Episode.28 「…騒がしい医務室だな」
…ん?どこだここ。
全部真っ白…
『…どうしてお前が此処にいる』
誰?と後ろを見るとそこに……はっ!?
全長二メートルはありそうな…デカイ虎。
…食われる…。
『どうしてお前が此処にいると聞いている』
蓮花「食わないで食わないで絶対マズイからウンお腹壊して痛い思いしたくないでしょいやそれはむしろ私なんだけどそりゃまだ生きていたいけどでも大きな虎に遭遇した時点で私の人生終わったと思うしだったらいっそ一思いに一口で…」
『俺…我の話を聞かんか。そもそも食事は取らん』
蓮花「え?ホント?」
『…我が名は鬼蓮、火怒炎虎なる妖』
蓮花「カド…エンドラ?」
鬼蓮『お前の忘れた存在が俺だ。
…“転生の際に”な』
蓮花「…テンセー?」
鬼蓮『転生だ』
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(夕陽side)
―医務室―
「あら、夕陽君。…と、急患かしら?」
夕陽「…ハァ…ハァ……」(蓮花背負ったので息切れ)
ヒカル「…あの、茜先生…とりあえず夕陽君も…」
「んー、そうね。じゃあ、夕陽君ベッド行ってー」
夕陽「…椅子…で、いい…母さん…」
赤月茜。俺の母さん。
ちなみに父さんは赤月夏季と言って理科を担当している。
…気のせいかこの学園職場結婚が多い気がするな。
(※ルルの母はフレイアといい、英語教師である)
茜「えーっと、蓮花ちゃん蓮花ちゃん…あー、あの転校生ちゃんだっけ。夕陽君と仲良い子」
夕陽「……はい?」
茜「私だって何でもは知らない、知ってることだけ。でも子供に関わることなら私は何でも知ってる。
…本人が自覚していないことも」
夕陽「…母さん…それって…どういう…?」
ヒカル「あ、あのっ…蓮花ちゃんは…」
茜「んー、大丈夫だと思うよ。表面上眠ってるだけだから」
…表面上?
茜「うーん。私も一応カミハラ出身だから魔術系統の種類は分かるよ。
この術は『影』。影は光にも闇にも属し属さずの属性。その気になれば私達だって扱える、代償は大きいけれど」
母さんはそう言ってヒカルを指さす。
ヒカル「…?」
茜「こないだの件よ。PJの君達全員は見事に術にかかってわけ、代償は『正気』。夜咲君が言ってたわ。
あ、でも詳しくは言えないよ?生徒に話しちゃいけないって撫子ちゃんに止められてるから」
夕陽「普通に理事長って呼んでください『茜先生』」
母さんは旭ヶ原先生と理事長と幼馴染みだったと聞くが…職場の上司だ。
茜「夕陽君は厳しいねー。そりゃ撫子ちゃんとは学園内じゃ部下と上司よ?流石に最低限敬語は使うけど、撫子ちゃんも少しは気を緩めればいいのにね。
まぁそれが撫子ちゃんらしいけどね、子供に対しても理事長として接するみたいだし」
ヒカル「……あっ…」
茜「?……あらいけない」
夕陽「…理事長の子供が、学園に…?」
初耳なんだが…
茜「…うーん。本人たちが理事長の子供だからって特別視されたくないらしいから、黙ってるみたいね」
夕陽「…」
確かにそうかもな。
学園内の教師が親の時点で普通の生徒と扱いが違う。正直居心地があまり良くない。
理事長の子供なら尚更か。
茜「まあ一応保険医だし幼馴染みだから、誰なのか知ってるけどね。面倒見たこともあるし」
ヒカル「(僕と幼馴染みなんて言えない…)」
話が終ったところで、ジャーナリが医務室に入ってくる。
…頭に葉がついてたり擦り傷があったり…どこに行ってたんだ。
様子からして、見付からなかったらしい。
茜「はいはいカーラ君。椅子座ってー、治療するから」
ジャーナリ「…平気ですから」
茜「何言ってるの。今朝まで術の影響でまともに動けなかったのに、無理しないの」
ジャーナリ「…いってぇ!?」
茜「消毒してるから動かなーい」
…騒がしい医務室だな。
呆れてため息をつくと、ヒカルと目が合いさらにため息が出た。
…月火の奴。大丈夫なのか…?