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破壊者の友情物語  作者: CLOUDZERO310
8/16

破壊者の忠告

「こう…かな」

俺とミラネ、結城は実習場の端でこっそりと練習をしている。

どうして俺ともあろう者が隅にいるか…その原因は結城にあった。

結城はクラス2だ。雑用として呼ばれたが、俺の我が儘で魔法の練習をしている。

教員に見つかれば叱られるだろう。まあ叱られたところで痛くも痒くもないし、言い負かすことも出来るのだが、馬鹿の相手をするのは面倒だ。

ミラネは嫌々ながら俺の近くに友人として立っていた。

時折、結城の腕を掴んでは、魔法陣の書き順が違うだの何だの、結構乗り気で教えていた。

魔法陣の生成に関しては、ミラネは俺に勝つかもしれない。

魔法陣線も作れない分際だが、彼の引く線は美しい。

どちらかと言えば魔法ではなく魔術を得意とする俺とは、タイプが違うのだろう。才能だ、彼の魔法陣生成スキルは才能だ。

ふとミラネの手元を見ると、魔法陣精製携帯型装置グラフがない。

「ミラネ君、グラフはどうしたんですか?」

「…貸出中だ」

結城がグラフを細い手首に着けていた。

魔法陣線は通常、一年生は精製出来ない。二年生もたいして変わらないが。

そのため、アドラス魔法魔術学園では入学時に、グラフが支給される。

「結城、まさかグラフ、クラス2には配られていないのですか?」

「…はい。そろそろ支給されても良い時期なのに」

またクラスによる差別か…迷惑だ。

ミラネのグラフを貸し借りしてもいいのだが、そうするとどちらかが練習しているとき、どちらかが練習できない。

結城も“噛む”つもりだったが、まだ先になる。それまではやはりグラフが必要だ。

ミラネは契約をしても、なかなか覚醒をしない。ガゼットブラッドが合わないのかもしれない。

だとしたら、ミラネがグラフを手放すのはもう少し先になる。最悪、一生手放せないかもしれない。

覚醒しても…だ。

そういうタイプもいるのだ。いくら魔に長けていようとも、魔法陣線だけは精製出来ないタイプ。

万能な悪魔とは違い、人間には不完全がある。

不完全を持つが故に、俺は人間が愛おしい。そして憎い。

悪魔は不完全を持たない。不完全は欠点ではないことを俺は知っている。

「僕のグラフを譲りますよ」

「え?」

俺は左手首についているグラフを外し、ミラネのグラフと取り替えた。

ミラネのグラフは持ち主に戻す。

「でっでも、ガゼットさんのが!」

不安そうな結城に見せるため、俺は何も着けていない右手で魔法陣線を精製してみせた。

「す…凄い」

「僕には必要ありませんから」

「でも…こんなによくしてもらうわけには…」

「ならば対価を貰えますか?」

隣でミラネがビクリッと体を震わせた。

何を勘違いしているのか…俺が対価として、無理矢理結城と契約するとでも考えているのか?

そんな刃向かう友人作りをしなくとも、結城は近いうち、自分から求めてくるだろう。

非力は力に憧れる。

「僕をガゼットと呼んで下さい。それが対価です」

結城は表情を明るくさせて喜んだ。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜


魔棟から出る直前、俺はミラネの耳元に口を寄せ、息を吹きかけるようにして呟く。

「…俺が結城に噛み付くとでも思ったか?」

「……」

「…余計な手出しはするなよ」

「っ!…何のことだ」

「結城に同情して、俺から護ってやろう…などという要らぬ考えを捨てろ。そんなことされると、僕、悲しいですから」

クラスメートが寄ってきた為、言葉遣いを変える。

最後に忠告の笑みを浮かべると、俺はミラネから離れて、クラスメート共の中に混ざった。

…頬が痛い。



訂正しました。


感想、ご指摘、アドバイス、こんな主役達の日常が見たい…

等ありましたら、じゃんじゃんどうぞ

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