Episode.74 魔道書【ナイトメア】
魔道書【ナイトメア】。
触れたものを、闇に感染させる本。
触れたものの願いを、間違った方向に叶える本。
そして…自我を持っているらしい。
ブラッド「…貴方は、触れたことがあるの…?」
リュー「…本当に遠い、昔ね。『姫様ともう一度会って話したい』。そう願ったことがあったんだよ。
本当、笑っちゃうよ。どうしてわざわざ敵対する必要があったんだか…」
ちなみにリューは無表情だ。
リュー「それで、君は一体あの本に何を願ったの?」
ブラッド「……よく、分かんない。でも…もしかしたら、僕…
『また、マナミと話したい』って、ずっと思ってたから…」
旭「マナミ…ちゃん……」
ブラッド(弱々しい方)の言った言葉に、旭が反応した。
ブラッド「……知ってるの?」
旭「………だって…マナミちゃん…
蓮花ちゃんの、『蓮花』になる前の…名前だから…。
私が……『星池双葉』だった頃の…親友だから…」
ブラッド「……そう、君が…」
月火……旭ヶ原蓮花と旭。
マナミと星池双葉。
一体何が…?
旭「…山風麻奈美、それが昔の蓮花ちゃん。今の蓮花ちゃんと違って、他人に関心もなくて……」
ブラッド「………両親から、嫌われていた」
夕陽「両親から…って、その、山風麻奈美は望まれて生まれた訳じゃないのか…?」
ブラッド「そんなことはなかったよ。…あの事故さえなかったら、本当にごく普通の、『完璧過ぎる化物』なんかとは程遠い、明るい子だったと思う…」
旭「……うん」
ラトナ「…人の過去漁るのは正直抵抗あるが…何があったんだよ」
ブラッドと旭は顔を見合い、頷いた。
昨日、天文台で月火から聞いた話を。そのまま二人は話した。
旭「……私ね、成績は常に悪くて、ずっとイジメられてたの。麻奈美ちゃんは、成績が優秀すぎて。
麻奈美ちゃんとであったのは……学校の屋上で、鋏で自分の……首なのか手首なのか分かんないけど、とにかく自殺しそうな麻奈美ちゃんを見つけて、鋏を放そうとしたんだけど…誤って髪の毛切っちゃった。なんてところかな、お互いを知ったの。
それで…私がしつこいと思われるぐらい、いつもついて行って、最初はぜんぜん顔も見てくれなかったんだけど、きがついたら、『親友』って呼べるぐらい仲良くなったの。
…小学四年生の頃かな、理由は覚えてないんだけど…飛び降りだの。高いビルの屋上から。何でだったのか、重かったのか軽かったのか、理由は覚えてないんだよ、まったくね」
旭は説明中、感情が高ぶったのか人間の姿になっている。
ひょっとしたら、「星池双葉」だった頃の姿かもしれない。
ブラッド「…お父さんも、お母さんも、二人とも病気で死んじゃって…寂しいと思ってた。そんな時に、夢の中でマナミと会ったんだ。
お互い、色々なことを話したりしたんだ。でもある日、マナミはどこか遠くを見つめてて、いくら話しかけても反応してくれなかった。それ以来、マナミとは会えなくなったんだ。
たった一人の友達だったから、また一人ぼっちになった気がして寂しかったんだ。だから、…地下の書庫に籠もるようになったんだ。たぶん…一年ぐらいかな、全部読み終わったの。
また全部読み直そうかなって思ったときに…あの本を、見つけたんだ」
リュー「…それが、魔道書【ナイトメア】」
ブラッド「うん…。背表紙に触って、気が付いたらここにいて…あの向こうの、『僕』に言われたんだ」
夕陽「……『黒き悪夢の本。魔道書【ナイトメア】に触れなければ良かったのに』…か」
ブラッド「……怖いんだ。どうして、向こうの『僕』は、あんなにも…怖いのか」
怖い…。
確かに、ブラッドとヴァンフェーニはこんなにも違う。
ブラッド「………ねぇ、言っておいた方がいいのかな」
夕陽「何をだ?」
ブラッド「……向こうの『僕』が言ったんだけど。『“エ”には丁度良い』とか…」
『エ』?……まさか、『餌』のことじゃ…!?
夕陽「なぁブラッド、ほかにも何か言ってなかったか!?」
ブラッド「……うーんと…。……あっ……」
何かを思い出したのか、顔が青ざめていく。
そして、俺達に言った。
── お前はそこで…あの人間の女が、俺様に食われる 姿を指くわえて見てな
最悪だった。
月火が………狙われていたのは、そういうことだった。




