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破壊者の友情物語  作者: CLOUDZERO310
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破壊者の不油断

伊沢亮牙…俺が目をつけたもう一人だ。

ミラネと並ぶ実力。やはり魔法陣を組む力はないが、両手に刻まれた魔法陣を組み合わせることで発動させる魔法、合成魔法グラディア…難易度の高い技が得意だというのは評価に値する。

次の授業は魔法陣構成論…陣に刻まれる模様がどのような力を持つのか、それを学ぶ授業だ。

「あ〜怠い」

俺の隣の席にはミラネと、右には伊沢亮牙がいた。

亮牙は退屈そうに欠伸をすると、授業中だというのに携帯端末を取り出した。

「亮牙君…授業中ですよ?」

呆れた声で一応確認しておく。

「分かってるよ。つかお前さ…ガゼットだっけ?」

「…はい」

「何で無理に敬語使ってんだ?…俺がお前のこと嫌う理由を挙げるのなら、その仮面みたいな笑顔だ」

…いきなり嫌な部分を指摘された。

なんというか…無遠慮な奴だ。

「…嫌われたものですね」

「分かる奴には分かるんだな」

余計なことをミラネが言うので、無言で足を踏み付けてやった。

「亮牙君、今後の為に聞きたいのですが、僕の何処が不自然に感じますか?」

「今後の為ってことは、今の顔が嘘だって認めるわけか?」

「……」

「なあ?」

「違いますよ。これからの人間関係の中で、相手を不快にさせないよう…です」

「不快ねぇ…なんつーか、雰囲気かな」

「雰囲気…?」

話をしていると、教壇に立った教員と目が合った。

このクラスの副担任の女教師。名前は確か、七瀬。

ニッコリと笑いかけてやると、七瀬は顔を赤らめて魔導板に顔を向けた。

…だから女は嫌いなんだ。所詮上辺だけで人を判断する。

俺の本性を知ったら、彼女はどんな顔をするのか…?

悲鳴でも上げるだろうか?命乞い?

愚かで愛おしい生き物だ…人間。

「…その顔…お前らしいってかんじだ」

「え?」

亮牙がニヤニヤと俺を見ていた。

…考えが顔に出たのか?

「ミラネ君、僕、どんな顔してました?」

「物騒な顔だ」

「俺ぁ、その顔好きだぜ?」

「やめて下さいよ、亮牙君」

見せられるものか…いくら亮牙が俺の本性を気に入ったとしても、見せられない。

油断は駄目だ。

俺達と違い、人間は他人のことなら簡単に裏切る。

契約がなければ…。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜


放課…鐘が鳴って今日一日のカリキュラムが終了したことを伝えた。

保健教員である雨英は回転椅子の背にかけていたよれよれの白衣を身に纏う。

白衣を着ればなんとか保健教員だと判るが、白衣の下はよれよれの黒いシャツにジーンズと、とても教員だとは思えない格好だった。

雨英は長い…寝癖だらけの黒髪を掻き回すと、大きな欠伸をしてから席を立つ。

「今日も一日お疲れ様だな」

ニャア…猫の鳴き声が聞こえる。

黒い綺麗な猫が雨英の足元にいた。

「お前もお疲れさん。ナイト…今日は妙な猫に虐められなかったか?」

黒猫ナイトは肯定するように一声鳴くと、スルスルと器用に雨英の肩に上がった。

今日もたいした怪我人は出なかった。初級魔法で火傷しただとか、そんなくだらない怪我ばかりだ。

治癒魔術(ヒーリング)が得意な雨英の手にかかれば、そんなものは一瞬で治せる。

「…ま、怪我人が少ないってのは喜ばしいことなんだがな」

保健室と呼ばれる部屋…雨英の手によって完全な私室化されている部屋の端には、純白のグランドピアノが陣取っている。

アドラス魔法魔術学園は妙に金持ちだ。

故に保健室も広い。ピアノを置いても余裕が残る程だ。

「雨英先生!」

「あ、何だ?」

突如保健室に来訪者が現れた。

数名の女子生徒で、グッタリとした一人を抱えるようにしている。

明らかに様子がおかしい。雨英は眉をしかめた。ナイトが唸り声を上げる。

…ナイトが…警戒?…まさか…。

「夏目夏樹か…?…急いで中に!ベッドに運んでくれ!」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜


一通り治癒魔術を組み終えると、雨英は椅子に崩れ落ち、息を吐いた。

夏樹の友人達は帰らせている。気づけば外は真っ暗だ。

雨英は立ち上がることなく、指を鳴らして光を点した。

天井に上がったそれは、蛍光灯と同じくらいの光源だ。

「勤務時間外だぜ〜…ったく」

夏樹の顔色を確認しようと、雨英は夏樹の横たえるベッドの隣にある椅子に腰を下ろした。

夏樹の胸の数十センチ上には、不可思議な文字が並んで帯を作り、円を描いていた。魔術式だ。

今もゆったりと回転を続け、夏樹の体を癒している。

「…原因不明で卒倒とは…面倒な娘さんだなぁ、ナイト」

威嚇の声が聞こえた。ナイトの声だ。

「…ナイト?…何見て、…なっ!!」

雨英はソレを見つけて凍り付く。

夏樹の首筋に浮かぶ二つの魔力痕…傷のない噛口。

「厄介な…もんが紛れ込みやがったな」

苦々しく、雨英は呟くと、廃れて殆ど出回らない煙草を口にくわえた。



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