8話:冒険者たち
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「お、良かった。生きてたか! いやぁ、大熊の前で倒れてる時は間に合わなかったかと焦ったぜ!」
金髪美女に連れられて、2人の元に近寄る。私に気付いた大きな盾を持った男性。盾に見合った体格をしているだけあって声もデカい。ガハハと笑う声に若干威圧される。ミケは私の頭皮に爪を立てて「ウゥ」と唸ってた。大きな声は猫にとってきついようだ。
「タークス、うるさい」
「おっと、わりぃな。戦いの後はついつい声がデカくなる」
「ヴィンセントは獣人なんだから、声がデカいと辛いわよね。可哀想に」
「……そこまでじゃない」
猫耳の男の人はなんだかクールだ。色味的にロシアンブルーの猫ちゃんをほうふつとさせる。しげしげと眺めていると、鋭い目が私を貫いた。不躾に見すぎたようだ。申し訳ない。
「自己紹介がまだだったわね。私はキャサリン。冒険者で回復役をしているわ」
「俺はタークス! 見ての通り盾役だぜ」
「……ヴィンセント。斥候役だ」
「私はウラナ。こっちは相棒のミケ・ランジェロ。助けてくれて、ありがとうございました」
「んにゃ」
名前を教えてもらったので、私も名乗る。ミケが片手をあげて挨拶していると知らずに、頭を下げたせいで後頭部から前へ滑り落ちた。猫らしく柔軟に着地したものの、怒ったミケが制服をよじ登って顔に猫パンチを仕掛けてくる。ごめん、手を離してると思わなかったんだよ。目だけは、目だけは勘弁してくれ。
「それにしても、ウラナは何でこんなところに? 見た感じ、冒険者でもないんだろ」
「綺麗なお洋服を着ているところを見ると、貴族の子かしら」
「いえ、貴族ってわけじゃないんです。その、どう説明したらいいかな」
助けてくれた人たちだ。悪い人じゃないだろう。そう信じて、私は転生の部分を誤魔化して、異世界から来たこと、気づいたら草原に立っていたこと、熊に襲われたことを簡単に説明する。説明しながら、中々に荒唐無稽なこと言ってるなと感じたが、3人は納得したかのようにうなずいた。
「異世界からの流れ人ってやつだな。俺も初めて見た」
「こちらに来て早々にビッグベアに鉢合うなんて、災難だったわね」
キャサリンさん曰く、異世界からいつの間にか転移する人は稀にいるそうだ。特殊なジョブを持っていて、特別なスキルを持っていることが多いらしい。異世界から来たことはあまり言わない方が良いそうだ。余計なトラブルを招く可能性があるらしい。異世界怖いな。
「ウラナさえよかったら、俺たちと一緒に来ないか? 近くの国まで連れてってやるよ」
「いいんですか?」
「ダメなら言わねぇよ。俺たち、遭難者を探してるんだけどな。手がかりが一向に無くて、一旦国に帰る所だったんだよ」
とある冒険者が音信不通になり、親族から捜索依頼が出されたそうだ。近くの草原の依頼を受けて出て行ってから、2週間ほど帰ってきていないらしい。ソロ活動をしていて、シルバーランクの実力者。依頼を確実にこなす、質実剛健の冒険者。私はシルバーランクと聞いて、ひとつの心当たりを思い出した。
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