ぷろろーぐ
かつて世界には争いが溢れていた。覇権を求め奪い合い、いつもどこかで争いが起こっていた時代が舞台。
最下層の身分で生きる人々は搾取され続けた。上中層の身分の者達のために、とにかく生きて生産しなければならない。例え、その果てに命を失うことになっても。
彼らは暴動を何度も起こしたが、そのたびに鎮圧された。そして必ず首謀者が処刑される形で終わったのである。
中層(戸籍がある)の者は、戦にかり出された。生きて帰る者は半分、もしくはそれ以下。もし、長男以外戦に出なければ処罰と世間からの非難が待っている。
上層の者達は下の者達から奪うだけ奪って戦を止めようとしない。彼らが望むのは飽くなき欲求が満たされることのみ。
そして土はやせ細り、緑は枯れていった。
こんな悲惨な状態を世界が憂いたのか、ひとりの男が遣わされた。彼は類い希なる能力と知能と武力によって戦を無くすため奔走した。
これは平和のために傷つき、涙を流しながらも人々の希望であり続けた一人の男の壮大な物語である。
…が、今作ではあまり関係無い。彼は脇役であり、その物語もかする程度。
そして主人公はこの世界に転生した女性である。彼女の物語は伝説にはならず、数多の歴史の中に埋もれていく。
たが彼女を知る者は皆こう言った。
『――様ほど光が似合わない御方は他にいない。あの御方の炎は闇の中で輝くのだから。
そして我らは、その炎に群がる蛾のごとく、求めずにはいられないのだ』
ーと。