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田舎

作者: 銀道 唯兎
掲載日:2026/03/26

「なぁ……レオはさ、田舎の定義ってなんだと思う?」


ビルや映画館、床屋にマンション、どれもこれもが苔や雑草、雑木林に乗っ取られたような廃墟ばかりの街中を歩きながら、俺は、話題を絞り出していた。


「何だ、その質問。お前あれか?五秒以上の静寂に耐えられないタイプか?」


当たりだ。パトロールの班分けで、レオとは今日のように何度か二人きりになることがあったけど、なんというか、何を話したらいいのかわからない。


「はは……いや、まあ、なんか、その、気になって……?」


「…………」


……え、黙っちゃう感じ?。クソッ、俺も別働隊の方に行きたかった。向こうは若い男ばかりで、何も考えずに雑に話していられる。

しかし、今日はそうじゃないという現状は変わらない。次の話題を考えよう。こういう時は、相手は何が好きそうなのか顔を見て――


――ピアスバチバチでちょい怖いけど、案外かわいいな。守りたくなる顔っていうか……。睫毛も意外と長……ってか、顔近いな!?


「おい、聞いてんのか?クロ」


「はぁい!!聞いてますでありまする!!」


マジでビビった。全然聞いてなかった。


「ったく、田舎の定義だろ?都会から離れてりゃ、田舎なんじゃねぇのか?」


「え、あ、その……」


その話続けてくれるんだ。と口に出そうになったのをギリギリ飲み込む。流石の俺でも、ここでそれを言うと怒らせる気がした。


「えっと……。そしたら、都会ってのは?」


「人が沢山住んでて、あとは、商業やら工業やら、文化が発展してる街……ってとこか?」


案外、素直に答えてくれるみたいだ。さっきの沈黙は、ただのシンキングタイムだったのかもしれない。


「それじゃあ、ここはどっちだと思う?人は沢山住んでるけど」


「…………」


また黙っちゃったよ。シンキングタイム?それとも今度こそ何かマズイ事言っちゃった?


俺が顔色を窺っていると、レオは溜め息一つ吐いて口を開いた。


「……お前はさ、ここに居るのが()()()()()()()?」


おいおいおい。俺の質問にケチ付けといて、なんだその質問。


「当たり前だろ?俺らがやってるのは、人間の居住区のパトロールだ」


「……そうか。お前は、そう思うのか」


お前はってなんだよと思いながら、レオの方を見ると、廃墟の方を見ながら、今にも泣き出しそうなくらい、寂しそうな顔をしていた。


「え!?ごめんごめんごめん、どした?なんか嫌な事言っちゃった?俺」


「……なんでもねぇよ」


えぇ……。女心わかんねぇ……。いや、もしかして女心とか関係ないのか?普通に俺、なんかマズイ事言ってんのか?


俺がオドオドとしていると、レオはまた、溜め息混じりに口を開く。


「地方にある、親の出身地なんかも田舎って呼ぶらしいぜ」


「へ、へぇ……?」


なんでそこ掘り下げるんだ!?わ、わからねぇ……。乗り気じゃなかったんじゃないのか?


混乱しながらも、さすがに気不味くなってきたので、搾った後でカスッカスの脳から、また話題を搾り出す。


「ってことは、こんだけ人が居ても、ビルが立ち並んでても、人によっちゃ田舎扱いになるってことか?」


「……まあ、そうなるかもな。あたしも、よくわかんねぇけど」


なんだよ、こいつも知らねぇのかよ。


「ギ、ギギギッ、グガギッ」


無駄話が一段落着いたところで、丁度よく、目の前にある崩れ掛けの一軒家から住民が出てきた。


「お、見ない顔だな。あの家にも住んでたのか。レオ、データの照合頼むわ」


「はいよ。……ったく。こんなの意味無いってのにな」


今日のレオはどうにも、機嫌がいいのか悪いのかわからない。まあ、いつもの事なんだけど。


「そんな事言うなよな。人々を守る大切な仕事なんだろ?リーダーが言ってたじゃん」


「……ああ、そうだな。」


まただ。また寂しそうな顔だ。基地に戻ったら、明日以降のシフト希望を、ちゃんと書いて提出しようと思った。気不味過ぎる。


「……今日はもう帰るか!無駄話してる内に、今日の担当範囲は見終わったしな!」


本当は建物の中まで見て回るんだけど、レオと回る日は入らないようにしてる。こいつと居ると何故かいつも、住民の方々が激おこプンプン丸だからだ。


「おう。……その、帰る前にあたしからも質問があんだけどさ」


「お?珍しいな。どした?」


「あたしらの基地は、都会だと思うか?」


何を言ってるんだ?こいつは。さっき自分で、田舎と都会の定義を説明してたじゃないか。


「田舎だろ?人が居ないんだから」


「……そうか。そうだな」


その後のレオはずっと寂しそうな顔で、話し掛けるのも気不味くて、さすがに黙って帰った。

住民が出すいつも通りの生活音と、風で草木が揺れる音が、彼女と居ると何故か寂しく感じた。




「SN-00、SN-96、帰投しました」

基地に着いてからは、いつも通りに報告して、念の為にメンテナンスルームに寄る。レオのやつは、いつもメンテナンスには来ない。特別に用意されてるらしい自室に戻ってしまう。俺にはあれやこれや言う癖して、自分に甘いやつだ。


まあ、あいつと組んでパトロールに出れば、俺もサボれるから悪くはないかとか、人間みたいな事を考えながら、スリープの準備をする。

今日の無駄話がやけに頭に残っていて、あいつの、小さめの涙袋から零れそうな涙を思い出して、何故かこっちまで寂しいような気分になってしまった。

初めまして、銀道(ぎんどう)です。


ゾンビものの話とAIの話をしていたら、なんとなく考えついて書きました。たぶん、普通にレオを主人公として、視点変えて書いた方がよかったんじゃないかと、書いてる途中で思いましたが、まあ趣味で書いてるもんやし、そんな気にせんでええか、ガハハハハってことで書き切りました。


後でレオ視点版も書こうかと思います。

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