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事実

当分メイクラブはお休み‥


そんな気持ちになっていた。


拓己も同じらしくって、少しげっそりしたようだった。確かにエネルギーの消耗は激しい。だけどそれを上回る陶酔感と満足感があったハズだ。ちょっと中毒のようなハイ状態。


「面白いこと考えちゃった!」

あたしが不意に言った。

「なに?」

「あのね、これからの過ごし方を二つ考えてみたの。…ひとつは、あたしたちのセックスをもっと追及してみる。したい時にね。


で、あとひとつは帰国する3日前くらいまで体を重ねないの。どんなにエッチしたくても我慢する、ての。どぉ?」


拓己は面食らった。

そして、しばらくて笑いはじめた。


「どっちがいい!?」

訳が分からないのでそのまま質問する。


「ふははは…なんか‥‥優奈ちゃん、社長みたいだからさ…」


そのセリフに、あたしは言うハズもないことを口にしてしまった。

「社長とも、したの…?」


前から気になっていたことをあたしは無意識に聞いてしまった。


拓己は今度こそビックリしたようだった。


「いいの…あたし別に何とも思ってないから… ただ、ちょっとどうなのかな、て思っただけ… 大体、拓己くんと社長なら全然不自然じゃないもん」


「ちがうよ…」

笑いながら拓己は否定した。


「だって、あの人はオレの母親なんだから―」


私は一瞬で凍りついた。


社長と拓己が親子!?


うそ…


「だって、だって!拓己くんのご両親はロスにいるんでしょう?」

「オモテ向きはそうしてるんだ。社長が親だって世間にバレないほうが色々都合がいいんだ」


胸がつまる!!!



社長は拓己のお母さんで、拓己は社長の息子?!


よく、分からない?!


いや、分かる。今まで感じていた違和感がこれで解けた。ふたりに感じていたオーラの類似性。


頭では納得しつつ、心では納得がいかなかった‥


「あ… あたしっ、、、」


何を話していい?言葉が、、


「優奈ちゃん…?」

「あたし、分からないっ!」


そういってリビングを飛び出して自分の部屋に逃げるしかなかった。


ショックだった‥


ふたりにダマされたとしか思えない!何がどうダマされのかよく分からないけど、ダマされたんだ!!!


社長はあたしが拓己のこと好きなの知ってて付き人にしたんだし、拓己もその事を知っていたから、あんな風にあたしに言い寄ってきたんだ!


簡単にオチる女だって!

「好きにしていいわよ」とでも社長は言ったんだろう。


「あのコはグルーピーだから」


そんな妄想が沸いては否定した!


ちがう、ちがう!!! 社長はそんなことしない!?

何かもっと大きな目的があってあたしを拓己の付き人にしたんだ! じゃあ、その目的って何?


きっとアレよ…


ウィメンズ・スタディの社長が思い浮かんだ。


『彼と恋愛は可能か?セックスをどう考えるのか?』


そんな事の為にあたしを実験道具にしていたのだろうか?二人して!!!


じゃあなんでケロっと拓己は白状したの?…社長ひとりの考えなのよ! 

そんなことよりあたしはどうしてこんなに苦しいの?ダマされていた、と本気で思っていないクセに!



だんだん、だんだんあたしはおかしくなり始めてきていた。


その時だった。


バッハのゴールドべルク変奏曲アリアの音があたしの心に響いてきた。

単音の次にくるトリルがゆっくりと進む。


あ…


震える呼吸をしていた。

あたしは錯乱していたようだ‥‥


ガチャリ


リビングのグランドピアノには清浄な天使がいた。

拓己は弾くときには、いつもまぶたを半分閉じている。


まるでフェルメールの絵のようだ。


その姿をソファに半分寝転びながら眺めた。

透明な時間。


いつしかモーツァルトのピアノ協奏曲に変わっていた。あたしが言ってたモーツァルト。


この曲、練習しなきゃね…


ピアノを弾く拓己をみあげながら、あたしは深い眠りに落ちていった。


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