Episode.17 「忘レ去ラレタ物語」
…まず、あの子。蓮花とあたしの関係。あの子は完全に存在を忘れちまっているね。
ハッキリということはできないが…なんらかの事情であの子から生み出された「妖怪」。
「火怒炎虎、鬼蓮」っていうのは、あたしが勝手に名乗っただけ。
お分かりの通り…火の怒る炎の虎。鬼の蓮。
…つまり「怒り」さ。
あの子の怒りが、あたしを生み出す引き金さ。
…「二重人格」。確かにそう言える。ま、俺は『元』だけどさ。
実を言うと、このことはあの子本人以外あそこん家の者は知ってる。
これはあくまであたしと蓮花の問題だ。他人がどうこう言えるような問題じゃないからね。
ま、あたし自身このまま存在を知られずに生きてもいいんだけどさ。
…もうひとつ。あの子が忘れた物語。
「何故『俺』という人格が生まれ、妖怪へと変化してしまったか」
さっきも言った通り、ハッキリ言うことはできない。あの子自身が思い出さない限りね。
だがこれだけは言える。
「蓮花と鬼蓮は表裏一体。表から裏を見ることはほぼ不可能といえる。
見るとすれば、『鬼の存在を知らすなら、蓮に道しるべを与えよ』」
…なんてところだろうね。
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鬼蓮「…ま、こんなもんかな。今あたしが話せるのはこの程度」
…あ、俺か。
夕陽「…妖怪、か」
鬼蓮「そういうことさ。…坊や、ちょっとこっち来な」
夕陽「…?」
なんとなく警戒しつつ、鬼蓮の指さすところまで行く。
あるものを手渡された。
夕陽「…これは?」
鬼蓮「蓮花に飲ませるんだよ。
あの子の目覚めない原因は、『闇』に触れ過ぎた。といったところかな」
ルル「…?」
鬼蓮「…ま、そん中には原料しかはいってないし。調合の仕方はそこの…
…影の一族について詳しそうな飄々君に聞きな」
リュー「…」
ポン。と頭に手をのせられ、俺の目線までかがむ。
…あの家計は皆好きなのか?人の頭撫でるの。
鬼蓮「いいかい、これはあの子とあたしの問題。アンタらだどうこういっても無駄。
それでも、あの子の手助けはできる。
…あの子は、たくさん辛い思いをしてきた。
あの子は強いようで弱い。自分でも気づかないぐらい。脆いんだ。
だから…守ってやってくれ。それがあたしとしての…頼みだ」
夕陽「…」
鬼蓮「…あたしはまたしばらく影の中で眠る。あとは、頼んだよ」
そう言った途端。鬼蓮は月火の影へと戻る。
…月火の方は俺に倒れてきた為、俺はそのまま倒れる。
夕陽「……か…おもっ」
暁美「うっわ兄ちゃんサイテー」
夕陽「……仕方ないだろ、不意とはいえ眠っている人間の場合…」
暁美「ああもういいや」
夕陽「…」
…重い。というのは嘘だ。女子といっても異様に軽かった。
チーム内の中等部の中で一番体力がない。そんな俺が軽いと思った。
…あまり皆に心配させるのもあれだから、黙っておくことにした。
おそらく、数人には気づかれただろうが。
ルル「…重いかな?寧ろかr「(ヒナ)そんなことよりさっさとそれ調合して飲ませたら?」あ、そうだね」
…ヒナ、助かった。