１話 ハローワールド
…気がついた。
体が思うように動かない。
意識もまだ朦朧としている。
誰かに抱えられているようだ。
目を開けようとするが完全には開かないようだ。
視界はボヤけ、どこなのかわからない。
声を上げてみる。予想外の声色に驚かされた。
自分の声ではない、全く別のしかも赤ん坊のような声だ。
状況がつかめず困惑している矢先、ぼやける目で４名の
人の形をしたものが見えた、巨人だ。
いや、それ以外の全ての物は自分よりはるかに大きく、巨人の国にでも
来てしまったかと思ってしまった。
１人の巨人の女性は俺の隣で大きな手でおでこ上の所ををさすっていた。
その触られた感触から、頭皮に直接手が当たる感じがした。
髪の毛を全てそぎ落とされたのかと、まさか今の俺はスキンヘッドに
なっているのかと、それよりまた生えてくるか不安になった。
この不可思議な状況をどう説明するかを、
俺は考えているのだが、
これはきっと夢なんだという結論にしかたどり着かない。
もう一度眠ったら目を覚ますかも知れない。
早速目を閉じ眠てみる。
しかし、眠ると意識して眠れるわけがないが目を瞑り続ければ
いつかは眠れるだろう。そう考えていると、逆に意識がはっきりとしてきた。
早く目を覚まそう、時間も遅いだろう。起きて夕食のした…く…
言葉が途切れたのには理由があった。
夢に入る前、彼は夕食の買い物終わり駅前におり、
これから帰路につく途中だった。
その際になぜ夢を見るのだろうか。
彼はとある事件に巻き込まれ、致命傷を与えられたからである。
"夢"に入る前に見たであろうあのニヤニヤした油ぎっとりの丸顔と
自ら身体から湧き出てくる赤い液体がフラッシュバックされる。
瞬間的に様々な感情が入り混じった。
恐怖・焦り・不安・孤独それらを払拭するように声を上げる。
「あああぁぁあぅぁぁぁぁぁぁぁ、あぁぁぁうゔうぅぅぅ」
声帯もまだ未熟であり出す声にも限界があるがありったけの声をあげた、
巨人たちが集まってくる。
集まってくる理由も、巨人たちが何者かも、髪の毛が少ないことも
一つの仮説を当てはめたら全てが通る、
俺は死んで転生した。
今の俺は今赤ん坊なのだ、なぜ記憶を引き継いでいるのかわからない。
ただ、生前の俺の家族、知人・友人に何一つ恩返しもせず
別れの言葉もなしで転生してしまった。
自分の行動で起こしてしまった結末。
何一つ心の準備すらしていない。
こんな情けない事態があってなるものか。
自分の未熟さを、不甲斐なさ、負の感情を全て口に出し泣き叫んだ。
俺はこの世界で少し遅い産声をあげた。
巨人達はそれを優しくなだめていた。
記念すべき第１話です。
初投稿で心臓バクバクですね。
主人公の名前の記載がないのは仕様です。
主人公の中でも私の中でも今回共通するキーワードを
持ってきたかったので書かせていただきました。
「ハローワールド」
では、更新は不定期にはなると思いますが、よろしくお願いします。
