32話:馬車はお尻が痛い
順調に召喚獣が増えています。あと1匹くらい増やしたいけど、皆の食費を考えると、ちょっと保留だよね。
「暴れ馬がこんなに大人しくなるなんてなぁ」
「おかげで移動が快適ね」
「ぶるるっ」
普通の馬よりも馬力が高いらしく、踏みしめて固められただけの道を馬車はすいすいと進んでいく。衣類が入った袋をお尻に敷いているとはいえ、振動がとても痛い。馬車ってこんなに揺れるもんなんだね。現代の道ってほぼアスファルトだし、乗り物はスプリングが効いてるから、私達のお尻は安全に保たれてたんだね。異世界に来て実感する科学力。
「いたた……」
「もしかして、ウラナは馬車初めて?」
「初めてです。めっちゃお尻が痛い」
「なら辛いでしょう。寝袋も下に敷いちゃいなさい。少しはマシになるわ」
「ありがとうございます」
お尻の肉を貫通して骨に振動がくるのがホント辛い。ミケも緑子も振動が辛いのか、私の上に落ち着いている。さすがに辛いから、馬車の中に降ろそうとしたんだけどね。全力で拒否されたんだ。ミケは服に爪を立ててうなるし、緑子は糸を使ってしがみついてきた。どんだけよ。ちゅんは振動が気にならないようで、馬車の縁に止まったり、クロの頭の上に立ったりしている。鳥ってバランス感覚良いよね。
「休憩の頻度あげるか?」
「いや、到着が夜になる。夜になると、ゴブリンが活発に動くから面倒だぞ」
「そりゃそうだ。ウラナ、悪いが頑張ってくれ」
「了解です」
了解です、とは言ったものの、私のお尻は休憩所まで持つのだろうか。乗り物酔いするかもって最初の方は思ってたんだけど、乗り物酔いの前にお尻の痛みに思考が持ってかれる。吐く心配はないけど、降りた時に歩けるのかっていう心配が出てきたぞ。誰か助けて。
「よし、休憩だ」
「……大丈夫か」
「馬車ってこんなにお尻が痛くなるもんなんです?」
あまりにも痛すぎて動けなくなったよ。ステータスを確認すると、若干HPが減ってて笑ったよね。キャシー姉さんにヒールかけてもらった。回復薬を飲むのはもったいないからね。それにしても、乗るだけでダメージ受けるってどういうことなんだろう。
「ウラナのステータス、耐久系が全部初期値なせいね」
「それしかないだろうな」
「初期値って大変なんだなぁ」
初期値の弊害ってこういう所にも出るんだ。馬車に乗るだけでHPが減るって、相当なデメリットでは?
最終的にはキャシー姉さんの膝に乗せてもらうことになりました。タークスさんは鎧で結局痛い。ヴィンセントさんはスカウトなので、とっさに走れなくなったら危険。消去法でキャシー姉さんである。膝に乗せられるだけでダメージが全然入りません。とても素晴らしい。ただ、キャシー姉さんの負担にはなるので、申し訳なさマックスだけどね。何か対策しないとなぁ。
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