Episode.25 若き頃の記憶
おばあちゃんは昔『ダイアモンド・ファイア』っていう組織にいたらしい。
その時は別の名前で呼ばれてたんだって。
…あ、ちなみに今回の蓮花サイド終了。
(アケミside)
「兄ちゃーん!カレンさーん!」
「ゴフッ!」
「ロート!…レット!?」
幼少期からずっと、私には仲間がいた。
兄ちゃん、ルビー、ガーネットちゃん、アニー、ディン、ファイ、フィー、ラナーテ、ブレイ、カレンさんに紅蓮、シャーマ。私を含めて13人。
今は皆引退して、それぞれのやりたいことをしてる。私は…元の世界には戻らないで、ここで暮らして、息子を産んで、孫にも恵まれて…幸せな生活をしてる。
まだダイアモンド・ファイアにいた頃の話を一つ。
あの日も親友のガーネットちゃんと兄ちゃんへの悪戯を考えていた。
ロート「なあガーネットちゃん。こんなのは」
ガーネット「うん。良いと思うよロートちゃん」
早速仕掛けようとした時、窓の外から何か物音がしたんだ。
ロート「…なあガーネットちゃん。何だろうな」
ガーネット「どうする…?今皆いないよ」
ロート「うーん…」
その時は丁度、皆依頼とか食料とかの調達でいなかったから、私とガーネットちゃんとか、当時のちびっこ組だけだったんだ。
「何かあったらすぐ連絡」って兄ちゃんに言われてたけれど…好奇心旺盛な二人はそれを忘れて、外に出て様子を見に行った。
ロート「えーっと、たしかこの辺だったよな…」
ガーネット「…ああー!」
ロート「ガーネットちゃん見付かったー?…ん?」
振り返ったガーネットちゃんの腕には、何かモコモコしたものがあった。
触ってみると、何か動いていた。
ロート「…動物?」
ガーネット「うん…ねえ、この子怪我してるみたいだよ…」
ロート「えっ?…うわっ、ホントだ!」
自分の手を見たら血がついてて、よく見るとガーネットちゃんの腕にも赤く滲んでついていた。
ガーネット「どうしよ…」
ロート「と、とにかく連れてって手当てしよう!」
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…連れて来たのはいいが、残っていた皆じゃどうしていいのかよく分からず…。
とりあえず体を綺麗にしてタオルでくるんで、救急箱を探してたら皆が丁度戻ってきた。
ルビー「あれ、二人とも?…って、どうしたの!?」
レット「怪我したのか!?」
ガーネット「ううっ…お姉ちゃーん…」
ロート「兄ちゃーん…うわぁあん…!!」
ルビー「えっ?ええー?」
レット「…?」
カレン「…二人とも、何があったんだ?」
…私達二人は大泣きして、代わりにディンとフィーが事情を説明してくれた。
ルビー「…そうだったの」
レット「それで…その保護した動物は?」
ロート「これ…」
タオルにくるんだ状態のまま、皆に渡した。
カレン「レット、貸してくれ」
レット「…物扱いかよ」
よく見えなかったけれど、カレンさんがその動物の足を見て、紅蓮に指示したりして治療してたのをよく覚えてる。
数分後には、包帯も巻かれて無事治療が終わったようだった。
この時にやっと正体が分かったけど、子狐みたいだった。それも尾が九つに分かれてる。
カレン「昔、母上に教えてもらったことがあるんだ。少しは役に立つかなと…」
ロート「カレンさんありがと!(小声:流石将来の義理の姉…ヘッヘッヘ)」
紅蓮『(ピクッ)』
レット「…?ロート、何か言ったか」
ロート「何でもなーい」
「…うぅ…?」
ガーネット「あ、気が付いたみたい」
その子狐は、キョロキョロと周りを見ていた。
警戒、というよりは興味を示しているようだった。
「…あ、あの。…ここってどこですか?」
ロート「うっわ喋った!」
「あ、脅かしちゃった?」
レット「…紅蓮とはまた違うか」
「…あー、君、文月火蓮ちゃんでしょ」
カレン「…どうして私の名を?」
「知ってるよ、理由はいえないけれど。…あのね、頼みたいことがあるの」
カレン「えっ、いや、あの…」
「時間がないの。私行かないといけない場所があるの」
その子狐は、何かを急いでいるように見えた。
だから私達は、理由は聞かずにその子狐が行きたがっている場所に案内した。
カレンさん、紅蓮、ルビー、ブレイでその場所に向かって、皆は指示やサポートに回った。
カレン「…私の故郷と似てる…」
ルビー「カレンちゃんの?…そういえば似てるよねー」
「えっと、えっとー…あ、あっち。あの大きいお屋敷!」
その屋敷はとても大きくて、通信機から何か騒がしいことになっているのが伝わった。
庭のほうから入り、縁側から中を見ると行ったり来たりとしている女性が何人もいた。
ブレイ「…騒がしいね」
カレン「…部屋の奥のほうで、産気づいた女性がいる。あと数時間もすれば生まれるだろう」
ルビー「五感鋭いねカレンちゃん」
「あわわ、急がないと…でもどうやって入ろう…」
こんな状況で中に入れてくれるとは思えない。そう思った時だった。
「こんなところで、何をしてるのかい?」
その場にいない私でも、声をかけられたことに驚いた。
紅色の着物を着たおばあちゃんが皆を見て微笑んでた。
「…その子、中に入りたいみたいだね」
カレン「ええっ…あ、はい…」
「…あ!大奥様!そんな所にいらしたのですね!」
「今行くよ。…安心して、私がちゃんと、これから生まれる『蓮花』のところに連れていくから」
カレン「…れん…げ…?」
「…何なら、一緒に行くかい。ダイアモンド・ファイアの隊員さん達?」
カレン「!」
ルビー「?」
ブレイ「…」
紅蓮『…』
「そんなに警戒しないでいいよ。…ただし、これはちょっと、ある人に聞かれるとマズいというか…
まあ、屋敷の中にいる間は通信機切ってもらえるとありがたいんだ」
ルビー「…どうする?」
ブレイ「姫はどうしたい?」
カレン「姫言うな。……紅蓮、どう思う」
紅蓮『…どこか、身近な気配を感じる。…あと、俺の嫌いな奴の匂いが微かに…』
カレン「…いたか?そんな奴」
ルビー「グレンが嫌ってる…どうだっけ?」
ブレイ「…(いたよ、チームに)」
カレン「…このお婆様からは、特に危害を加えるような気配は微塵も感じられない。…寧ろ、私達を見て懐かしそうな気配…?」
ルビー「…?」
ブレイ「…信用してもいいんじゃないかな」
『…本気か?』
カレン「レット」
レット『…』
「そう疑り深いのも駄目だと思うよ。もう少し人を信用してもいいんじゃないの」
ロート『私もどうかーん』
レット『おい』
カレン「…レット。お前が心配するのもわかる、でも、信じてくれ」
レット『………分かった。だがn「しつこい男は嫌われるって知ってる?」…』
ブレイ「大丈夫だよレット。…君も今ので分かっただろ」
レット『…終わったら、報告してくれ』
そのあと。何があったのかは知らない。
…『その時』は、ね。
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蓮花「…『その時』は?」
昔話が終わって蓮花が不思議そうに首を傾ける。
私は少し笑いながら言う。
アケミ「言っただろう。これは私の思い出話」
それでも怪訝そうな顔をする。
隣にいた夕陽君は、片手を顎の前に持っていく仕草。
そういえば兄ちゃんもよくやっていたなー。
夕陽「…もしや。その時の子狐が旭。で、その時のお婆さんというのは…」
アケミ「勿論私さ。時空は一定の時間で流れている訳じゃない、それにダイアモンド・ファイアは異世界からの依頼をこなす盗賊団。だから昔の自分に会う可能性だってある訳」
蓮花「ふぇー…」
夕陽「…ところで、月火が生まれるその時になって、旭が初めて月火と対面した時に何があったんですか」
蓮花「あ、それ気になる」
旭「クー…」
蓮花「…って寝てるし」
アケミ「…そうだね…」
さてさて、どう話そうか。というかまだ…
「失礼します」
…あら。
神威「大奥様。客人が…」
アケミ「わかった、すぐにいくわ。
…ごめんね、二人とも。この話はまた今度」
そう言って部屋を出た。
…それにしても、あの時…
──14年前
カレン「…ひとつ、聞いても?」
アケミ「なんだい?」
カレン「…貴方は…いや、君は、ロートだろ」
ルビー「えっ…」
アケミ「…流石。カレンさんだね」
ルビー「…えっ?」
ブレイ「ちなみに気付いてないのルビーだけだよ」
紅蓮『ああ』
ルビー「…えぇっ!?」
カレン「…何らかの理由があって君はこの世界にいる訳で、私達ダイアモンド・ファイアは常に通信をとっている。
確かに、過去の君には今の君のことを聞かれてはマズいな」
アケミ「…言いようがないですよ」
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撫子「…お義母様…」
夜咲「…その子が火蓮ちゃんだね」
アケミ「…ああ。息子の夜咲と嫁の撫子」
カレン「ど…どうも」
アケミ「…この子が、蓮花だよ」
「…蓮花ちゃん」
「あー、うー」
カレン「…この子が…」
アケミ「…不思議だよね、あの人と同じ波長だから」
カレン「……麻奈美さん…と…」
「蓮花ちゃん。…今度こそ私が守るよ。蓮花ちゃん」
カレン「…ロー…ううん、暁美だよな。…ありがとう…私を、わざわざ…」
アケミ「…」
カレン「…いつか、いつか会えるよな…。成長した、蓮花さんと…」
アケミ「……うん…。何年かかるか分からないけど、いつかきっと、会える…」
…泣きつかれたカレンさんを抱えながら皆が帰っていったのを、鮮明に覚えている。
それにしても…
アケミ「…神威。どうしてこうも毎回良いタイミングで入るかな…?」
神威「なんのことでしょうか?私はただ頃合いをみて入っているだけなので」
…確信犯の顔をしてる。
神威「それで客人というのは、実を言うと二組でしてね…」
アケミ「二組ねぇ…」
神威「はい。一方は大奥様のお知り合いと。
もう一方はまぁ…客人というよりなんというか…」
アケミ「…ああ、それなら二組とも通してくれ。
知り合いの方は私の部屋に案内してくれ」
神威「えっ…しょ、承知」
やれやれ…。