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大団円! スペースキャプテン・プリムラちゃん

 惑星ロンの壁宇宙港は、混乱の坩堝と化していた。


「お、お姉様、無茶苦茶にして下さい。」

「あらあら、可愛いわ。舞姫ちゃん。」


 再会するなり、何故か妖しく絡み合う、お姉様と舞姫。


「ままぁ。おだんご。おだんごままだ。まま。ままぁ。」


 お団子状態で、組んず解れつしている二人に、しがみ付いていく、幼女型宇宙人。


「わたし、こっち。こっちの まま。」

「わたしも、わたしも。ままぁ。」


 一方、スバル隊員にも群がる、物好きな幼女の一団が……。


「いやぁぁぁ。ダメですぅ。私の身体は、プリ様のものなんですぅ。あああん、許してぇ。」


 台詞だけ聞いていると、なんか勘違いしそうなスバル隊員の悲鳴が響き渡る。


「あそぼ。あそぼ。いっしょに あそぼ。」


 更にプリムラちゃんにすら、お友達と遊びたい、活発幼女達が押し寄せていた。


「おほほほ。どう、きゃぷてん ぷりむら。ても、あしも、でないでしょう。」


 勝ち誇るオクの声を聞きながら、プリムラちゃんは、黙ってビームガンのセーフティを外すと、無言のまま、自分の周りに居た幼女達を焼き払った。


「うっぎぃぃぃやぁぁぁああ!!」


 夢に見そうな、いやーな断末魔の声を上げて、消えていく幼女型宇宙人達。


「おおお、おまえは おに かぁ。」

「どうせ、しなないの。」


 そうかもしれないけど、幼女の姿をした者を、そんなに簡単に焼き払えるものなのか……。

 オクは、もしかして地球人なめてたかも、と冷や汗を流していた。


「ふっ、しかし、おまえの なかまに むらがる ようじょたちは けせまい。」


 確かに、撃てばスバル隊員達も、無事ではすまないだろう。


「プ、プリ様ぁ。大丈夫です。私、幼女の小ちゃな御手手なんかに負けない。ああん、だめぇ。」

「すばるたいいん。きが ちるから、えっちな こえを ださないで。」


 エ、エッチな声なんか出してないもん。

 スバル隊員は、床に寝転がって、自分に乗っかって来る幼女達を見ながら、プリムラちゃんに嫌われてしまうのでは、と危惧していた。


「あっ、分かっちゃった。プリ様、ヤキモチ妬いているんですね。もう、プリ様ったら。」

「やきもちなんか、やいてないの。」


 スバル隊員に言い返しながら、プリムラちゃんは、腕の小型発信器に話しかけた。


「なつ、いまなの。おかあさんを とうか(投下)するの。」


 その時、ピッピサンダル号が、宇宙港に現れた。


 賢明なる読者諸君は覚えているであろう。宇宙港の施設が無事と聞いたプリムラちゃんが「えっち てぃ てぃ ぴぃ すらすら……」と、超光速タキオンネットワークのアドレスを打ち込んでいた事を。


 そうだっけ? とか言う、おバカさん……いや、その、物忘れの激しい方は、前回の話を読み直して下さい。


 ともあれ、ピッピサンダル号は、機体下部に吊り下げていたコンテナを、宇宙港に投下した。その中から、何百人ものお母さん型愛して愛され人形が、列をなして降りて来た。


「ふん。おろかな ぷりむらちゃん。あいしてあいされにんぎょうは しょせん きかい。われわれの もとめる 『ままの ぬくもり』を もってないのよ。」


 しかし、嘲笑うオクをよそに、他の幼女型宇宙人達は、外で呼んでいる「お母さん型愛して愛され人形」に反応し出した。


「ままだ。」

「あっちが いい。」

「あっちが ほんとうの ままだ。」


 幼女達は、もう、スバル隊員や、絡み合うお姉様と舞姫には、見向きもせず、管制塔の窓ガラスをぶち破って、次々と「お母さん型愛して愛され人形」へと、向かって行った。


 瞬間、激しく空気が流出するも、すぐにシャッターが降りた。


「な、なぜだ。おまえたち。」


 何故だと言いつつ、自身も「お母さん型愛して愛され人形」に抱き付きに行きたい、抗し難い欲求に駆られていた。


「ままの ぬくもり というのも、でんじは(電磁波)の いっしゅなの。あいして あいされ にんぎょうの しかくふぃるたー(視覚フィルター)を とおして みる(見る)と、より みりょくてき(魅力的)に かんじる でんじは(電磁波)を あの おかあさんにんぎょう(お母さん人形)は だして いるの。」


『分かったような、分からないような解説だわ。』と、オクは思った。


『ママの温もりを、電磁波の一種と、言い切っちゃって良いのかしら。でも、そんな、システマチックな考え方をする、プリ様素敵。最高にクール。大好き、プリ様。大好き。大好き。大好きー。』と、スバル隊員は思うだけでなく、プリムラちゃんに抱き付いていた。


『ああん、お姉様。いじめて、もっと、いじめて。』『まあ、欲しがりね。舞姫ちゃんったら。久しぶりだから、じっくり可愛がってあげるわ。』と、絡み合う二人は思っていた。


 ところで、管制塔の下、宇宙港では、凄惨な光景が広がっていた。百二十メートルはある高さから飛び降りた、幼女型宇宙人の足は、そのことごとくが潰れ、それでもママの温もりを求めて、お母さん型愛して愛され人形に、這って近付いていた。


「マ……マァァ……。」


 やっと、お母さん型愛して愛され人形に辿り着き、安堵の笑みを漏らす、一人の幼女型宇宙人。しかし、次の瞬間、お母さん型愛して愛され人形は、強烈な光を放って爆発した。

 同じ様に、次々と爆発していく、お母さん型愛して愛され人形。


「おまえたちを だいたら、ばくはつする しくみに なっているの。なづけて『おかあさんばくだん(お母さん爆弾)』なの。」

「お、おまえは、それでも にんげん かあー。」


 非人道的作戦を、淡々と説明するプリムラちゃんに、オクは叫んだ。


「うちゅうの へいわを みだす てき()には、ようしゃは しないの!」


 か、カッコいい……。スバル隊員は、あまりに凛々しいプリムラちゃんのお姿に、感動の涙ウルウルであった。


「ああーん。プリ様ぁぁぁ。好き。好き。」

「いきなり、だきつくな なのー!」


 二人が揉み合っている隙を突いて、オクは管制室から出て行った。


「おいかけるのー。」


 スバル隊員を引き摺りながら、駆け出すプリムラちゃん。

 オクは、管制塔の階段を駆け下り、仲間達が全滅した、宇宙港の真ん中に立った。


「さいごの しゅだんだ。きゃぷてん ぷりむら。」


 オクがそう言うと、彼女のボディに、身体を失ったオーバーマインド達が、続々と入っていった。そして、一人入る度に、徐々に身体が大きくなっていき、最終的には、身長五十七メートルに達していた。


「し、質量保存の法則が〜。」

「おーばーまいんど とか いっている じてんで、そんなの かんけい ないの。」


 プリムラちゃんと、スバル隊員は、背中のロケット装置で空を飛び、滞空していたピッピサンダル号のコックピットに収まった。


「けっせん なの!」

「いくぞ、きゃぷてん ぷりむら!」


 プリムラちゃんと、巨大幼女の気迫が、ぶつかり合って、火花が散った。


 ブンッ、と腕を振り回す巨大幼女。その腕の間を、縫う様に飛ぶピッピサンダル号。


 ブンッ、と腕を振り回す巨大幼女。その腕の間を、縫う様に飛ぶピッピサンダル号。


 ブンッ、と腕を振り回す巨大幼女。その腕の間を、縫う様に飛ぶピッピサンダル号……。


「なんか、最初の怪獣と比べて、芸が無いですね……。」


 所詮は、愛玩用の愛して愛され人形である。大きくなったからといって、別段、攻撃能力が上がるわけではない。


「幼女が、駄々をこねて、腕を振り回しているようにしか、見えませんね。」

「ようし、じゅうりょくぶらすたー なの。」


 ああっ。全く攻撃能力が無い幼女に、最大級の火器をぶっ放すプリ様。情け容赦無さ過ぎです。でも、そこが素敵。大、大、大好きー、プリ様。もう、スバル、失神しちゃいますぅぅぅ。


 感極まったスバル隊員に、熱烈な抱擁をされながらも、重力ブラスターの引き金を引くプリムラちゃん。狙い過たず、巨大幼女は、ドテッ腹に風穴を開けられ、やがて爆発四散した。


『我々の負けだ、プリムラちゃん。君の冷徹な攻撃には、実に心胆寒からしめられた。心まで冷え切ってしまったので、我々は、この天の河銀河から、出て行く事にする……。』


 プリムラちゃんと、スバル隊員の心に、オーバーマインド達の念波が届いた。


「プリ様の、プリ様の冷徹さが、銀河を救ったのですね。」

「なんか、あんまり、うれしく ないの。」


 そう言っている間にも、ピッピサンダル号のキャノピー越しに、オーバーマインド達が、光となって浮遊するのが見えた。


「アンドロメダ銀河に帰るんですか?」

『いや……。次は、マゼラン星雲にでも行ってみる』


 スバル隊員の問いに、答えるオーバーマインド達。


「それって、今度は、マゼラン星雲の人達が迷惑するだけじゃ……。」

「しぃぃぃ。だまって いるの、すばるたいいん。とりあえず、でてって くれるなら よしと するの。」


 とにかく厄介払いをしてしまえ、というプリムラちゃんとスバル隊員に見送られ、オーバーマインド達は、美しい光の翼を広げて、大マゼラン星雲の方向に、飛び去って行ってしまった。


「おわったの……。」


 苦しい戦いは終わった。こうして、キャプテン・プリムラの活躍で、銀河に平和が戻ったのだ。




 その後、ひとまず管制塔に戻ったら、そこには睦み合っている、お姉様と舞姫が居た。


「うふふふ。さっきの舞姫ちゃん、可愛かったわぁ。」

「いやん、いやん。お姉様のエッチ。」


 こいつら、幼女型宇宙人の事、忘れているんじゃないの? プリムラちゃんと、スバル隊員は、二人をジトッと眺めた。


「あの……。事件解決しましたけど……。」


 スバル隊員が声をかけると、二人はやっとプリムラちゃん達の存在に気付いて、慌てて居住まいを正した。


「あああ、そ、そう? よ、良かったわ。これで、また、愛して愛され人形の生産ラインを動かせるわ。」


 必死に言い繕う、お姉様。


「よく ないのだー。」


 その時、スバル隊員の宇宙服のポケットの中で、誰かが叫んだ。


「あ、あれ。ジョミーちゃん?!」

「おいて いかれた のだー。」


 ああ、そういえば、こいつ居たなあ。

 プリムラちゃん達は、漸く、思い出していた。


「まあまあ、スバルが生きたお人形として、可愛がってあげますよ。」

「おにんぎょう あつかい するなー。」


 喚くジョミーちゃんを宥めつつ、皆は、ピッピサンダル号に搭乗した。


「さあ、すてーしょんに もどるの。」

「また、平和で、緩やかな倦怠に包まれた日々が始まりますね。」

「それで いいの。なつと ちぇすを して、よふかし して……。そんな にちじょうが いちばん なの。」


 微笑むプリムラちゃんに、抱き付くスバル隊員。ありがとう、キャプテン・プリムラ。君こそ宇宙時代の救世主だ。


 ピッピサンダル号は、エーテルスキップに入り、その姿は超空間へと消えていった。









長々と引っ張ってしまいました「幼女スペースキャプテン プリムラちゃん」今回で終了です。

もうちょっとプリムラちゃんとスバル隊員の絡みが読みたい、という人は、私のプリムラちゃん短編シリーズや、連載中の「最強幼女プリムラちゃん」をお読み下さい。

話は違っても、やっている事は、大体同じです。

では、最後まで付き合って下さった皆さん、ブックマークを付けて下さった方、ありがとうございました。

皆さんの心に、プリムラちゃんが生きていてくれれば、幸いです。

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