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破壊者の友情物語  作者: CLOUDZERO310
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破壊者の捜査

“噛み付き魔”を探す為、まずは情報収集だ。

実習の授業中は、殆ど自由行動だ。

教員の説明の後、各々練習となる。だから教員が回って来た時だけ練習をすれば、基本的に注意は受けない。

だがそんなサボり癖があれば、間違いなく授業にはついていけないだろう。

他の魔導学校と違い、アドラス魔法魔術学園はエリートの集まりだ。

通常の学校が一週間かけてマスターする魔法を、一日で会得するほどの実力が必要とされる。

俺はともかく、クラスAといえども余裕はあるまい。

基本的、実習のある日は一日中実習になっている。

時折座学が混ざるときもあるが…。

今日の授業内容は、魔法陣線の精製及び属性具現魔法(エレメント)の会得だった。簡単に説明すれば、魔法も魔術も魔力をどう変形させるか…で変わる。

魔力をぶちかますだけの行為は、魔導ではあるが魔法でも魔術でもない。

魔力震波などが良い例だ。あれは超微量の魔力放出だ。

それを攻撃に利用すると、それは無属性魔波と呼ばれる。

基本的に魔力放出は魔導機械に多く利用される。攻撃に利用されることは稀で、理由は大量の魔力を消費するから…だ。

直接魔力を放つのだ。当然だろう。

魔導武装(ウェポン)を使う人間が多い。

…話を戻そう。

無属性魔波を使う人間は少ない。ならば魔法、魔術とは何なのか?

「ガゼット、答えてみろ」

「はい。魔法、魔術は魔力の流れを変えることにより、魔力の質を変える技術です。今回学ぶ属性具現魔法(エレメント)は火、水などの自然界元素に変換し、もうひとつの具現化魔法(クリエイト)は物理的な物へと変換させる上級魔法です」

完璧な答え…まあ教科書を暗記していただけなのだが。

教員は嬉しそうに微笑むと、追加説明を始めた。

「他にも様々な種類の魔法、魔術が存在するが、基本的に使われているのはガゼットの言った二つだ…覚えておくように」

そういえば教員の顔が変わっている。

以前は中年の…マヌケそうな教員だったが…実習では担任が担当するはずだ。

担任が変わったのか?

一通り説明が終わると、各自練習となった。

俺は眼鏡をかけた新しい担任に声をかける。

「新しい担任の方ですか?」

「ああ、ガゼット君は今朝のホームルーム時にいなかったね。私はミライア・レゼ・アルテマータだ。君達クラスAの新しい担任で、元副担任だよ」

金髪の碧眼…くろぶちの眼鏡。なかなかの美青年だった。悪魔に似た色香を持っている。

「アルテマータ…クラス2の担任の方も、同じ名前ですね」

「ソフィアのことかな?私の妹だよ」

ソフィア・レゼ・アルテマータ…確か、結城の担任だった。

ミライアと同じく、金髪碧眼の女だ。

「ほら、自己紹介はいいから…早く練習開始して?」

「はい」

もちろん、命令に従うつもりはない。

情報収集のチャンスだ。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「ちょっといいかな?」

名前は忘れたが、クラスメートの女子に声をかけた。

このての話は女子のほうが詳しいし、女のほうが俺に話してくれやすい。

「が、ガゼット君!何?何でも聞いて?」

「ちょっと違うわよ!ガゼット君は私に話しかけてくれたのよ!!」

争いが始まる。こうなると何か手出ししてしまうと、余計に状態は悪化してしまう。

俺は笑顔で、言い争いが終わるのを待つことにした。

まったく…女とは悪魔より面倒な生き物だ。

…頬が痛い。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜


そんなガゼットの様子を、ミラネは遠目に観ていた。

珍しくガゼットが絡んでこない為、また雑用をしていた結城と共に、魔法陣線の精製練習をしていた。グラフ無しで…である。

グラフを外したミラネは、右手の指先を宙に突き出し、目を閉じた。魔力の流れを感じ取り、指先に集中させる。

…また…これだ。

自分の魔力の根源は知っていた。

胸の少し下…鳩尾の辺りだ。しかし…ガゼットから力を貰い、それから魔力を使用する度に妙な感じがした。

胸の真ん中にどす黒い力を感じる。

それはミラネの魔力と合わさり、強力にしてくれる。

「これが…悪魔とやらの力か…?」

ガゼット曰く、ミラネは未だ覚醒していないらしい。

覚醒したらどのぐらい力が膨らむのか…興味はあったが、同時に怖くもあった。

亮牙を見た。

力を感じ、驚喜していたが…人を襲うことに苦悩している姿を目撃した。

…俺は…怖いのか?

力が…人間じゃなくなることが、怖い?

自分が特別だなんて思ったことはなかった。ただ、人より少し魔法陣を描くのが早かっただけだ。

だから力に憧れたこともあった。人間であることに、執着を感じたこともないし、感じる機会もなかった。

だけど今思う。

人間でありたいと。

人間でなくなることがこんなに怖いなんて、考えたこともなかった。

「ミラネさん!」

「…ん、ああ…何だ?」

「魔法陣線が…!」

結城に言われて自分の手元を見ると、指先から白銀色に輝く小さな点が生まれていた。

「…!」

慌ててそれをインクに、宙に円を描く。

続けて内部に様々な流れを書き込む…。

これで…!

ミラネはもともとグラフを使えば、属性具現魔法を使うことが出来た。

だから難無く魔法陣を作り上げることが出来た。

魔法陣展開(ローディング)

魔法陣が光り輝き、ミラネの作り出した魔法陣に従い、魔法陣が展開されて雷が空を切った。

ゴオオオン…。

轟音が鳴り響く。

雷が消えたとき、不思議と言葉は出なかった。喜ばしいはずなのに…怖い。

「す、すごいです!ミラネさん!!」

結城の祝福に、ようやく意識が引き戻された。

やってしまった。とうとう一線を越えてしまった。

使った…力を。

「…はっ!…っ!」

胸の何かが…広がる。嫌だ…嫌だ。

「嫌…だ」

「ミラネさん?」

ミラネは胸を押さえ、体をくの字に曲げて俯く。

抵抗するミラネの額には汗が浮かび、しかめた顔は苦痛に歪んでいる。

その瞳が…一瞬だけ緑色に変化し、すぐに戻る。

「う…」

ふっ…と体中の力が抜け、ミラネが崩れ落ちた。

結城は慌ててミラネを抱き留めると、ずり落ちそうになるミラネをギュッと強く抱きしめる。

ミラネと結城の体格は殆ど同じだが、それでもミラネは痩せていて、結城の腕にすっぽり収まった。

「ミラネさん!?」

荒いミラネの息を首筋に感じながら、必死に結城はミラネを支えた。

「ガゼット!!」



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