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第六章 二人で走る一時間 東と曉

 両眼を潰したくなる衝動が常に、東佳奈を纏わりついていた。

 いつもだ。

 彼女の目は彼女の目ではなかった。

 福岡県立宝満高等学校――その校門の前に立つ。明日からこの高校に通うのか。不安しかなかった。当然だ。十五歳の小娘が東京から離れて、一人で暮らすのだから。

 でも東京にはいられなかった。居たくなかった。

 家族の近くに居るのが辛かった。だから福岡へ来た。出来るだけ東京から離れたかったからだ。北海道や東北に行こうか、とも思った。しかし秋田県や北海道に親戚が居たため、南にしようと決めた。福岡ならば親戚も居ない。

 一人になりたかった。

 東の家という呪縛から逃れたかった。

「平凡だ、お前に魔法の才能はない――」

 父の言葉が今でも脳裏に残っている。

「ちがう、わたしは……そんな事ない」

 そんな事ない。父の居ぬこの福岡の地で、東佳奈は呟く。

「大丈夫、大丈夫よ。いいじゃない、才能が無くても幸せにはなれるわ」

 姉の幻聴が、東の耳には残っている。

 大丈夫? 

 何が大丈夫なのだろうか。優しく囁いた姉に、佳奈は劣等感しか感じていなかった。

「頑張れよ、やればできるさ」

 兄は言う。だが兄もまた、佳奈にとってはコンプレックスの対象でしかなかった。

「あなたは私の娘よ、何の心配もいらないわ」

 母はそう言ったんだっけ。家族の言葉が佳奈の中でフラッシュバックする。

 そういったものから決別するために、東京を出てきたのだ。知り合いも居ぬ、南へと下ったのだ。



 東佳奈の最大の武器は、目だった。

 その双眸は特別性で、常人の目とは違っている。例えば父、東道貞を凌ぐ能力を有する。魔力の流れを視覚化し捉える力を持っている。それ故魔力の分析に置いて、彼女は家族の誰よりも卓越していた。

 だがそれは彼女自身の才能ではなかった。

 作られた才能だった。

 幼いころ――彼女は兄や父に憧れていた。自分も魔闘士になるのだ、と頑なに信じていた。父や兄もそれを歓迎していた。だが、自分には魔法の才能がなかった。自分には能力が足りなかった。自分は平凡な人間だったのだ。

「違う、わたしも……」

 わたしも……

 だが続く言葉が継げない。

父親はもはや佳奈には目もくれない。

 違うのだ自分も、魔闘士として活躍したいのだ。

「大丈夫、他の道もある」

 兄が言った。優しい兄だ。強くて優しい兄で、自分の目標でもある。

(だから、そんな事言わないで。わたしは、あなたと同じで、闘いの中に身を置くのだ。置きたいのだ)

 だが、兄は笑顔で微笑む。その微笑みはとっくに見限った微笑みだった。

 五つ年上の兄は、インターハイで全国制覇を果たした。そんな姿に憧れて、己も中学生になれば魔闘部に入り、華やかに戦ってみたかった。

 だが……東佳奈は折れてしまった。己の無才さに、折れた。彼女の魔法には力がなかった。豪快さがなかった。あるのは繊細さだけだ。それが才能と言えば才能だが、力と力でぶつかる魔闘においては無意味な才能だった。それに佳奈の繊細さは、彼女の目によるものだった。

 そしてその目は、自分の目ではなかった。

 両手を前に差し出す。親指を立てる。魔力を親指の先に込める。

 それをそのまま、両の眼に近づける。

「――貫け」

 そのまま佳奈は自分の眼を潰すのだった。



 目が覚めた。

 夢だったのだ。目を確認する。ちゃんとそこにあった。

 佳奈は深い溜息を吐いた。

 顔を洗い、朝ごはんを食べる。

 時間を確認するとまだ余裕があった。入学式開始は確か、十時。高校へは九時頃に行けばいいだろう。

 制服に着替えた。野暮ったいスカートだな、と佳奈は思った。スクールバックを確認する。

 自分の部屋を出る。

 まだこちらへ来て一週間しか経っていない。知らない場所というのもあり、気候や食べ物なども違うため、戸惑いも多い。

 だが、その点でストレスに感じる事はなかった。あの、家族たちから離れればそれでいい。

 家族のことを考えるだけで大きな溜息が出る。

 既に家族から離れたというのに、家族の呪縛から離れられる気はしなかった。いっそ海外に留学すればよかったか。と、も思ったが、まあ無駄であろう。父は何らかの委員会を務めていて、ヨーロッパやアメリカによく行くからだ。逆に福岡等は、そうそう来るまい。昔ならば、大会などで何度か来たようだが、世界ランカーとなった今や、もう用はないだろう。

 アパートから高校まで近い。歩いて十分程度しかかからない。走れば数分だ。まあ、初日から走る必要もないかと、魔法も使わずゆっくり歩いて向かう。家族のことを考えている間に高校に着いた。

 最初は教室に行く手はずになっていた。入学案内書で教室の場所を確認し、一年三組へと行く。

「お早う」

 教室に入ると、教壇に男が立っていた。

 おそらく担任の先生だろう。長身で眼鏡を掛けた先生だ。

「お早うございます」

 佳奈も挨拶を返した。

「黒板に、座席表空いてあるからそこへ座れ」

 黒板には座席表が書かれていた。

 その時、異様さに気づいた。魔法だ。誰かが魔法を使っている。黒板に書かれている文字――いいや、その程度の魔力ではない。魔力を発する道具ではなく、人間が魔法を行使している。

 その正体を直ぐに見つける。

「どうした? 分からないか? 名前は?」

 呆然と立ち尽くしている佳奈に、先生が話しかける。

「あ、いいえ、大丈夫です」

 佳奈は自分の座席に座る。

 佳奈の前には男が座っている。長身の男だ。

(この男……)

 異様な光景だった。誰も気づいていない。

 男は全身から魔力を放出していた。

 何か魔法を行使しているのか?

 放出量は微弱だが、ずっと放出し続けている。体全身からだ。

 佳奈の目にははっきりとその、魔力の線が見える。

 それから五分間、その男はずっと魔力を放出し続けていた。その総量200MPか。200MPと言えば、結構な事が出来る魔力量だ。

「さて、みんな揃ったようだな。俺は、この一年三組担任の貝美智雄だ」

 先生が説明を始める。黒板には彼の名前が書かれていった。

 その間も、男は魔力を放出し続ける。黒板に書かれている名前を確認する。

曉翼――

 先生の自己紹介がずっと続く。その間も、ずっと、曉翼は魔力を放出し続けている。

 もはや、先生の話は佳奈の耳に入ってこない。

 曉の背中に釘付けだった。

 彼は相変わらず魔力を放出し続けている。

 やがて入学式が行われる。だが入学式中も、東佳奈はずっと曉が気になっていた。そしてずっと計算していた。

 結局、佳奈が観察し始めて二時間……計五千近くのMPを消費したことになる。

 五千と言えば、一般的な成人男性の平均最大MPだ。最大MPに匹敵するほどの量を、短時間でこの男は消費したのだ。

 何故そんな事をしているのか。その意味を考えてみるが、見当がつかない。たぶん、これは何か特殊な訓練方法なのだろう。魔力を放出し続け……最大MPを底上げする訓練か? あるいは、MP回復速度を高める訓練か。そのいずれかか。そんな訓練方法を聞いたことはないが、しかし、どっちにしろこの男は二時間で成人男性の最大MPと同等の魔力を使うほどの男なのだ。

 その後教室へ行き、時間割が配られたり、教科書が配られたりする。

 だが、その間もやはり、曉はずっと魔力を放出し続けていた。異様な男だ。

 昼解散となった。明日から早速授業が始まる。もう、用もないので、佳奈は早々帰ることにした。

 結局あの男は……曉翼は、佳奈の見立てでは、四時間で約一万の魔力を消費していた。

 常識で考えうる最大MPをはるかに凌駕している。

 ということは、一般的な人間ではないという事だ。おそらく彼は魔法分野で何らかのトップアスリートなのだろう。まさか……魔闘士だろうか。

 だが、魔闘士においては、然程最大MPの多寡を求められない。長期戦になることは滅多にないからだ。一試合一試合は短い。全国大会や世界大会レベルになると、一日、そう何試合も連続ですることもなくなる。ならば……魔法走か?

 もしも彼が魔法走の選手なら好都合だな、と思った。

 それは佳奈が魔法部に入り、そしてインターハイを目指すつもりでいるからだ。



 そうして東佳奈と曉翼は出会ったのだ。

 彼の潜在的な最大MPは計り知れない。人知を超えている。人間を越えている。佳奈はそう思っている。だが、彼は魔力制御疾患なだけだった。そのことは、佳奈にとって逆に好都合だった。自分と組んでこそ、彼の実力が発揮できる。彼と組めば、自分のインターハイで優勝できるのだ。

 そう、思っていた。

 確かに、曉と一緒に走れば、無限にも思える力強い魔力が流れ込んでくる。

 でも……それなのに。

 抜かれた。あっさり江崎部長、橘副部長コンビに抜かれてしまった。

 五月。部内レースが始まった。走者は九人。江崎部長、橘副部長、風見姉弟、高木に五木、宗像、自分、そして曉。この九人だ。レースの序盤、三年の江崎・橘ペアと勝負をすることになった。佳奈は絶対に負けない自信があった。距離にして十キロないほどだ。楽勝だと思った。だが、結果は負けだった。先輩たちは、山家道交差点でインターバルを取っていた。

「追いつきましたよ、先輩」

 佳奈は息を荒げながら言った。

「そうだな、東。だが私たちは十分インターバルを取った。君たちもそうするといい。私と橘は今から、風見姉弟を追うさ」

 江崎部長が言った。完璧に、負けていた。佳奈は愕然とするしかない。

「分かりました。わたしたちは、山家道交差点までのレースに負けました。でも、このレース自体は高校がゴールですよね。次は勝ちます」

 次は勝つ。勝たなければ。インターハイで優勝を取るのだ。そうしなければならない。そうしなければならない理由があった。その為には部内のレース如きで後れをとってはならないのだ。

「うん、俺達に勝てなければ、インターハイに出ても仕方ないからね。勝ちなよ」

 追い打ちをかけるように橘副部長が言った。

 その言葉に、佳奈は怒りにも似た感情を感じ、橘を睨み返した。

 江崎部長と橘副部長はその後すぐさまレースへと戻る。

「とりあえず水分補給しておきましょう……」

 自動販売機でスポーツドリンクを四本買い、二本を曉へと渡す。

「ありがとう」

 曉も汗がかなり出ている。当然だ。実質彼の魔力を酷使しているだけなのだから、彼の方が疲れている。

 一本分のドリンクを飲み終え、もう一本はポーチの中に入れる。その間も、佳奈はほとんど曉につきっきりだった。魔力層の穴を塞いでいるからだ。塞ぐこと自体は容易だった。流れ出る魔力は微弱だからだ。しかし、流れ出る百七か所の穴全てを塞がなければならないのとそれを常にしておかなければならないので、神経をすり減らす作業だ。常人には無理だろう。全ては佳奈の目の為せる技だ。

 ドリンクを飲み終えると、しばし冷静さを取り戻す。先輩たちはもう行ってしまったのだ。早くいかなければ。気持ちが逸った。負ける。しかも四人もの先輩に先行を許した。この体たらくではインターハイに出る事も難しいかもしれない。

「じゃあ行きましょうか、絶対勝たなきゃ」

「おう……あのさ、東、お前なんで泣いてるんだ?」

「え?」

 頬に手を触れる。確かに涙が流れていた。なんで自分は泣いているのだろうか。

 だが、今は考える時間が惜しい。

 すぐさま曉を抱きかかえ、走り出す。

「おい……」

「分からない。なんで泣いているかは分からない。けど、気にしてられない。勝たなきゃ。先輩たちに勝たなきゃ、行きましょう」

 魔力層の穴から流れ出る魔力をほとんど押しとどめながら、三か所だけは穴を開けたままにする。そこから、佳奈は魔力を享受していた。

走りながらふと、今日の部活前の出来事が気になった。

「ねえ、翼君、中学時代何があったの?」

「え?」

「高木さんと言い合っていたでしょう」

「……お前こそ、何があったんだよ。なんで東京から福岡に来たんだ……?」

 自分が質問したのに、逆に曉に質問を返されて言葉に窮した。

 話したくはなかった。父親の事、兄の事、家族の事、魔闘士のこと、そして目のこと。

 だから沈黙する。でもこの曉とは少なくともこの宝満高校に居る間は、タンクパートナーとしてやっていくのだ。信頼関係は大切だろう。何から話そうか。しばし躊躇する。しかし覚悟を決め、佳奈は口を開いた。

「魔闘部に入ってたんだ」

「魔闘士を目指してたの」

 だが言葉を発したのは、佳奈だけではなかった。二人はほぼ同じタイミングでそう切り出す。

 魔闘部……その単語に佳奈は少し驚く。

「……」

 二人はその先が継げない。黙ったまま走る。

道はかなり狭くなっている。

 片道一車線、歩道もほぼ無きに等しい。

「あ、の、翼君。ここからの道はずっと狭いの?」

「え? うん、そんな事ないけど、たぶん……もうしばらく行けば、太宰府方面へ曲がる交差点があるから、そこからは広くなるな」

「なら、道が広くなるまでしばらくは飛びましょうか」

 佳奈は一旦止まり、抱きかかえていた曉を降ろした。

「背中に乗ってください、飛ぶから」

「分かった」

 魔法を行使し、曉を背中に固定する。これでいくら速く飛んでも、曉は落ちない。

 浮遊し、狭い道上を飛んでいく。眼下にはずっと民家か、さもなけば畑か田圃が広がっている。商業施設は皆無と言ってよかった。時々コンビニがある程度だ。

 二人の間に会話はなかった。

「俺はさ……魔闘部に入っていたんだ。中学生の時。でも、俺は無才だった。学校中で俺が魔法が使えないことは、周知の事実だった。俺の綽名はいろいろあったな、無能者、無才者、いろいろな。いつか、魔法が使えるようになると信じていた。ずっと、ずっと俺は信じて勉強して、勉強して、勉強して……でも、だめだった。まあ病気だったから仕方ないけど。それで、……俺は部活を停止に追いやった」

「何があったの?」

「俺には友達が居て、そいつが、魔闘部に喧嘩を売った。そいつは俺を無能者と言うやつらが許せなかったらしい……それで、そいつは……学校を止める事になった。簡単に言えば苛めだ、喧嘩を売ったけど、大人数の前で、返り打ちにあった。それを知った俺が、今度は魔闘部のやつらをぼこぼこにして、それで部活動停止だ」

「……でも、魔法を使えない君が、ぼこぼこにできたんですか?」

「出来た。今となっては、分かるけど……俺にさほど魔法は効かなかった。たぶん俺の流れ出ている魔力が、魔法を阻んだんだろう。それに魔闘部の連中は、体力はからっきしない。だから、一発こぶしをお見舞いすればそれで御仕舞。魔法で防御すれば、なんてことはないだろうけど、持続型の防御魔法なんて、中学生には無理な魔法だ。俺はその事件以来、魔法を諦め魔闘部も辞めた」

 そんな過去があったのか。だから高木は、曉を警戒していたわけだ。また、部活動停止に追い込むんじゃないか、と。

「どうして魔闘部なの?」

 もう一つの疑問、それを佳奈は口にする。

「あんたの、父親に憧れたんだ。俺は東道貞のファンだった。ずっと。九州で行われた彼の試合は全部見に行った」

 東道貞――彼のファンだったのか。佳奈は動揺する。自分は家族の呪縛から逃れたと思っていた。この福岡の地で、インターハイ優勝を飾るために、最適なパートナー、自分の足りない部分を補ってくれるパートナーを見つけたと思っていた。なのに、その人は、佳奈の父親のファンだという。

 佳奈は自分の父親を呪う。

 頭が真っ白になる。

「羨ましいよ、俺は。東は才能が有るんだろう? 俺はずっと無才だったから。いや、税惡は言わない。感謝している。今飛んでいるのは、俺の力でもあるわけだ」

「そうよ……」

「ありがとう」

「……わたしも感謝はしている」

 そこからまた沈黙が続く。道幅はやがて徐々に広がっていった。

「あのさ、魔闘士を目指していたんだろう? 何で魔法走をしているんだ?」

 沈黙が破られ、暁が訊ねる。佳奈は逡巡する。

 まだ曉翼との付き合いは、一か月ほどだ。その程度の付き合いの人間に全てを話す気には毛頭なれなかった。

 ではどの程度の付き合いになれば全てを話せるというのだろうか……

 それは分からなかった。そもそも自分の秘密を、誰かに話そうなんて、そんな気にはならないだろう。この自分の秘密は永遠に、自分の中に、仕舞っておく。

 だが……彼は、曉翼はちゃんと東佳奈の質問に答えてくれた。

「わたしはね……インターハイで優勝しなければならないんです……、どうしても。前に言いましたわよね。東の家系は魔法に秀でているって。兄は高校時代、インターハイで優勝を果たした。三回ね。姉についても前に話しましたよね。ともかくだから、わたしも優秀な、成績を収める必要があった……」

「……何故だ?」

「でなければそれは東家に非ず……わたしたちは魔法の家系、魔法で優秀でなければ、意味がない。わたしは、ね。既に無能の烙印を押されているの」

「え?」

「君と同じよ、わたしは無能者。家族にとってね。父はわたしを見限った。ごめんなさいね、君は父を尊敬していたから……こんな話聞きたくないでしょうね」

「……いや、続けてくれ」

「そう……父はわたしを見限った。兄も姉も母も、たぶんわたしを見限った。兄や姉や母は優しいから……優しいから、……」

 その先の言葉が続かない。たぶん、自分は泣いているのだ。

「あ、……いや、いいよ、悪かった。無理して話さなくていい」

 曉から佳奈の顔は見えないはずである。声で泣いているのが分かったのだろうか。

「わたしは、……能力がないの。わたしもかつて、父や兄に憧れて、魔闘士になるのが夢だった。でも中学前には、父に見限られた。わたしの魔法には力強さがない、繊細さはあるけれど、それは結局人並み。人並みでは、だめ。東と言う血筋の結晶で凡才は許されなかった。だから中学前に、わたしは見限られた。父親に見限られ……君から見れば贅沢な悩みと思うかもしれないけれど」

「ああ、俺から見れば、贅沢な悩みだ……でも、分かるつもりだ。その苦しさ。あんたの場合は、東と言う家の中で苦しんだんだろう。俺は世界全ての中で、無能と言うレッテルを押されて苦しんだ。次元は違うが同種の悩みだ」

 宥めているつもりなのだろうか。

 その気遣いは有り難い。だが、それと同時に激しい不快感が襲う。

 同種などでは決してない。東佳奈の悩みなど、この男に分かるわけがない。

 道幅がだんだん広くなっていく。もう、地上を走っても問題なさそうだと、佳奈は判断した。

 無言で降り、再び曉を抱きかかえ走り出す。

「なあ、でも、あんたには自慢の目があるんだろう? 魔力の流れを読み取るという自慢の目があるんだろう。それは、才能に値しないのか?」

 曉翼が遂に核心に触れた。

「あ、あそこを左だ」

 道案内の標識が見える。念のため地図を頭の中に複写しているので、道は一応分かっているつもりだったが、曉との会話で、東は冷静さを失していた。左に曲がる。太宰府方面だ。しばらくは、登り道や、下り道など起伏の多いコースとなる。周りには民家さえその姿を消す。山に作られた道となり、畑や田んぼが広がっている。

更に曉から魔力を搾り取る。

東佳奈の目は、正確に曉の魔力層の穴を見抜き、魔力を奪い取っていく。彼女の双眸は、特別製で、己の目ではないのだから。

「生体魔法具ってご存知ですか?」

「生体魔法具? 要するに生物それ自体を使った魔法具や、体の一部を使った魔法具だろう?」

「そう、生体魔法具はそう言う類のもの。東家は、生体魔法具の生成をずっと行っている……わたしの両眼はわたしのものではないの」

「どういう、意味だ」

 曉は驚愕の表情で顔を見たし、佳奈を見つめる。

「わたしはね、小学二年生の頃、両眼を刳り貫かれて、代わりに義眼を詰められているの」

「なんだと……」

 息をのむ曉。曉の視線が佳奈に刺さるが、佳奈は見返さない。と言うより見られなかった。心臓がバクバクと高音を鳴らす。

「そんな、そんな事許されるはずがないだろう?」

「許されるんです。わたしの家では許されるんです。わたしの兄も姉も、わたしと同じように、生体魔法具を持っています。兄は、その両腕が、兄自身のものではありません。姉は……いつも鬘を被っています。姉は全て髪を抜き取り、もう二度と、永遠に姉の髪は生えてこず……、他人の鬘を被っています。そしてわたしは目です。わたしの目は父の父の父……つまり、私の曾爺様のものです。三代の時間をかけて作った……傑作です。本当のわたしの目は、今、生体魔法具の生成に使われているはずです、わたしの、……祖先がたぶん使う事になるんでしょうね……わたしのものではない、このわたしの目は、素晴らしい道具です。魔力の流れを読み取ります……憎たらしいほど、……憎たらしいほどです。わたしはしょっちゅうこの義眼を潰したくなります。刳り貫いて潰したく……東家の呪い、わたしはずっと知らなかった。手術した時の記憶はありません。目がすり替わっていたことにも気づかなかった……ある日突然魔力の流れが見えるようになった……わたしは自分の才能が開花した、と信じて疑わなかった」

 やはり曉の顔を見ることはできない。

 今彼はどんな表情をしているのだろうか。

「わたしは東家を呪っています。呪いたい……でも、わたしには才能がなかった。魔法の才能がなかった。それを証明する手段が必要だった。わたしは中学になり魔法走を選びました。魔法走ならば、この目を活かせるから、魔法走、アズハルのサポーターであればこの目を活かせるから。目なんか使いたくなかった。けれども父に認められるにはそれしかないと思った。自分も大会で優勝する、全国制覇する。そうしなければ、父に人間とさえ認めてもらえない。わたしは呪われたと思ったこの目に頼るしかなかった……兄も姉も優しいけれど、彼らはこの東家の呪いを何の疑問も持たず受け入れて、……そしてわたしも、結局目に頼って、いる。目に頼ってしまっている……もう今では何がしたいか分からなくなってしまった。だから逃げたの。南へ逃げた。九州なら、福岡なら親戚がいない。それに、父も来ない。だからここへ逃げた。そしてインターハイで全国制覇をする……今ではなぜそうしなければならないのか、思い出せない分からない、でもしなければならない。そう強迫観念のように、わたしを突き動かす……」

 そこで東佳奈は突然立ち止まり、曉を降ろした。

 彼の表情は見られなかった。東佳奈は泣いていた。

 車は通っていなかった。もともと交通量の多い道でもないようだ。

 静寂の中、曉と佳奈だけがそこに二人立っていた。

「わたしはね、君を見て運命だと思ったの。わたしは……君となら、インターハイ優勝できると思ったの。既に倒錯した想いなのに……、もうわたしの中でも訳が分からなくなっているのに。でもこの様……全国制覇どころか、先輩たちに勝てない。部内のレースごときで立ち止まる……でもインハイで優勝したからなんだっていうんでしょうね。ごめんね、翼君……気持ち悪いよね、こんな目の女……誘ったのはわたしだけれど……辞めたいならもう辞めてもいいですわ……、魔走部」

「勝手なこと言うんだな、随分」

「ええ、自覚はあります」

 もう顔を上げられなかった。東佳奈は俯く。

 曉翼はどんな表情で、自分を見ているのだろうか。ただ沈黙だけが流れた。

 何分、いや何秒そうしていただろう。時間の感覚が麻痺しているようだった。

「別に、難しい話じゃないんじゃないか、魔法走でインターハイ制覇して、その上で目を取りかえせばいい」

「……え?」

「目が返ってきてほしいんだろう?」

「そう、だけど……」

「そのためにインターハイ優勝は必要なのか、不要なのか?」

「分からない……」

「じゃあ、優勝はしたいのかしたくないのか?」

「……」

 自分の、いや、自分のものではないこの目に映った兄の姿を思い出す。兄の姿は、自分の脳裏にしっかりと焼き付いていた。この国の頂点に君臨したという誉れ。それを欲していないわけはなかった。自分の才能が誰かに認められる。特に……父親東道貞に認められる。そうなればどんなに幸福だろうか。

 だが、目の話はまた別件だ。

 生体魔法具を、佳奈は嫌悪している。

 東と言う血筋を嫌悪している。だから逃げ出してきた。でも父や兄に認めてもらいたいという気持ちは消えない。相反する感情の中に、佳奈は困惑し、葛藤する。

「インハイで勝ちたいのか?」

「分からない」

「何故魔法走をしているんだ、お前は」

 両肩をがっしり掴まれた。

 そこでようやく曉の表情が正面に見える。彼はじっと、佳奈を見つめている。その眼差しは鋭く彼女を射抜くようだ。だが非難めいた視線ではない。どこか優しさを含む視線だった。

「訊くけど、今、東は俺の魔力層の穴を塞ぎ続けているのか?」

「……そう、だけど」

「分かった」

 曉はそう言うと魔法の詠唱を始めた。

「――地を掛ける、その足を与えよ」

 脚部強化のごく初期の魔法詠唱だった。

 そして茫然としている佳奈を抱きかかえた。

「え、ちょっと……!」

 だが曉は有無を言わさず、走り出した。

「どうしたの……? 降ろしてよ……」

 だが曉はそれを無視する。

 景色がどんどん過ぎてゆく。

 彼の走りは正直言えば拙い。魔法も不安定だ。走り方も不恰好だ。

 遅い――当然だろう。彼は魔法をずっと使えていなかったのだ。知識があっても実戦経験が皆無に近い。四月から今日までの一か月、練習は全て調節に費やしてきた。東が如何に曉の魔力を引き出せるか。そういった練習だ。曉は魔法の練習をほぼしていない。

 だから曉の魔法が拙いのは当然なのだ。むしろ、ほとんど使ったことのないはずの魔法を、彼が使えていること自体賞賛に値すると言っていいだろう。

「ありがとう」

 曉翼は走りながら、佳奈に言う。

「何が……?」

「あんたは、嘘を付かなかった。俺は今、魔法を使っている。魔法を使って走っている。両足を強化する魔法だ。初めて使った。あんたから見れば拙い魔法に見えるだろう。でも、俺はその拙い魔法が今の今まで、ずっと使えなかった。十六年間ずっと使えなかった。今、こうやって使えている。この感動、あんたには分からないだろうけど、でも俺の感動は、感謝は、量り知れない……分かんないんだろうな、あんたは自分を無能者と言ったけど……俺は正真正銘の無能者だから。だから……知らないだ。自分の足で地面を蹴って走るって感触を。強化した足で地面を蹴る感触を。硬くて……足が疲れて、でも風は気持ちよくて……こんな感覚初めてだ。魔法を使えば世界が変わる。あんたらはそれが普通の世界だったかもし得ない。でも、俺にはそうじゃない。魔法を使えないというハンデ、その苦しみ……その苦しさから解放されたわけじゃないけど、……あんたは、一瞬だけでも夢を見させてくれる。だからありがとう」

 どうして曉は礼を言うのだろうか。佳奈によって強引に魔法走に入部させられ、魔法を使わせてあげる、という約束も結局今の今まで叶えていなかった。練習は全て佳奈の調節に費やした。そして今に至っては、「魔法走を辞めよう」と佳奈が言った。それなのに、どうして彼は礼を言うのだろう。

「分からない……どうして礼なんか言うの?」

「はあ? 俺の話聞いてなかったのか?」

「聞いてたけど……わたしの身勝手に、君は付き合わされたんだよ?」

「そうだよ、でもまだ終わりじゃないだろう? これで終わりじゃないだろう? 魔法は使えた、でもこんなの、全然ダメな拙い魔法だろう?」

「……」

「覚えているか、あんたは四月にこう言った。『わたしは君が憧れていた魔法の世界に招待します』。こんな魔法じゃ全然だめだろう? だから辞めない、あんたも辞めるな。あんたが辞めたら、俺はもう魔法を使えない。あんたが運命と言ったように、俺にとってもあんたが運命だったんだ」

 運命か……

 その言葉を聞いて、頭が明瞭になってくる。冷静さを取り戻す。途端に恥ずかしさが込み上げてきた。運命なんて恥ずかしい言葉を……かつて自分は言ったのか。それを今の今まで何も感じていなかった。普通に考えれば運命とかいう言葉は、恋人とか結婚とかそう言った相手に出会ったとき使う言葉じゃないか。顔が赤くなる。更に言えばこの状況。曉翼にお姫様抱っこされているという現実に、羞恥心が猶更湧き上がってくる。

「何だよ、顔を赤くして」

「いや……冷静に考えたら、お姫様抱っこってめちゃくちゃ恥ずかしいですね」

「はあ? お前がそれを言うのか? 俺はお前の百倍恥ずかしかったぞ」

「ごめんなさい……」

「いいよ。……それよりもう一度訊く。お前は何で走ってるんだ?」

「分からない」

「勝ちたくないのか?」

「それは……、勝ちたいです。でももう分かんなくなりました。わたしはこの目で勝っていいのか……それに、……そもそも、この部内のレースで、わたしは勝てない、勝てないんです。江崎先輩、橘先輩、風見姉弟……四人に抜かれました」

「よく分かった。あんたの気持ちは知らない。あんたは身勝手な奴だ。だから、今度は俺が振り回す番だ。俺と走ってくれ。このレースで、勝つんだ。まだ、二十キロも走ってないだろう。半分以下だ。挽回できるチャンスはあるはずだ、違うか? 俺は、こんなんじゃ足りない。華やかな魔法の世界を知りたい。本当は魔闘士になりたかったが、魔法走も悪くないと思い始めた。だから、俺と一緒に走ってくれないか?」

「わたしは……」

「拒否権はない」

「え?」

「命令だ」

「そんな……」

「走っている途中にうだうだ考えるな。走り終わって考えろ。今は、レースの途中だろう?」

「…………」

 冷静になった頭で考える。感情を整理する。

 負けたいとは思わない。

 インターハイも征したい。

 この目は憎い。

 東の家系からは離れたい。

 今すべきことは何か。

 東の家系からはもう離れた。

 目は……どうしようもない。だがいずれ取り返す。そしてそれは今ではない。

 インターハイは今ではない。三か月先の話だ。

 では、部内レースの勝負は? 

 勝負は今だ。

 負けたいとは思わない。なら話は簡単だ。勝つしかない。

 そう思ったとたん、走る曉翼の横顔がとても頼もしいものに思えた。チビな自分と違って、背が高く、頼りがいがある。でも……魔法は下手だ。

「そうね、分かった。勝つ、勝ちましょう」

「おう、勝つんだ。俺達コンビが」

「じゃあ止まって」

「え?」

「君の魔法じゃ遅すぎて絶対に追いつけない」

 曉は茫然としたように、佳奈を見た。

 ややあって彼は立ち止まり、佳奈を降ろした。

「あ、あんた結構酷いこと言うな……オブラートに包めよ」

「ごめん……その代わり、この勝負が終わったら、わたしが魔法を教える」

「ああ、楽しみにしている」

 曉はまっすぐの笑顔を、佳奈に向ける。

 佳奈はそれを正面から受け止め、曉を抱きかかえた。

 両の眼がしっかりと彼の魔力層の穴を捉える。

「一気に追いつきます」

 魔力層の穴を、五つから十に増やす。そこから、佳奈は魔力を享受する。

「――地を這え、其の足は疾風の如く速く、鉛の如く重く――」

 魔法を行使する。一気に地面を蹴る。

 坂道の上り下りを繰り返す。トンネルを駆け抜ける。

 閑静な山道を一気に駆けていく。

「すごい……俺の魔法とはけた違いだ。すごいよ、やっぱり。さっき自分で走ったからそのすごさが分かる」

「ありがとう」

「羨ましいよ、そう自分を卑下するなよ。俺からすれば、あんたは天才だ。目なんか関係ないさ」

「……そう、かもね。そうなれるように頑張ります」

 やがて「小麦屋」といううどん屋が見えて来た。交差点だ。

「あの交差点を右だ。後はずっと上り坂だから」

「分かった」

 緩やかな上り道が続いていた。

 魔力消費が、激しくなる。だがそれらの魔力は全て曉から補う。

 曉は少なくとも、分間40のMPを供給しているのだ。魔力層の穴を佳奈塞いでいる今、それ以上のポテンシャルを発揮できる。

 道は再び、何もない山道となる。険しい道ではない。先ほどと違って車の交通量が少し増えるが、家もまばらにしかない。商業施設も皆無だ。

「翼君は、わたしの目が気持ち悪いとか思わないの?」

「思わない、俺が欲しいくらいだ。それがあれば、俺も自分で穴を塞いで、魔法が使えるんだろう?」

「そうですね、でも自分の目と入れ替える度胸ある?」

「それは……ないかもな。まああんたの中では、まだ決着がついてないんだろう? 目のことについては追々考えればいい。とりあえず、今はレース、その次はインターハイ、それで最後には目だ。順番に行けばいい」

「そうね、ありがとう。翼君、かっこいいわよ」

 思わず本心が出た。先ほど曉が走って居た時の横顔を思い出したのだ。

「こんな状態で言われてもな」

 曉は力なく笑った。

 確かに。佳奈も笑う。

 今は、佳奈に抱きかかえられているという、滑稽な姿だ。

 M3を確認する。折り返し地点まで残りもう四キロもない。斜度が上がっていく。足が重くなっていく。

 だが頭は空っぽで心は軽やかだ。難しいことを考えなくていい。

 そうだ。呪縛から逃れたのだ。ここは福岡だ。東京ではない。東の居ぬ地だ。

 それに目は、必要だ。この目がなければ、勝負にならない。それでいいじゃないか。

「東――」

「何ですか?」

「高木聡美が来た」

 その言葉にちらりと後ろを振り返る。

 視界の端に、此方へ近接する高木の姿が見えた。

 速度を上げる。

 だが、高木もそれは同じだった。

「追いついたわ」

 高木は佳奈に並走をする。

「そんな、荷物捨ていけばいいんじゃないの?」

「あなたには関係ないでしょう?」

「そう、まあそうね。じゃあ、私は先に行くわよ」

「まさか、行かせないわ」

 佳奈は速度を上げる。

 だが高木もそれに続いた。

「分からないのね、あなたの才能は、あなたを抱えているその男に潰されているのよ」

「才能? ――才能って何?」

「東さんの才能よ、確かに、曉君は魔力を沢山持ってタンクとしての資質はあるかもしれないけど、所詮制御疾患なんでしょう? 将来はないわ」

 何を、言えばいいのだろうか。全てを話せばいいのだろうか。

 佳奈は煩わしく感じる。ちらりと、曉を見た。

「あんたの好きにしろ」

 曉は東の目線に答える。

「分かった……高木さん、あなたはわたしが才能を持っていると思っているでしょうけど、違うわ。わたしは、才能何て無いの」

「何よ、そんな事あるわけないじゃない」

「あるのよ、わたしは才能が無くて、ただ『見る』事しか出来ないの」

「それも立派な……才能じゃない」

「そうね、そうとも言う。で、そしたらどうなる。わたしが『目』を活かせるのは、何?」

「それは……」

「わたしの魔法は大したことがないの。そしてね、最大MPも平凡よ。わたしには才能がない。もう、わたしは彼に頼るしかないの、彼と走るしかないの、分かりました?」

「そんな……彼は、彼は魔力制御疾患よ! それを分かってるの!」

「そう診断したのはわたしだもの。知っていますわ、じゃあお先に」

 佳奈は速度を上げる。使用する魔力を増幅させる。

 だがそれに、高木聡美も喰らいついてくる。

 麓である竈神社を通り過ぎ、いよいよ山道に入った。

「東……! 今度は五木や宗像までも、追いついてきたぞ」

 曉が声を上げた。

 そんな、彼らにも追いつかれるとは……しかし、気になることもある。

「ねえ、翼君、折り返し地点まであとどれくらい?」

「もう着く。竈神社から山道を上がるだけだから、一キロも無いと思う」

「そうよね、それなのに、わたしたち先輩たちとすれ違ってないわ」

「そう言えば、そうだな……追いついたという事か?」

 追いついたのか? 確かに考えられない事ではない。しかし今まで見通しのいい道が多かったのだ。追いついたなら、途中で姿を見てもいいはずだ。しかし一度も姿は見えなかった。

 もっとも高木との競り合いで、ここ数キロかなり速度を出している。だから追いついた、と前向きに考えることにした。

 曲がりくねった山道に入り、より一層負荷がかかる。だがもうすぐだ。もうすぐ折り返し地点に辿り着く。

「もうすぐだ、もう着く!」

 曉が佳奈に教えた。看板らしきものが見える。あれが登山道入り口か……!

 そこには、三人の人間が立って、此方を見ている。風見姉弟、そして橘副部長だ。

 東は一気に折り返し地点に飛び込む。ほぼ同時に、高木、五木、宗像と飛び込んだ。

 宝満高校魔走部部内アズハル組五十キロレース、開始から約一時間、九人の部員は、折り返し地点で一堂に会すのだった。


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