4話 紋章と幼馴染計画
この世界には科学技術と変わる技術が存在した。
紋章技術
紋章は人類全てが必ず1つは有するという。
紋章は10歳を目処に
解紋の儀という紋章を授ける儀式が執り行われる。
基本的に利き手の甲にできる。
極稀に2つの紋章が授かる場合がある。
紋章には法力が存在し、この法力を使用して
効果を発動させる。
この法力のことを紋章力という。
紋章力の容量その使用頻度によって増加する。
紋章力が枯渇した際、紋章は一時的に消える。紋章を使用することはできない。
一定時間の休息をとると、再度使用することができる。
紋章は以下の分類に分けられる。
ただし、現状確認されている紋章に限られる。
以下紋章の記述は基本的な機能のみを記述しているため
その例外は省いている。
1・クリエイティブ →物づくりの紋章。一度作った作成物を記憶し、
再度同じ物を作る際に材料さえ揃えば瞬時に同じモノを作成できる。
2・強化 →自ら肉体・物体を一時強化する。
稀に免疫力、勘を強化する紋章も確認されている。
3・ヒール →疲労の回復、傷を塞ぐ、解毒、病気を瞬時で治すなどの治療効果を持った紋章。
非常に稀な紋章であり、現状確認された回復紋章は1つのみである。
4・変化 →自ら肉体の一部または全てを別のものに変化させる紋章
変化には制限があり、熟練の紋章師でも20分ほどが限界である。
5・元素 →火・水・風・土・雷の5大元素いずれかを自由自在に扱える紋章。
稀な紋章であり、この紋章を持った時点で国からの徴兵対象となる。
6・移動 →物・人を目標地点へ瞬時に移動する・させることのできる紋章。
理論的に人の移動も可能だが、大量の紋章力が必要になる為
使用はされずにいる。
7・言語 →多種族の言語を理解し、会話ができるようになる唯一の常時発動紋章
・・・
本棚と机と椅子だけの部屋でコーリィは分厚い本を閉じ、ふぅっと一息ついた。
コーリィの中で、この世界は5大元素の魔法を詠唱さえすれば
だれでも気軽に使える世界であって、この歳から魔法の猛勉強すれば
エフェクト派手なすごい魔法とか使える天才魔術師になれるのじゃないかと
そんな夢を抱いていたのだが、そんな甘い世界ではなかったということだ。
紋章術にもすごく興味をそそるが、10歳になるまではお預けというのにも
何か物足りなさを感じた。
しかし、精神は30を超えた年齢にしても身体はまだ3歳なのだ、
もっと遊んでも良いのではないかコーリィは考えたが3歳児の遊びなんて
たかが知れてる。地理でも今のうち養っておくべきかと思いつき、
早速、外へ出てみることにした。
書庫からでて、2階の階段から1段1段慎重に降りていく。
丁度最後の段を降りた時に我が兄マルクスと出くわした。
「よぉ、コーリィ、何してたんだ?」
「冒険していたの」
「そうか、2階の冒険はお前にはまだ危険がいっぱいだから
次からはお兄ちゃんも呼べよ」
「わかった」
最近はマルクスがよく構ってきてくれる。
学校でアキメとよく俺の話をするらしい。
この国には属する全ての村・街に学校がある。
基本的な読み書きと四則演算が全ての国民ができるよう教育するべく
始まったらしい。
学校は5歳から始まり10歳で卒業。
更に学業に励みたいものは都にある学園へ進む道もあると言う。
実に裕福な国である。
「それじゃぁ、冒険はこれで終わりな。次は兄ちゃんと遊ぶぞ」
そう言われマルクスに手を引かれ外に出た。
外はまだ日が昇っている。
そのまま村外れにある草原丘へ連れて行かれた。
そこには緑・青・黄・紫と特徴的な髪の色をした4人の女の子達がいた。
「マルクスくんおそーい」
「あはは、ごめんね。あと、こいつ俺の弟のコーリィってんだ。仲良くしてあげて」
「へぇー、コーリィってなんか女の子っぽい名前だねー」
女の子達がみんな頷く。
どこの世界でもこの光景は変わらないのだなとデジャブを感じた。
女の子集団にいきなり放り出され、触り回されてコーリィのテンパりメーターが
すでに振り切っている状態だ。
「あ、あぅ、あうぅ…」
「なんだよコーリィ、楽しそうじゃないか。
お兄ちゃんは嬉しいぞ!」
この状況でどう見たら楽しく見えるのか理解に苦しむ、むしろ変わってくれ。
それからしばらくは女の子集団に質問攻めやもみくちゃ、きゃーかわいいなど
散々に遊び回された。
・・・
なんとか逃げ帰って、草原丘を後にするコーリィ
そのまま家に戻ってもまたマルクスに捕まりそうな予感がするので
少し広場まで散歩することにした。
広場は人通りが多く、皆商店へ足を向けていた。
商店ではアキメが忙しく働いていた
丁度、夕方になる時間帯だから買い物客が多いのだろう。
広場の中央で気になるものを見つけた。
荷馬車がとまっているのである。
荷馬車といえば行商人の必需品、と言うことは
珍しい物が見れるという好奇心で
近づいて見ることにした。
まだ、開店はされていないらしく
筋肉のついたガタイのいい大男と亜麻色のショートカットが特徴な
同い年とおぼわしき女の子が商品の陳列をしていた。
更に近づいてみるとターメリック・胡椒などの香辛料が並べられている。
陳列している男がコーリィの存在に気づいたらしく
近づいてきた。
「おぅ、いらっしゃい。小さなお客さんだな。」
近くで見ると更に大きく感じるが、その笑みには
敵意を感じないすごい好意的な男だった。
「うん、珍しいものがいっぱい」
「そうだろそうだろ、どれも都にある商品だからな。
そうそうお目にかかれないと思うぜ。」
「これは辛いやつ?、これはしょっぱい奴?」
コーリィが指さしたのは胡椒と塩である。
「おぉ、そのとおりだ。」
「食べ物がいっぱいどこからきたの?」
「となり町のラギルスの町からだ、10日に3回はこの村で商売してんだよ。」
「商品は都なんだよね。どうやって都のものを取ってくるの?」
商人の声色がひとつ上がった、ものすごく聞いて欲しかったのだろう。
長くなりそうだ。
「よく聞いてくれた、こればっかしは自慢話になるんだが、こいつのおかげなんだ」
そう言って右手の甲を出した。そこにはどこかにあった地上絵のような模様が
あった。
「これは移動の紋章の一つで"パケニティの紋章"ってんだ、この紋章は離れている
別のパケニティの紋章と話したり、物を瞬時に送ってもらえる事ができんだよ」
要は携帯電話だ、同じ携帯を持っているもの同士が通話できる。
メールで添付したファイルが送信、受送信が可能というのをもっと大きくした形だろう。
しかし驚いた、紋章にそういった物の受け渡し機能が備わっているものがあると言うことは
前世の運搬システムを遥かに凌駕する代物だ。
「なるほど、だから都にある商品を持ってこれるのか」
「そのとおりだ。しかしだ、この紋章は移動の紋章の中でもレア中のレア!この国に10人いるかどうかさえ怪しい
紋章なんだぞ!」
商人は力強くそして世紀のドヤ顔でコーリィに自らの紋章のレア度を表現した。
「まさに商人のために生み出された商人の為の紋章といっても過言じゃねぇ!」
そろそろ、この自慢話にも飽きてきたコーリィは、なんの脈略もなく別の話を持ちかけた。
「おじさん名前なんていうの?」
「そういえばまだだったか。俺はガリア、坊主の名前はなんていうんだ?」
どうやら声がワントーン落ちた、落ち着いた証拠だろう。
「コーリィ」
「そうか、コーリィか、よく見たらうちのセシリアと同じくらいみたいだないくつだ?」
セシリアとはガリアの後ろで隠れている一緒に商品陳列していた女の子のことだ。
近くで見ると案外可愛い。
コーリィの中で密かに計画していた幼馴染育成計画は
この子に決まりだと瞬時に決まった。
「3歳」
「おぉ、やっぱり同じ年か、せっかくだセシリアのお友達になってもらえないか?
このとおり俺以外とは話そうとしないんだ」
「いいですよ」
コーリィは快く頷いた。
そして、セシリアの前に手を差し伸べた握手って意味で出したのだが
セシリアは見を引っ込め微動に首を横にふる。
「いや、パパだけでいい」
「僕はパパと仲良しだよ」
セシリアはガリアを見るガリアは笑いながら頷く
「そうそう、俺はコーリィと仲良しだ」
ガリアがそう言うと影で隠れていたセシリアが勢い良く姿を表した。
「パパと仲良しは私とも仲良し」
これでお友達だ。ゆっくりと幼馴染教育をしてあげるからね
の契約を込め怪しく笑うコーリィは再度セシリアの前に手を出した
…がセシリアはその手をすり抜けコーリィの首に手を回した
そして2人の唇が重なった。
・・・
頭が真っ白だ、言葉が思いつかない。
そこで最初に口を開いたのはガリアだ
わなわなと微かに全身を震わせながら少し強めの声で
「セ…セシリア!何しているんだ! 」
「仲良しの証、いつもパパとママがやっていたもん」
満足気に鼻を鳴らすセシリア。
唖然としているガリアにコーリィが口を開く
「仲睦まじい夫婦ですね。」
そこには先程まで余裕のあった男の姿はなかった。
怒りに身を任せている猛獣がそこにいた。
「お前、不可抗力とは言え、うちの娘を汚しやがって
わかってんだろうな?あ?責任って意味をよ!」
わかるけど、3歳児にその言葉はねぇよと考えながら
ただ、俺以外にそれをされては元も子もないセシリアに一応言っておこう。
「セシリア」
「なに、コーちゃん」
セシリアの中でいつの間にか愛称で呼ばれることになったらしい。
「さっきのはお父さんでもお母さんでもないセシリアの一番大切に想う人に
するものだからさっきみたいに仲良くなっただけでやるんじゃないんだよ」
「じゃぁコーちゃんが大切な人でいいよ。もうしたし。」
見てくれだけで油断した。こいつ絶対内弁慶の素質あるわ。
やっぱり幼馴染計画は別の娘にとコーリィは思ったが時すでに遅し。
完全にこちらがつばを付けられた側になってしまったのだから。
このまま逃げてしまえばっと思いついた瞬間、
コーリィは背後から逃げられない重圧を感じた。
それに押し負け、自ら仲良くする手段を選んだ。
「それじゃ、仲良しの印としてこれあげるよ」
セシリアへ猫型のコースターをあげた
これはコーリィが両親の居ない隙を見て作成した。
我ながらに良い出来だと感心してしまった一品だ。
「なにこれ、ちょっと可愛い」
セシリアにも好評のようだ。
「じゃぁ、セシリアもコーちゃんにこれあげる」
白い石をもらった、石の中心に何やら印が描かれているが
何かの札なのだろうか。
「きれいな石だね」
セシリアの言葉は続く
「その石、お守り。持っとくといいよ」
その後、セシリア・ガリアと別れ家路へとついた
家に帰ると母が上機嫌だった上に夕ごはんが豪勢だった。
全ての思考を停止させ、これはお守りのご利益だと無理やり結びつける
コーリィだった。
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