Episode.37 蓮花の異変
(夕陽side)
旭「…ふわーあ。…あ、夕陽君おはよー」
夕陽「…おはよう。ずっと傍で見てたのか」
月火が倒れた翌日。俺は医務室に様子を見に来ていた。
やはり起きていない。…月火がこうなったのはこれで二回目か。
あの月火がこうも静かなのは…やっぱり違和感を感じる。
転入してきて数週間、約一ヶ月か。流石に俺も月火を仲間と認めたらしい。…ことあるごとに強制連行されて少し迷惑だが。
旭「蓮花ちゃん起きないなー…。心配だね、夕陽君」
夕陽「…え?あ、ああ…」
しばらくボーッとしていた…俺らしくない。
旭は落ち着きなく月火の周りをウロウロとしてる。
と思ったら何故か俺の頭の上に乗ってきた。
夕陽「……旭。何で俺の頭の上に乗ってるんだ」
旭「蓮花ちゃん以外で夕陽君が一番乗りやすいから」
夕陽「要は誰でもいいんだな」
旭「んー、そうでもないよ。他にも色々理由があるんだよ」
夕陽「…?…それはどういう…」
蓮花「………うっ…」
と、…月火の意識が戻ったらしい。
俺の頭から月火のすぐ横に飛び移る。
旭「蓮花ちゃん。蓮花ちゃん」
蓮花「……」
…無反応。
?…気が付いたばかりとはいえ、あんなに仲の良い旭が呼びかけているのに無反応なんてことあるのか?
旭「蓮花ちゃん?」
夕陽「…月火?いったいどうし──」
肩に手を置こうとした時だった。
急に月火の目つきが鋭くなったかと思えば、伸ばした手が強く握られていた。
握られた箇所が手首。…気のせいか感覚がしない。いや、気のせいじゃない。
というか、「骨が悲鳴を上げている」という表現が物凄く相応しい。
コイツがその気になれば…。
夕陽「…っ………」
蓮花「……ふぅん、貴方意外と悲鳴上げないのね。人って見た目によらないものね」
意外そうに、興味もなさげに、真顔でそう言った。
冷淡な目。…月火らしくない。
蓮花「それで。貴方に幾つか質問したいのだけれど──ああそう、拒否権はない。というか、しても良いのだけれど…」
夕陽「…俺の手首を握り潰す。そんなところか」
蓮花「物分かりが良くて助かるわ。
で、最初の質問。『月火』というのは私のことかしら」
夕陽「…?………そうだが」
蓮花「じゃ、次の質問。ここは何処なの」
夕陽「…エレメント学園の、医務室だ」
蓮花「最後。…どうして火蓮ちゃんや月夜美ならぬ、ましてや穢らわしい男が可憐な乙女の寝顔を厭らしい目で見ていたのかしら」
夕陽「そんな風に見た覚えは無いぞ」
なんだこいつ…本当に月火か?
…もしかしたら、月火は…
蓮花「で、覚える気は微塵も無いのだけれど、貴方名前は?」
夕陽「色々と酷いなお前」
蓮花「私、男は嫌いなのよ。かといって百合ではないのよ、強いて言えば同年代の男は特に嫌い」
夕陽「同年代ってな…友達はどうなんだよ」
蓮花「もういないわ。目の前で自殺してるもの」
さらりと物凄い重大発表された気がする。
それもかなり重いやつ。
蓮花「それで、名前は?」
夕陽「…赤月夕陽だ」
蓮花「そう。今日一日くらいは覚えておくわ。赤月君」
夕陽「…」
普段から「夕陽」って呼ばれてるからか、「赤月君」って呼ばれてるのが妙な感じだ。
蓮花「で、跪き君」
夕陽「早速間違えている!?わざとか」
蓮花「あら、ごめんなさい。下僕君」
夕陽「最早原型を留めてないしお前の下僕じゃない!」
蓮花「手、貸しなさい」
夕陽「…はぁ?」
蓮花「立てないのよ。何年もの下半身不随の感覚の所為で」
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ここまで偉そうな態度の人間は始めて見た。
あと月火の無表情も。
…原因は謎だが、おそらく月火は記憶喪失になっている。
普通、記憶喪失なら混乱してもおかしくないと思うが…何故か落ち着いている。肝が据わっている。
ひとまず月火は母さんと旭に任せ、あの時月火と一緒にいたリューに話を聞いた。
リュー「…ふーん。レンゲちゃんが記憶喪失…。
ま、考えられるとしたら妖術だね」
夕陽「妖術…」
リュー「…」
…今日のリューは妙な間と違和感があるな。
夕陽「それで、どうすればいいと思う」
リュー「どうするって?」
夕陽「月火のかけられた妖術を解く方法だ」
リュー「簡単だよ。専門家に聞けばいいんだから」
夕陽「専門家…」
リュー「手っ取り早いのはレンゲちゃんの家族。親より兄弟…生徒会なら、尚更こういう問題は通りやすい」
夕陽「そうか…」
…ちょっと待て。月火は旭ヶ原先生や桃千先輩達と家族ということは隠してた筈だ。
どうして知っているんだ。
リュー「どうして知っているんだ。そういう顔だね。…なんとなくだよ」
夕陽「なんとなくは無理ありすぎるだろ」
リュー「企業秘密ならぬ組織秘密。そういうこと」
夕陽「…」
いつものことだが、何故かリューには反論できない。
リュー「それで、こちらからも一つ困ったことがあって…モモチ君に相談しようと思っていたんだ。…フィルも連れて」
夕陽「お前が人に相談…珍しいな」
リュー「僕だって人間だよ。相談ぐらいするよ」
夕陽「…そう、なのか」




