Episode.08 鳥
(?side)
…駄目だ。今日も行けそうにない。
…情けないな。
「ピューイ」
「?…あ、ピュート。どうしたの?」
「ピピピ、チュンチュン」
「…えっ?ユウヒと、狐を連れた女の子が近くまで来てる?
…分かった。ありがと」
「ピーイ!」
…で、どこだよ本当に。
夕陽「…アイツはこの町の町長の娘…というか、財閥令嬢だからな…
家は丘の上だったからけっこう目立つぞ。確か近くに風車小屋があったな」
…なんか場所がどっかで聞いたような所にあるわね。
夕陽「…あ」
蓮花「ん?」
「蓮花お嬢様ー、旭ー、夕陽殿ー。…ん?わっ!?」
上を見ると…黒い物体が落下してきた!?
…しかも二体…?
「いったい何が…」
「いたたた…」
…片方は青と黒の烏天狗。もう片方は、赤と黒の烏天狗…
蓮花「……大陰?…って、アンタ誰?」
「いたた…」
大陰「……こんな所で何をしているんだ夜」
夜?…うわ顔そっくり。
夜「いや…ちょっと、今日は私事でな。
そしたら、鳥達に…」
大陰「……なるほど、僕と同じか」
夜「…お互い、相変わらずのようだな。兄上」
蓮花「え?何、どういうこと?」
夕陽「…お前が分からないことは俺にも分からない」
旭「モテモテだねー」
蓮・夕「「理解できたのかよ」」
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蓮花「…噂?」
大陰「はい。先程まともな鳥達に聞いた話ですが。まともな鳥に」
…何故に二回?
夜「大事なことなので」
蓮花「あっテメッ、今読心したろ」
夜「おや、何のことでしょうか?」
大陰「…読心した夜も悪いが、失礼ながらお嬢様の顔に出ていました」
え?嘘マジで…?
大陰「で、噂というものですが…」
オイスルーかよ。別にいいけど。
大陰「…なんでも彼女は、誰かに弱味を握られた。とのこと」
蓮花「弱味を…」
…ムカつくなぁ。そういうこと。
夜「あ、それともう一つ」
蓮花「ん?」
夜「彼女も鳥使いらしいのですが、パートナーの鳥が数年前から消えていると。
あ、その事情を知っていそうな鳥も一羽いるそうです」
…事情、ね。
…いや、ていうかさ…。
蓮花「…ちょっと気になったんだけどさ、大陰」
大陰「何ですか?」
蓮花「…そこの夜ってのはいったい?」
大陰「僕の弟です」
夜「兄上がいつもお世話になっております」
蓮花「あ、どうも。…っていやいやいや。弟いるなんて初めて知ったんだけど」
夜「それはそうでございましょう。私は修行の為、普段は別の世界に居ります。兄上のことだ、私のことは話さないでしょう」
べ、別の世界って…。
どんなんだよ…
大陰「……それはそうと、どうやって彼女と会いましょうか…」
「ピピピッ」
蓮花「……ん?」
何か頭に乗ってる気が?
大陰「…橙色の、鳥?」
夕陽「…ピュート?」
蓮花「ピュー…?…あっ」
鳥は私の頭から夕陽の手に飛び移る。
…痛くないのか鳥の足。
蓮花「…夕陽、その鳥っていったい?」
夕陽「……ルルのところによく遊びにきていた鳥だ。最近見ないと思ってたんだが…」
夜「あ、その鳥です」
…ん?
夜「その鳥がルル様の事情を知っているらしいです」
…マジで?
橙色の鳥…いや、ピュートを見ると、鳩胸の胸を更に張っていた。
あ、何か言ってる。
蓮花「大陰、通訳お願い」
大陰「……えっ?」
…なんでそんな嫌そうな顔してるんだ?
何を言っているんだ…。
夕陽「…言葉が分からないとかはないのか?」
蓮花「うーん、烏天狗は鳥の言葉分かるらしいんだけどね…」
大陰「い、いやその…分かるといえば分かるのですが…その…」
夜「…『ボク、ルルちゃんのこと分かるよ』と言ってますね」
あ、そういうこと…。
大陰「…どうも小鳥のようで、言動が幼くて…」
夕陽「…訳すのが恥ずかしい、ということか」
夜「私は向こうで、幼子の世話をしてきたので…一応慣れてはいます」
旭「…(出番がないなー)」