Episode.41 医務室
道中ちょっと色々あったが…医務室に向かうと、月火の傍に座るヒカルがいた。月火は寝ていた。そのうえで旭も寝ている。
ヒカル「…やぁ。夕陽君」
夕陽「…母さんは?」
ヒカル「理事長へ報告に行ったよ」
夕陽「…そうか」
俺はヒカルの隣に座った。何故か、ヒカルはじっと俺を見る。
ヒカル「…」
夕陽「…なんだよ」
ヒカル「夕陽君。前より健康的になったよね、なんていうのかな…人並みに体力がついた?」
夕陽「…そういえば」
多分、月火のお陰か…。
コイツに振りまわされてれば、自然と体力がつくのか…。
…最初の頃のヒカルも俺みたいだったとか言っていたな、月火。
ヒカル「…蓮花ちゃん。結構お節介だからな…」
夕陽「確かに、言えてるな」
…そういえば、最初の頃。
月火は…嬉しいことを言ってくれたな。今思えば、例の野郎というのは桃千先輩の事だろうな。
しかもそのあと…ルルの家に行こうとした。俺はそこで初めて月火と行動したんだったかな…。
それから色々あって…今に至る、か。
俺は…月火に、助けられてばっかりか…。
…本当、情けないな。
夕陽「…」
俺は椅子から立ち上がると、医務室を出る。
が…腕を掴まれ止められた。
ヒカル「どこにいくんだい?」
夕陽「…」
ヒカル「答えてくれ。じゃないと…」
掴まれている腕の血が止まる。ヒカルがその気になれば…。
ヒカル「…腕を、へし折ることになる」
夕陽「…別に、構わないさ。それでも俺は…」
…あの、屋敷に行かないといけない。
アイツらに…一発殴ってくる為に。
『この手紙があれば、屋敷に辿りつけるよ。
で、どうだい。君としては彼女を助けたい。なら、都合が良いんじゃないかな?
それじゃ…待ってるよ』
多分、俺は冷静じゃないだろう。そんなこと分かってる。
でも俺は…
ヒカル「………ふ、ふふ…」
…?
ヒカル「…お前、馬鹿じゃねえの?」
ニヤリと笑った顔。いつか見せた鋭い目。
…眼鏡は、かけている。
じゃあ、ヒカルのこの表情は…。
ヒカル「気に入った。お前の根性。
けど、お前の体力じゃ心配だから…付き合ってやるよ」
夕陽「…お前、まさかそっちが本性なのか」
ヒカル「あ?…さあな。自分でもってよく分からん」
夕陽「…そうか」
ヒカル「じゃ、そろそろ行くか。誰か来ちまうぜ」
夕陽「…ああ」
俺とヒカルは、トスレオフの屋敷に向かった。
この会話を、聞いている奴がいたのを知らずに。