Special episode.Ⅰ
──医務室
太陰「…」
夜「まったく、兄上は無茶をして…母上からどれだけ心配されると思っているんだ」
…気がつくと、僕は弟に説教されていた。
太陰「…蓮花お嬢様をお守りするのが、僕の役目だ」
夜「…兄上。主を第一に考えて行動するのはいいが、主の気にもなってみろ。
自分を守るたび傷だらけになる式神を見て、気が乱れては意味がないだろう」
太陰「…だがな」
夜「…大切な方々を守ることができなかった私が言うことではないが…
もう少し己を犠牲にするやり方はだな…」
…やれやれ。
何を言っても今日は説教されるだけだろう。
…『私事』というのは、僕の様子を見に来たのだろう。
昔から夜は僕のことを母上以上に心配していたからな…
夜「…兄上、聞いているのか」
太陰「分かっている。…そう簡単にやり方は変えられないが、僕なりに次から気を付ける」
夜「…分かってくれたなら良いが、無理をせずに…」
『…夜。夜』
夜「!」
夜は懐から光る石のようなものを出す。
…この声は…。
太陰「…日美子様か」
『その声は太陰ですね。…久しいですね』
太陰「…弟が世話になっています」
『いえ…。夜、大至急、神奉神社へ来てください。
道陰陽矢という少年の旅の手助けをしてもらいたいのです』
夜「…承知。
…兄上、短い時間であったが久々に会えてよかった。
無理せずにな」
太陰「…お前もな」
夜は部屋の窓を開けると、勢いよく飛び出して飛び立っていった。
…まったく…。
太陰「…無理するな、か」
夜「…まったく」
「「──我等は本当に似た者同士だ」」
…また会える日を、楽しみにしている。
たったひとりの、兄弟。