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FLARE GUARDIANS  作者: 睦月火蓮
PART.4
37/108

Episode.29 鬼と火

蓮花「…えーっと、鬼蓮でいいんだよね。鬼蓮」


鬼蓮『ああ』


蓮花「…君は私の『忘れた記憶』なんだっけ」


鬼蓮『そうだ。だから、お前は俺の存在を知らなかった』


蓮花「…どうしたら、ここから出れるわけ?」


鬼蓮『…』


…無表情で心読めん…。


鬼蓮『…ひとつだけある』


蓮花「え、ホント?」


鬼蓮『…我を受け入れること。即ち、過去の記憶を受け入れるのだ』


蓮花「なーんだ。簡単じゃん」


鬼蓮『…だが、後悔することになるぞ』


蓮花「?」


鬼蓮『いいか…お前が忘れたというのは、受け入れたくなかった記憶だからだ。

 それを受け入れるというのは…』


何が言いたいのか。何故躊躇うのか。

それは、彼女が、私が彼女に押し付けた知っているから。


蓮花「…後悔はしないよ。だって、それは私の記憶なんでしょ。

 全部受け入れる。どんなに嫌な記憶でも、全部」


鬼蓮『…』


瞬きをした瞬間。何もかもが変わった。

真っ白で何もない空間は、雲ひとつない空が広がって澄んだ水面に立っていた。花弁が周りに舞っている…蓮華の花?

驚いてもう一度瞬きをすると、鬼蓮の姿が変わった。

跪く黒髪の大人の女性。


鬼蓮「…汝の影として生きる者。その存在を認められた今、我は姿を見せよう。

 ともに生き、ともに死す。第三の式神となり、仕えようでないか」


顔を上げた鬼蓮の顔は…穏やかで、やっと役目を果たせたような表情をしていた。


鬼蓮「目を閉じろ」


言われた通り目を閉じる。


…これは…。


























──ピッ…ピッ…ピッ…


生体情報モニターから聞こえる私の心拍数。

人工呼吸器から漏れた私の息。


窓から聞こえる鳥の囀り。


ふと横を見ると、「20歳の誕生日おめでとう」。そう書いてあるバースデーカード。

数年前の写真。


手を握る兄ちゃんとマコ兄が、浮かない顔をしてる。


私の命が、もうすぐ尽きるからだ。


パタパタと誰かが走る音。バンッと音がしてドアが開く。


「麻奈美さん!」


「…火蓮ちゃん…」


涙を溢れさせながら駆けてくる火蓮ちゃんという女の子。


「…久しぶり…」


「…」


あの日別れてから数年は経ったけれど…この子にとっては数日か数週間か数ヶ月。その程度だろう。


「…死んじゃ、う、って…ホンッ…でっ…」


泣きすぎて過呼吸になりかけてる火蓮ちゃんの背をマコ兄がさする。


「…何となく、わかるの…もうすぐ死ぬかもしれないって…」


薬の酷い副作用。病気による全身の苦しみ。

なのに今日は、不思議と軽い。それに…物凄く眠い。


「火蓮ちゃん…本当は、もっと沢山話したいことがあったけど…あまり時間がないみたい」


「そんなことっ…言わ、ないでっ…」


「…」


昔、一緒にいた時に…聞いた話。

姉が桃花(とうか)。弟が春樹(はるき)。二人の桜っていう、姉弟が仲良くしてくれたらしい。

当時里の子供達に気味悪がられていた火蓮ちゃんにとって特別な存在だったらしい。


だけどその一年後、二人は亡くなった。火蓮ちゃんの目の前で。

火蓮ちゃんの魔力を狙った者に襲われて二人が庇ったかららしい。

以来。心を閉ざしたらしい。誰も傷つけないように。


数年後、修行目的で道を歩いていたら…ルビー、ダイアモンド・ファイアと出会った。

最初は拒んでいたものの、次第に楽しくなって、信用していいと、心を開こうとした。


そんな時、再び事件が起きた。

ある組織に連れて行かれ、洗脳されて、ルビーを傷付けた。

洗脳は解けたものの、組織に連れ戻されそうになった時、ルビーが庇った。

火蓮ちゃんはチームを一人離れた。


そして、月夜美に連れてこられて私と出会った。


「…火蓮ちゃん。私ね、楽しかったよ…。

 もし、火蓮ちゃんに会わなかったら、帰ろうだなんて思わなかった…たぶん、ずっと…あの場所にいたと思う…」


「…」


「……だから、ありがとう。……あえて、本当に…良かった……」


ピーピーと異常を告げる音が鳴り響く。

…眠い…。


「………ごめんね…眠いんだ……」


「?…麻奈美さん!?」


「………また、会えると、いいね…」


「…」


頷く火蓮ちゃん。私は眠気に耐えきれなくなって、瞼を閉じた。

最期に残した約束を、残して…


























──また会えたな…


──そうだね…

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