【1章】破壊者の特技
魔法と魔術、法と術、何が違うのか…答えられる人は何名いるだろう?
話は変わるが、吸血鬼に悪魔の翼がついているのは何故だろう?
話は変わるが、俺は今、入学式という何のためにあるのか分からない儀式に出ている。
立ちっぱなしは苦ではないのだが、退屈は苦だった。
話は変わるが、俺はガゼット・エルゲロ・レージュスタ・サロ…だ。ガゼットと呼ばれ…たい。
話は……いや変わらない。
「ガゼット・エルゲロ・レージュスタ・サロ!」
噛まないで言いきった教員に敬意を示し、俺は珍しく真面目に前へ出た。
いや訂正だ。これから先、俺は真面目だ。真面目に生活する…表向きは。
「新入生を代表して、僕が挨拶をさせていただきます」
壇上に上がり、「僕」…などという気味の悪い一人称を使う。我慢だ、我慢。
ザワッ…。
新入生と在校生からどよめきが漏れた。
どうせ俺の容姿を見て…だろう。
黒い髪…翡翠色の眼。白い肌。自分では気に入っていない。
「我等新入生一同は、栄光と歴史あるアドラス魔法魔術学園に入学するにあたり、以下の事項を誓う。一つは学園の名に恥じぬ成績を残すよう、精進すること」
…馬鹿みたいだ。
そんな誓いを守って、しっかり勉強する生徒がいるだろうか?
「一つは神聖なる目的を持って魔導に励むこと」
…守られないな。絶対。アドラス魔法魔術学園を首席で卒業した者達は、戦争に駆り出される。
馬鹿みたいな誓いを読み上げ、一礼して降壇した。完璧だ。
あとは男女両方から感じる熱烈な視線を…無視し、平静を決め込む。
クラス分けまでまだ時間がある。俺は考えに耽った。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
アドラス魔法魔術学園について説明しておこう…といいたいが、名前で充分伝わるだろう。
魔法、魔術を教え込む学園だ。以上。
特筆事項?…アドラス国の最高レベルの学園だ。入学の為に魔導試験があるのだが、倍率が100.25…100人受けたら99人落ちる。
当然な数字でもあった。兵器を棄て、魔導国家へとなったアドラス…旧名を日本国は、魔導を何よりも重視する。
魔導は金になる。魔導学歴はそのまま地位になる。
アドラス国内外から入学希望者が集まる。アドラス魔法魔術学園以外にも魔導関連の学校は存在するのだが、やはり国が公式に認めているアドラス魔法魔術学園は特別なのだろう。
………さて、
入学出来たことを安心したいが、まだ安心するには早い。
入学式は終了した。今からクラス選別試験がある。
簡単に言えば格付けだ。
1学年あたりクラスは13ある。トランプと一緒だ。2〜10…それにAとJ、Q、K…。
あちらさんが指定した相手と戦うだけだ。勝敗の数によってクラスが決まる。
因みに上位のクラスから、A、K、Q、J…あとは数字が小さなほうが弱い。
面倒この上ないシステムだが、入学した以上…真面目に取り組むことにする。
ぼんやり突っ立っていると、名前を呼ばれた。
「ガゼット・エルゲロ・レージュずっ」
噛んだ…。
駄目な教員を横目に睨みつけながら、俺はフィールドに上がった。
対戦相手の成績は、2勝0敗…。
自慢げにしているが、準備された魔法陣を使っているうちはまだまだだ。
応用が利かないだろう?
「俺はエリック!俺に当たったこと、後悔しな!」
それはこっちの台詞だ。
「お手柔らかに…お願いしますね」
笑顔を無理に作る。
頬が痛い。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「審判さん?」
呆然とあほ面している審判に話しかける。大丈夫か?
「あ、勝者、ガゼット・エルゲロ・レージュスタ・サロ!」
目の前にはエリックが倒れている。
勝負が決するまでの所要時間、3秒。
まさかカウンター魔術にひっかかるとは…まだ一年生だが、いくらなんでも弱い。こんなやつが入れるんだ。
この学園でも、やはり誰彼構わず…ではなく選別する必要がありそうだ。
周囲がどよめく。
「何か恥ずかしいですね」
心にもない言葉を吐いた。
俺の特技をお教えしよう…。
嘘だ。
主人公最強ものです。
粗いですが、よろしくです。