2話 記憶整理
生誕の日から半年が経過した。
今までの記憶を整理しよう。
前世の名前は牧谷悠人<<まきやゆうと>>
性別は男
2人兄弟の長男
年齢は享年29歳
特技はネットサーフィン・料理・お菓子づくり
職歴なしの無職。
学歴は専門卒
コミュニケーションスキルは身内、身近な人間となら会話できる程度。
一応、前世の死の直前までの記憶を保持している。
夕飯はモツ鍋にする予定だった。
前世記憶の整理はこんなものだ。
前世の未練はまだあるがこれ以上引きずっていても仕方がない。
今ある生を精一杯生きよう。
っと言っても立ち直るのにかれこれ半年を要したが……
その間にこの体の両親はあれやこれやと色々な仕草・行動で誘ってきたのだが、
なんら興味がわかなかった、燃え尽き症候群というものだろうか。
気がつけばほとんどの事柄に興味を示さない我が子に困り果てている我が両親がいる。
それに気づいたのはつい最近のことだ。
そして、彼らはいつも俺を「コーリィ」と呼ぶ。
この世界の俺はコーリィというのだろう。
妙に女みたいな名前だが性別は男だ。
髪の色が少し茶色がかった黒。ナチュラル・ブラウンというやつだろうか。
この体がイケメンになるのかどうなのかはわからん。
ただ、幼馴染は欲しいと思う。その為に、今後最大限の努力をしよう。
さて、両親についてにだ。
両親の名は父が「コミット」、母が「ホーリィ」だ。
2人が合体して「コーリィ」誕生。
前世で読んだ大人気バトル漫画の壮絶にかっこ悪い合体シーンを思い出させる。
父は物書きの職に就いているらしく、洋紙らしきものに羽ペンを走らせる姿をよく見かける。
物腰が柔らかい人柄であるのが見て取れる。いつも優しく自分を抱っこする。
母は専業主婦である。掃除洗濯炊事近所付き合いを1人で担う。
そして童顔であり、なかなかの良いものをお持ちだ。
この世は前世の時代より遥かに科学技術の進歩が遅れているのか、全てが手作業である。
日を灯すのも、洗濯物を洗うのも、料理をするのにもだ。
それらを全てこなす。母は偉大だ。
続いて兄だ
名前が「マルクス」だ。
朝になるとすぐさま遊びに出ては夕方になったら泥まみれで帰ってくる
元気印な兄だ。
最初はよく弟と遊んでみたいと構ってくれていたが、
何も興味を示さない俺に兄も興味をなくしたらしく最近では俺を見ても素通りだ。
家は2階建てで1階には台所や風呂場、各夫婦の個室、寝室、子供部屋と空き部屋が2部屋ほどある。
裕福な家庭なのか家全体は広く、庭までついている。
実に運がいい。
だが2階には一度も登った事がない。
何があるのかはもう少し経ってから見ることにしよう。
半年間での理解はこれくらいだ。
とりあえず整理は出来ただろう。
これからの課題は言語を理解しないといけない。
父がたまにジェスチャーを交えながら言葉を教えてくれる。
普通の6ヶ月児が覚えられるわけないがまぁ、それも踏まえての事だろう。
一応「ありがとう」という言葉は理解した。
っと、そろそろ…
「あー、うー」
母へ食事のおねだり
この頃のお子様といったら母乳以外ないでしょ。
乳を吸え…いやミルクを頂ける時間がやって来ました。
楽しみの時間です。「ありがとうございます。」
母が驚いた。そして、慌てて部屋を出ていった。
どうやら感謝の意極まって思ったことが口に出てしまったようだ。やってしまった。
0歳6ヶ月にして言葉を話す天才児がいてたまるか。
父と一緒に慌てて部屋に入ってきた母へ
たまたま語呂があっただけと、とぼけたふりを続ける羽目になった。