地下工場に潜入せよ! スペースキャプテン・プリムラちゃん
幸いにも、地下へ続くエレベーターは生きていた。
「プリ様ぁ、地下は工場か何かなんですか?」
「この ほしは ぜんうちゅうに しゅっか しているの。その……あれを……。」
プリムラちゃんは、説明が難しいのか、ちょっと言葉を濁した。
二人が話している間にも、エレベーターは最下層の階に到着していた。そして、ドアがあいた時、スバル隊員が見たものは……。
「ににに、人間ですぅ。人間を作っているんですぅ。」
沢山の裸の男女が、レールの下に吊り下げられ、モノレールの様に工場内を移動しており、此処での工程を終えたものは、別の部屋へと、そのまま運ばれていた。
「怖い、怖い、怖い〜! 人間製造人身売買惑星ですぅぅぅ。」
「だ、だいじょぶなの。あれは、にんげん じゃないの。」
ショックで泣き喚いていたスバル隊員は、プリムラちゃんの言葉を聞いて、ヒックと一つ、しゃっくり上げた。
「じゃ、じゃあ。あれは何なんですかぁ?」
「うちゅうは ひろいの。ひろくて こどくなの……。」
植民惑星を見付けるには、少人数の探査隊が、互いに冬眠をしながら、宇宙を旅するのが常だ。どんなに鍛えられた屈強の探査隊員でも、孤独という強敵には勝てないのだ。
「えっ? すると、もしかして、あれは、そのぅ、探査隊の人が、なんというか、そのぅ、エッチな……、キャッ、じゃなくてぇ、いかがわしい……、行為を……、イヤンイヤン、そのぅ、つまりぃ……。」
「だいじょぶなの。すばるたいいんの かんがえて いるような ものじゃ ないの。」
惑星ロンの壁産、通称「愛して愛され人形」は、長い宇宙航海の孤独を癒すため、話し掛けたり、一緒に食事をしたりする為、長距離探査船に積まれる、必須の備品なのだ。
『…………。そんな筈ないですぅ。プリ様はお小さいから、知らされていないだけですぅ。絶対、エッチな事してますぅ。男は皆んなケダモノなんですぅ。』
男性の名誉を著しく傷付ける推測を、スバル隊員がしていると、その考えを読み取ったかの様に、プリムラちゃんが口を開いた。
「あれには そういうきのうは ついてないの。そんな そうぞうを する、すばるたいいんが えっちな だけなの。」
わ、私がエッチ? エッチな女の子なんて、プリ様に嫌われてしまう。
スバル隊員は、泣きながら、プリムラちゃんに抱き付いた。
「えええーん。プリ様、嫌わないでぇ。スバルはエッチな子じゃありませ〜ん。」
「いいの、いいの。えっちな すばるたいいん でも、きらったり しないの。」
「だからぁ。エッチじゃないんですぅぅぅ。」
スバル隊員は、悲嘆に暮れながらも、プリムラちゃんの抱き心地を堪能していた。
その時、突然、プリムラちゃんは、スバル隊員を突き飛ばして、ビームガンを構えた。
「プ、プリ様ぁ。やっぱり、スバルの事が嫌いに……。」
「ちがうの。あの ものかげで、なにか うごいたの。」
そう言いつつ、プリムラちゃんは、何の躊躇いも無く、引き金を引いた。
「プリ様……。一応、警告とか、投降を呼びかけるとか……。」
「きりやまさんも いってたの。しょうたいふめいの ものは、とりあえず、うってみろって。」
キリヤマさんって、誰かしら? と、スバルが疑問に思っていると、物陰から誰かが出て来た。
「た、食べないで下さーい。……じゃなくて、撃たないで下さい。私は人間です。」
「プリ様、生き残りの人みたいですよ。」
プリムラちゃんは、うむ、と頷いて、ビームガンをホルスターに収めた。
「キャプテン・プリムラですね。来てくれると信じてました。」
「のこりの ひとたちの ところに あんない するの。」
「そ、それが……。」
彼女の名前は、舞姫。舞姫の語るところによると、もう、生き残りは彼女と、彼女の「お姉様」しか居ないらしいのだ。
「攻めて来た宇宙人は、男の人が嫌いみたいで、片っ端から殺されてしまったのです。」
舞姫の話を聞きながら『あっ、本当に宇宙人が攻めて来たのか……。』と、スバル隊員は暢気に考えていた。
「ほかの おんなのひとは……?」
「この星に女性は、元々、私と『お姉様』だけなのです。」
どうして「お姉様」って、鉤括弧付きなのかしら? 不思議ですぅ。
スバル隊員が、そんな疑問を頭に抱いていると、目の端に、小さい可愛い姿の動く物が映った。
「舞姫さん、他にも生き残りが居るじゃありませんか。」
スバル隊員は、目を輝かせて、舞姫に続いて、物陰から出て来た幼女に、近寄ろうとした。
「いけません! それが宇宙人なのです!!」
舞姫が叫ぶと同時に、キャプテン・プリムラは、クイックドローでビームガンを撃った。ビームは狙い過たず、幼女の頭部を吹き飛ばした。
「ひいいい! 殺人ですぅ!! グロいですぅ!!!」
「よおく みるの。すばるたいいん。」
頭部が失くなった筈なのに、幼女の身体は、まだ、動いていた。その手には、宇宙金属で作られたナイフが握られていた。
宇宙金属って何? と聞かれても、宇宙の金属としか、答えようがありません。
「頭を撃っても死にません。身体を完全に消滅させなければ……。」
「わかったの。びーむ さいだいしゅつりょく なの。」
眩いばかりの光が放たれ、宇宙人は「うぅぅぎぃゃあああ。」という嫌な断末魔の声を発して、消滅した。
「こここ、怖過ぎですぅ。舞姫さん、あれは何なんですか?」
「あれの正体は……。」
舞姫は黙って、現在もオートメーションで製造され続けている「愛して愛され人形」を指差した。
「宇宙人の正体は、アンドロメダ大星雲からやって来たオーバーマインドが、幼女型『愛して愛され人形』に取り憑いたものなのです。」
その場を、静寂が支配した。話の規模が大きいのか、小さいのか理解出来ず、突っ込みようがなかったのである。
「ええっーと……。幼女型なんですか?」
「幼女型なんです。」
「幼女型だけなんですか?」
「幼女型だけなんです……。」
スバル隊員と舞姫の遣り取りの後、また暫く、沈黙が空気を重たくした。
「どうして、あんどろめだ から きたって わかったの?」
「自分達で宣言したんです。『(喉を叩きつつ)我々は宇宙人だ。アンドロメダ大星雲からやって来た。この星の、幼女型の人形を、我々の身体にする。』と。」
昭和の子供みたいな事をするなあ。と、宇宙人の真似をする舞姫を、プリムラちゃんとスバル隊員は、生温かく見守っていた。
「私と『お姉様』は、捕まって陵辱されていたのですが『お姉様』が、私だけ逃がして下さったのです。」
「えっ? 陵辱されていたんですか? 宇宙人は幼女型なんですよね?」
「そうです。幼女型宇宙人に陵辱されていたんです。」
「幼女型宇宙人にですか?」
「幼女型宇宙人にです。」
舞姫は、そこで、プリムラちゃんに抱き付いた。
「お願いです、キャプテン・プリムラ。『お姉様』を救って上げて下さい。」
「わかったの。まかせるの。」
プリムラちゃんは、ドンと、胸を叩いた。
スバル隊員は「ダメです。ダメですぅ。プリ様に抱き付いて良いのは、スバルだけなんですぅ。」と言いながら、舞姫をプリムラちゃんから引き離そうと、躍起になっていた。
行け、プリムラちゃん。「お姉様」を救うのだ!
その頃、プリムラちゃん達がいる「愛して愛され人形」製造プラントドームから、西方十キロの地点にある、惑星ロンの壁宇宙港では「お姉様」が陵辱されていた。
「うぎゃあああ。鬱陶しいわ。何で、貴女達、代わる代わる私に貼り付いて来るの?」
可哀想な「お姉様」。
「お姉様」は、ハリーハウゼンのシンドバッド映画に出て来るヒロインの様な、あられもない服装で、ベッドに大の字に括り付けられていた。そして、手、足、胴体と、身体中のあらゆる所に幼女型宇宙人がくっ付いて、頰を擦り擦りしているのだ。
……。まあ、見ようによっては、陵辱されている様に、見えなくもない。
「ふふふ。われわれは、ままの ぬくもりに うえているのよ。」
「お姉様」のベッドの隣に、椅子を置いて座っていた、宇宙人の首領オクは、手を伸ばし「お姉様」の顎を掴んだ。
「どう? あいがんよう として、つくっていた にんぎょうに、ぎゃくに あいがん される きぶんは。」
別に何とも思っていなかったけど、そう言われると、確かになんか屈辱的だわ。
「お姉様」の表情が、悔しさに曇った。
「あっ、それ。その ちじょくに まみれた ひょうじょう たまらない。いただき。」
オクは、慌てて「お姉様」の顔を、スマホで激写した。
「変態ね……。」
思わず、心の底から、本音を言ってしまう「お姉様」。
「おっーほほほほほ。なんとでも いうが いいわ。あなたは もはや このほしの そうとく ではない。われわれの がんろうぶつ なのよ。」
オクが高笑いをしていると、斥候の幼女型宇宙人が戻って来た。
「きゃぷてん・ぷりむらが こちらに むかってます。」
「ふふふ。きたか、ぷりむらちゃん。わなとも しらずに……。」
罠? どういう事?
「お姉様」の顔色が変わった。
「まいきちゃんは わざと にがしたの。じゃまな ぷりむらちゃんを おびきよせる ために。」
「ひ、卑怯者!」
「あっははは。なんとでも いうがいい。あてに していた きゅうじょは ないわよ。おまえは いっしょう、われわれに ままの ぬくもりを あたえつづける、にくかいろ として いきるの。くやしい? ねえ、くやしい?」
「お姉様」は「くっ、殺せ。」とばかりに顔を歪めた。その表情を、再びスマホで写すオク。
屈辱や無念、悲哀の感情さえ、快楽として宇宙人に搾取される「お姉様」。正に、少女無間地獄。あっ、ちなみに「お姉様」は十二歳、舞姫ちゃんは九歳です。
「ままぁ〜。」「まま、どこ?」「ままに あまえたいよぉ。」
「お姉様」の監禁されている部屋の前には「お姉様」からママの温もりを貰おうと、幼女型宇宙人達が、長蛇の列をなしていた。こんなに沢山の幼女から甘えられたら「お姉様」は壊れてしまう!
その「お姉様」を救う為、宇宙港に急ぐプリムラちゃん一行。だが、そこには死の罠が。
危うし、キャプテン・プリムラ。どうなる? キャプテン・プリムラ。
続く!
あっ〜。また、終わらなかった……。
当初、三話完結の予定だったのですが……、終わりませんでした。
次回で終わるかと言えば、微妙……という感じです。
更新ペースが一ヶ月に一回。
仕事が忙しくなると、それもどうかな? というペースなので、もしかしたら、今年いっぱいかかってしまうかも……。
軽い気持ちで始めた連載なのに、どうして、こんな事に。
読んで下っている方には、申し訳ないのですが、続きは気長〜に、お待ち下さい。