Episode.88 「妹はやらんぞ!」「あははまだ言うかー」「大人げないわ…」
夕陽「…蓮花。俺は…お前が──」
──バァアアンッ!
夕陽「……」
邪魔…いや、明らかな妨害が入った。
医務室の扉を勢い良く開いた、狼。
牙月「蓮花。大丈夫か」
蓮花「に、兄ちゃん……」
牙月「小僧、場所変われ。お前にその場所は10年早い。という訳で今すぐ俺と代わr」
桃千「牙月こんなところにいたんだーはい退散しようかー」
と、桃千先輩が現れてズリズリとあの狼を医務室から退場させる。
よく見ると、医務室の入口に桜花先輩もいる。
桜花「ほな、ごゆるりと」
茶道のように、静かに扉を閉める。
…と、その直後。
「妹はやらんぞ!!」
「あははまだ言うかー」
「大人げないわ…」
「どこの馬の骨か分からん奴に大事な大事な妹やr」
「桜花口塞がせて。レッドカードレッドカード」
「おいこら離せおま…ハッ、裏切ったな!?」
「裏切ってないし。牙月が勝手に暴れとるだけやわ」
…医務室前が凄く騒がしい。(※医務室ではお静かに。)
蓮花「…あんのシスコンめ…」
夕陽「え、えっと…。まぁ、仕切り直して…」
予想外の妨害で少しおかしくはなったものの…再度、気持ちを切り替える為に息を吐く。
そして、真っ直ぐ蓮花を見る。
夕陽「…蓮花。俺は──お前が、好きだ」
蓮花「ほうほう。…う?」
夕陽「友達とか、そういうのとは違う好きだ。俺は…一人の少女として、お前が好きだ。
…お前の答えを聞きたい」
蓮花「…うー…?
えっ…?ちょ、良い?よし、よし!よし?うん、ああ頭の処理りがおお追いついてないノですスス…」
…ここまで困惑(というか頭抱えて混乱)している蓮花は初めて見た。
まぁ…突然こんなこと言われても、な…。
蓮花「…あ、やっと入ってきた。
うんうん。…あー、なるほどなるほど」
夕陽「…」
蓮花「あはは、なんだー。そうだったんだ。諦めて損したよー」
夕陽「………?」
蓮花「いやね。さっきも言った通りさ、夕陽なかなか名前で呼んでくれなかったじゃん。
だから、『あー片思いか』なんて思って諦めたんだよねー…、一回」
夕陽「……諦めたって…。…じゃあ…」
蓮花「好きだったんだよ?
なーんだ、なんだかんだいって結局の所、お互い片想いのような両想いだったってことじゃん」
夕陽「……じゃ、じゃあ…。
…俺と、付き合って、くれるか」
蓮花「もちろん。…じゃ、はいこれ」
普段から腰につけているバッグから、鈴を出す。
赤に染められているものと、青に染められている物が二つ。
青い方を俺に渡す。
蓮花「それ、大切な人に渡せってお父さんに。
そうだな…あの魔道具の、お礼みたいなものかな」
夕陽「……ありがとう、大切にする」
お互いあの魔道具を取り出すと、それに付ける。
夕陽「…これからも、よろしくな」
蓮花「こちらこそ」
…と、また騒がしい音がする。
牙月「小僧テメ――――ッ!!(怒)」
桃千「あはは……。ゴメン押さえきれなかったー」
桜花「大人気ない…」