスの発光だけが光源だ。上面のプロパティを確認すると、透明半透明にできたり、外側面と内側面で属性を個別に設定できたりするようだ。また、カメラ属性を持たせることができるようで、入ってきた光をそのまま反射させて鏡面にしたり、上面の外側から入ってきた光を下面の外側から発するようにすると、完全な光学迷彩にできることがわかった。一方で内部にもそのまま光を通すようにできるので、俺は光学迷彩の部屋にいることになった。
ふと息苦しくなった。houseの中身のプロパティを調べると、酸素の比率が減少しつつあった。完全に密室なのを忘れていた。一旦屋根を消して空気を交換しつつ対策を考える。
イベントでなんとかなると気づいた。タイマーイベントがあって、ミリ秒単位で同じ動作を繰り返せる。あまり行儀はよくないが、オブジェクトのタイマーイベントの中に直接コードを書き込んだ。一分毎にオブジェクトの中身の気体部分について温度と酸素濃度を調節するようにしてみた。
実際には壁面にフィルターの属性が存在し、液体や気体や元素を指定して通したり通さなかったりができるようだが、断熱を考えると直接中身をいじった方が後々楽と判断したのだ。
ふと思い立って、海抜の属性を高く変更する。一瞬の内に自分がhouse毎海抜100メートルの空にいることに気づく。足の下は完全なる虚空だ。驚いて0に戻す。0にはならず、さっきのデコボコも含めた最大海抜に変化した。
だが、これでわかったことがある。このhouse、マジックミラーでできた未確認飛行物体になれるだろう。プロパティをさらにいじると、慣性の属性がFALSEになっていたことに気づく。上昇した時、自分が下面に押し潰されて死ななかったのはこれのお陰らしい。しかしこれをTRUEにすることはほとんどないだろうな。
覚悟を決めてもう一度houseを高くする。今度はもっと高く。周囲を見渡すと、川とかをみつけた。衣食住のうち、衣は着たきり雀だがなんとかなる。住もそれなりになんとかなった。後は食だが、その前段階として水の確保だ。コンソールで属性を眺めるうちに、なんとかなると感じた。